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【試乗:ロータス・エキシージ350~後編】ドライビングシューズでなくレーシングシューズのご用意を

2018/01/13

ロータス・エキシージ350試乗、後編。
前編ではそのスペックと内装、中編ではそのインテリアについて紹介してきましたが、本編ではいよいよステアリングホイールを握っての走行を行ってみます。
とにかく「走り」以外のことは何も考えていないという今どき類を見ないクルマであり、「本当に運転できるのか」という不安が先にたっての試乗開始。

ロータス・エキシージ350に乗ってみよう

あまりにスパルタンな内装に驚かされながらも試乗開始。
車内に乗り込むのは独特の「作法」が要求されることになり、身長や体型によって人それぞれの方法を取ることになりそう。
先に足を入れるか、サイドシルに腰掛けてから足を車内に入れるか、自分に合った方法を見つけるのも楽しみの一つかもしれません。

エンジンスタートについては、キーを差し込んでこれを捻り(いかにもロータスらしく、始動の儀式としては適している)、その後にダッシュボード右にあるスタートボタンをプッシュする方法。
エンジンサウンドは結構低く、「唸る」ような音ですね。

ちなみにクラッチは「激重」の部類。
ぼくは今回の市場に備えて「アディダス・チュブラー」を履いていったのですが、正直ソールが柔らかすぎてクラッチを踏みにくいと感じたほど。
同様の理由でシャークソールやワッフルソールの靴はエキシージのクラッチに向いておらず、比較的ソールのしっかりしたドライビングシューズもしくはランニングシューズを選ぶのが良さそうです。

なお、こういった重いクラッチの車に乗るときのオススメとしてはナイキ・コルテッツ、アディダス・カントリー、プーマ・スピードキャット(フューチャーキャットでも、ドリフトキャットでもいい)。
これらはソールが「巻き上げ」られており、エキシージのように頻繁にペダルの踏み替えを行うような(そしてペダル感覚の狭い)車にはあっている、と考えています。
もしくは、フットサル用のソールがラウンドしているシューズもいいですね(しかも細身)。

初めて乗る(マニュアル・トランスミッション)車において、やはり一番気を使うのは「クラッチミート」で、まずはここに意識を集中して慎重にスタート。
ミートするポイントは最初は分かりにくいものの、さほどナーバスでもなく、数回クラッチを繋げばあとは気にせずガッツンガッツンつなげるとこができます。
この時点では気になったクラッチの重さにも慣れ、純粋にシフトチェンジを楽しめるように。

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特筆すべきはシフトフィールですが、これは2017年モデル以降大きく改善されたとのことで、「(見た目から想像できる通り)ガチン」という心地よい金属的な感覚と共にレバーがゲートに吸い込まれることに。
このシフトは見た目といいフィーリングといいまさに一級品で、このためだけにエキシージを買う価値はある、と思わせるほどですね(試乗を終えたのちも、このフィーリングが懐かしくてたまらない)。

レバーは結構長いもののストロークは短く、しかしこれだけのレバーの長さが無いと「テコの原理」でシフトチェンジできない(ほど重い)のだと思いますが、とにかく硬さといい感触といいシフトノブの握り具合といい、その位置に至るまでも「完璧」なシフトレバー。

車によってはこれらのうちいずれかが気になって「走行中、シフトチェンジに気を取られてしまう」ものもありますが、ロータス・エキシージは慣れるとなんの苦もなくシフトチェンジができる車であり、「ギアチェンジをしようと考えた時には、もうすでにギアが変わっている」というほど自然にシフト操作を行っている自分に気づくことにも。

エンジンは自然吸気でもターボでもなく「スーパーチャージャー」。
これは「リニアなトルク」を重視したためと思われ、そのために非常に扱いやすいエンジンに仕上げっています。
停車時からのスタートも難なくアイドリングから行えますし、街中での「ちょっと加速しての追い越し」も楽々。

特筆すべきは「パワーバンドにタコメーターの針を閉じ込めておく」のが比較的容易で、ロータスのイメージからしてぼくは「エンジンの旨みを引き出したり、それをキープするのは大変に難しいのだろう」と考えていたものの、「一瞬で吹けきってしまう」ランボルギーニやマクラーレン、ポルシェのエンジンとも異なり、かなりマイルドな特性を持っているように思います(718ボクスター/ケイマンのターボエンジンに近いフィーリング)。

よって、回転数にはそこまで神経質にならなくてもいいという印象ですが、これもシフトチェンジと同じく「ごく自然に」いいところに回転数を合わせることができ、意識しなくとも気持ちよく走れる部分ですね。

