| 世界SUV販売No.1だからこそ多額のコストが投じられている |
さて、新型トヨタRAV4に試乗。
結論から言うとその出来栄えに驚かされた「非常に良いクルマ」。
RAV4は2016年と2017年に世界SUV販売第一位となり、主戦場の北米では2018年にモデルチェンジを迎えています。
日本市場では2016年7月から販売が途切れていたものの2019年4月に復活を果たし、「好きにまみれろ」のキャッチコピーと共に大々的にプロモーションが展開されていますね。
新型RAV4の外観はこうなっている
まず、新型RAV4を見ての第一印象は「デカい」。
それもそのはずで全長4600ミリ、全幅1855ミリ、全高1685ミリという大柄なボディサイズを持っています。※画像は「adventure」グレード
特にフロントの押し出しが強く、スマートなSUVが多かった最近の傾向には珍しいデザインかも(この展示車は”アドベンチャー”グレードのため、アンダーガードなどオフロードっぽい装備が追加されている)。
プレスラインは非常に複雑で、複数の要素が組み合わせられているようにも見えます。
ただ、メインとなるモチーフは「台形」「X」で、これはトヨタいわく「クロスオクタゴン」。
このクロスオクタゴンとは八角形(オクタゴン)2つを、90度ずらしてはめ合わせたもので、全体のデザインテーマは「Adventure & Refined」。
特にフロントフードやボディサイドのプレスラインは秀逸。
AピラーやCピラーにはこういった「境界」を示すパーツが設けられ、これは「2トーン塗装」をより容易にするための設計上の配慮だと思われるものの、デザイン上の面白いアクセントに。
こういったパーツの存在そして複雑なデザイン、凹凸を考えるとボディカラーは「より陰影が出やすく、ブラックとの対比が出る色」がいいんだろうな、と思います(グレーメタリックとか)。
ワイパーはエアロ形状。
あちこちに整流のための突起が見られたり、と「相当によく考えたんだろうな」と思うデザインを持っていますが、これはトヨタにとって「世界で最も売れるSUV」ということもあり”コストをどれだけ投じてでも、いいクルマを作らねばならない”ということの現れなのでしょうね。
トヨタRAV4のインテリアはこうなっている
そして新型RAV4のインテリアもたんまりお金がかかってるんだろうなと思わせる部分が多数。
アウトドアを強く意識したSUVということもあり、あちこちにはラバー素材が用いられたり、そもそものスイッチ類が大きかったり。
つまりは「専用デザイン」が与えられているということになりますが、近年ここまでコストをかけたトヨタ車はなかったんじゃないかと思えるほど。
シートも「トヨタ車とは思えない」ほどのオシャレさ。
そしてシートバックと座面には「クロスオクタゴン」モチーフの柄が入ります。
カップホルダーの底にも同じ柄が見られ、こういったモチーフの反復はC-HRでも確認できたものの、RAV4ではさらにその傾向が強化され、世界で戦いナンバーワンを守り抜くというトヨタの意気込みが感じられる部分でもあります。
ドアグリップ内側にはラバーが採用されて滑り止め加工も。
細かいところにまで手が入っていますね。
ルームランプまでクロスオクタゴンっぽい形状。
新型RAV4に乗ってみよう
今回試乗したのはRAV4の中でもガソリンエンジン採用モデル「G Zパッケージ」。
簡単に言うとRAV4にはガソリンエンジン採用モデルとハイブリッドモデルがあり、それぞれにFFと4WDがラインアップ。
そして「G」グレードは4WD、そしてZパッケージはその中でも最高級ということになります。
グレード | エンジン | トランスミッション | 駆動方式 | 価格(税込み) |
X | 2Lダイナミックフォース | Direct Shift-CVT | FF | 2,608,200円 |
X | 2Lダイナミックフォース | Direct Shift-CVT | 4WD | 2,835,000円 |
G | 2Lダイナミックフォース | Direct Shift-CVT | 4WD | 3,202,200円 |
G Z パッケージ | 2Lダイナミックフォース | Direct Shift-CVT | 4WD | 3,348,000円 |
Adventure | 2Lダイナミックフォース | Direct Shift-CVT | 4WD | 3,137,400円 |
HYBRID X | 2.5Lダイナミックフォース | リダクション機構付THSⅡ | FF | 3,450,600円 |