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ハンドリングに関しては「さすが」ロータス。
これは文句のつけようがなく、狙い通りにビシリとラインをトレースし、文字通り「針の穴を通すような」正確無比なコントロール性を持っていて、まさに「ハンドリング・バイ・ロータス」です。

足回りは硬さを意識させられるような場面も、逆に柔らかいと感じる場面もなく、まさに自然。
街中を走っても乗り心地が悪いとは思えず、加速・減速しても不用意に車体が前後に動くこともなく、カーブを曲がっても不安定なロールを示すこともなく、まさに「意のまま」。

こういった「走る、曲がる、止まる」について「普通のことが普通にできる」車というと他にポルシェがあり、そのために「ポルシェを着る」という言葉まであるくらいですが、ロータス・エキシージもそれと同等かそれ以上。
自分がこうしようと考えた時にはすでにその動作を車が終えているという印象で、その操作系も全く違和感を感じさせないもの(直感に従って車を操作でき、それに忠実に車が反応する)。

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なお操作系といえば、ロータス・エキシージのステアリングについて「パワーアシスト」なし。
要は「パワステ無し」の「重ステ」ということですが、最初は戸惑うものの、すぐに慣れる部分でもあります(パワーアシスト無しで205幅、そしてグリップの高いピレリPゼロ・コルサを曲げるので、ある程度の力は必要)。

ステアリングホイールは「スムースレザー」ですが、万一コーナリング中に「滑ると」大変なことになるので、正直ドライビンググローブかレーシンググローブが欲しいと思ったほど。
ぼくは今まで乗用車に対して「グローブの必要性」を感じたことはなかったのですが、このロータス・エキシージがそれを感じさせた第一号、ということになります。

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なおドライブモードは「ノーマル(デフォルト)」のほか、「スポーツ」と「レース」。
ドライブモード変更にて設定が変わるのはアクセルに対するレスポンス、エキゾーストサウンド、そしてトラクションコントロールやABSの設定。
「スポーツ」にするとエンジンの反応が鋭くなり、サウンドがより大きく、そしてよりオーバーステアを許容する設定に。
「サウンド」と言えば、実際に走行してみると排気音よりもエンジンそのものが発する音とスーパーチャージャーの作動と吸気音の方が大きくなり、特にスーパーチャージャーの音は独特(痺れる)。

試乗を終えてディーラーに戻りますが、ここで困るのが「どうやって車から降りるのか」。
足を先に出すのか、サイドシルに腰掛けてから出るのかということですが、ここまで苦労する車はBMW i8とマクラーレンMP4-12Cくらい。いやむしろそれらより難しいかも。

とりあえず体を折り曲げ、ルーフに頭をぶつけながらなんとか車から出ることに成功しますが、ぼくよりも背の高いディーラーの営業さんは器用に乗り降りしていたので、コツを掴むと条項は難しくなさそう。

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ロータス・エキシージ350はどうだった?

一言で言うと「凄えなコレ」と言う車。
乗降性に始まりスパルタンなシートやインテリア、重ステ、シフトレバーの見た目や操作性、レーシングカーばりの剛性を誇るペダル。
一旦走り出すとどこからでもパワーを取り出せるエンジン(ぼくはホンダのVTECターボを積んだ方がいいのでは、と思っていたのですが、実際に乗るとこのトヨタのV6の方が”フレキシビリティ”と言う点でエキシージ合っていると思う)、性格無比なステアリング、そして狙い通りに減速できるブレーキ。

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その割には過激さや神経質さは感じられずに誰でも受け入れて自然に走ることができる懐の広さも持っており、ぼくが高く評価したいのはこの部分。
通常ここまでの性能を持つ車で、軽量化を追求した車であれば当然「スイートスポット」が狭くなり扱いにくくなるものですが、ロータス・エキシージのスイートスポットはかなり広く、どんな環境でも、そして自分のスキルに合わせて楽しめる車だと思います。

例えばポルシェ911は正確な操作を行わないと「車から拒絶される」という印象すらあるものの、ロータス・エキシージはうまく操作できなくても「励ましてくれる」感じ。

その励まし方も松岡修造っぽく、「これくらいで諦めるなよ!やればできるって!頑張ろうよ!!」と熱く励ましてくれるような印象があります。
よって、今回の試乗に関してはロータス・エキシージから力をもらったという感想を持っていて「どんなに辛いことがあっても頑張ろう」「なんかありがとう」という気持ちでいっぱい。

車に試乗して元気をもらったのは、記憶の範囲内ではロータス・エキシージが「初めて」で、その意味でも「これを自分のものとできるのであれば」「実際に自分のものとしてガレージに収めたならば」どんな苦難も乗り切れるだろう、と思った次第です。

他の画像はFacebookのアルバム内にて公開中。

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