HYBRID G | 2.5Lダイナミックフォース | リダクション機構付THSⅡ | 4WD | 3,817,800円 |
RAV4は視界や操作性に優れる
乗り込んでまず感じたのは「着座位置がけっこう高い」ということ。
SUVなので当然ですが、これは見切りを考えてのことだと思われ、そのデザインや内装パーツの作りの大きさ、素材等から見てもRAV4が「オフロード寄り」の性格を持つということがわかります。
そしてもうひとつ感じるのは「視界に優れる」ということ。
特に前方視界は非常に良く、三角窓の採用もあって死角が最小限となっています(ドアミラーも視界を妨げず、かつ補助ミラーが取り付けられているので周囲を確認しやすい)。
操作系については上で述べたように「ひとつひとつのパーツが大きく、かつ直感的に操作できる」という印象ですね。
同じトヨタでも「プリウス」はその操作系の難解さが指摘されますが、RAV4では「そこにあるんだろうな」と思ったスイッチが必ずそこにあり、試乗通じても何一つ戸惑うことなく操作できたのが記憶に残るところです。
RAV4のパワートレーンには「新基軸」が盛りだくさん
RAV4に採用されるエンジンは「2.0L ダイナミックフォース(M20A-FKS)」。
これはレクサスUXに搭載されているユニットと同一で出力は171PS。
数値だけを見るとやや頼りなく感じるものの、車体重量は1630kgなのでさほど重くはなく、走った感じでは「これで十分」。
追い越しなどトルクを要する場面でも十分な力強さを発揮してモタつきを感じさせず、振動やノイズもかなり小さい優秀なエンジンです。
トランスミッションはダイレクトCVTで、エンジンともどもTNGA思想に基づいた新世代ですね。
そして4WDシステムはRAV4に初めて搭載された「ダイナミックトルクベクタリングAWD」。
これは前後左右にトルク配分を行う4WDシステムであり、フォルクスワーゲンの4MOTION、メルセデス・ベンツの4MATIC、BMWのxDriveと同等の理論を持つシステム。
プラットフォームももちろんTNGAなので「フルTNGA」なのがRAV4ということになりますが、ぼくがもっとも驚いたのはダイナミックトルクベクタリングAWD。
これによるスタビリティは抜群で、コーナリング中にアクセルを踏み込むと外に膨らむのではなく車体がインを向く感じ。
高速道路での走行は試せていないものの、おそらく高速カーブでの安定性は相当なものだと思われます。
別にこのクルマで速度を出そうというわけではありませんが、車高の高いクルマなので安定性が高いに越したことはなく、その意味で「頼もしい」ということですね。
そのほか運転していて感じたのは乗り込んで感じたとおりに「視界がいい」ということ、ノイズ、バイブレーション、ハーシュネスが極端に小さい(サルーン並みといっていい)こと、そしてブレーキングやコーナリング時の姿勢変化が小さいこと。
特にブレーキについては秀逸で、強く踏んでもクルマがダイブすることなくしっかり減速し、低速からの「徐々に減速」という場面でもゆっくりと速度を落とすことができ(カックンブレーキではない)、そして停止線で止まる瞬間もまったくショックを感じさせないという感じ。
全般的に操作系は軽く、操作に対するレスポンスが「ちょうどよく」、静かで快適という走っていて楽しいクルマだと言えます。
ちなみにレクサスUXには「しっとり」とした乗り味でしたが、RAV4は「サッパリ」した乗り味(表現が難しいが、ただそう感じた)。
言い換えるとレクサスUXはウェット、トヨタRAV4はドライと言えるかもしれませんが、どちらがどうという問題ではなく、これは「好み次第」。
ちなみにぼくはRAV4のほうが自分の嗜好に合っている、と感じます。
なお、RAV4の車体の下も覗き込んでみましたが、全般的に「相当カネかかってるな」ということは間違いなく、それはデザインや構造、パワートレーンも含んでのこと。※輸入車、とくにスポーツカーだと下を覗き込む人は多いが、国産車ディーラーでこれをやる人は少なく、かなり驚かれた
このあたり「トヨタのSUVでもっとも売れるという実績があり、これからも売れ続けねばならない」からこそここまでコストを投じることができたのだと思われ、かつ世界で販売するということを考えて「欧州市場で求められる走行性能と品質」「北米市場で求められる快適さや使い勝手」両方を満たしたクルマでもあり、正直ここまで優れたクルマであったとは、とかなり驚かされた試乗でした。
他の画像はFacebookのアルバム「トヨタRAV4」に保存中です。