|ドバイは「脱石油」を目標に、相当に先まで見ているようだ|
引き続きドバイですが、しばらくドバイにいるとさらに新しい発見も。
ぼくが思ったのは、「ドバイの人はずいぶん先を見ている」ということ。
殆どの人が「無意味」と断じたスキー・ドバイがドバイを有名にするきっかけになったり、「人工衛星から見える唯一の人工島」パーム・ジュメイラにおいても埋め立てには天然の素材を使用し、ゆくゆくはそこに魚が住めるように考えられていること、など刹那的な計画ではなく長期的な計画で動いている、と感じるわけです。
石油がなくなった時代にいかに今の経済を存続、いやむしろ発展させるかが課題
石油が出て、それでお金持ちになったときにも「脱石油」」を考えて流通、貿易、金融という石油に頼らない経済を構築しようとしてきたこともその一例。
現在自動車においては、「石油の枯渇」が理由ではなく「環境」を理由に電気自動車が普及しつつあり、欧州では2020-2025年を境にガソリン車の販売ができなくなる国が出てきますが、仮にドバイが「石油に依存した」発展を遂げていれば今頃は「どうするよ」と右往左往していたわけです。
ですが、こうなることを読んでいたのか、1970年代のオイルマネーに湧く時期から今にかけて進めてきた「脱石油」政策のおかげで、いつ石油が不要になってもOKというところまで来たわけですね(現在ドバイのGDPに占める石油の比率は1.7%しかないといわれ、UAE全体で見ると40%という数字)。
ただしドバイ自体はもともと石油の産出が極めて少なく、そのために「投資」を集めて様々な観光施設などを建設してきたわけですが、その「投資」も石油で潤う近隣職国からのオイルマネーでもあり、まだまだ完全に「脱石油」とはゆかず、投資を受けた分を回収し、自国の資金で新たな投資ができるようになってこそ「脱石油」と言えるのかもしれません。
余談ですがオイルマネーに潤う前のUAEでは真珠産業が主な収入源(外貨獲得手段)でしたが、日本(ミキモト)が真珠の養殖を成功させた後にはUAEの真珠産業は壊滅状態になっています。
その後石油が出て、そして世界中で石油の需要が増すことになりますが、現在UAEの最も大きな石油の輸出先は「日本」。
真珠産業衰退の経緯をあわせて考えると、なんとも日本と縁が深いのがUAE、とも言えますね。
「なんでも世界一」こそがドバイのドバイたる所以
ドバイは新興国にあたるので、特に有名な観光資源(旧い遺跡など)を持たないため、前出のスキー・ドバイ、パーム・ジュメイラ、そしてブルジュ・カリファなどを作り、それを観光の目玉に。
さらには世界の有名人にパーム・ジュメイラの別荘を与えることで自動的に宣伝がなされるようにし(タダで別荘を与えるということ自体も宣伝)、「セレブが集まる」場所、という印象を世界に与えています。
まさに損して得を取るというか、お金を有効に「投資」する方法としては世界で最も優れたものをドバイは持っているんじゃないか、と考えています。
なお、この「先見性」というか「先のことを考える」のは昔からアラブの人が持っていた性質なんじゃないかと考えていて、たとえば「ピラミッド」。
これは建造に何十年とか何百年とかかかるもので、要は現場監督が生きている間に完成を見ないプロジェクトであるわけです。
こういったプロジェクトを完成させるには明確な「ヴィジョン」が必要で、アラブ人はそれを昔から持っていた、ということですね。
ドバイは将来にわたり壮大な夢を描いている
同様にドバイ発展のヴィジョンについて、当然ながら上層部は「何百年先」というものを明確に持っていて(もしかすると何千年)、そのために現在何をすべきかが明確に見えており、自分たちは次世代のために何を残すべきかを理解しているのかもしれません。
なお、ドバイの属するアラブ首長国連邦は「100年後に火星に人類が居住可能な街をつくる」としていますが、それもまたヴィジョンのひとつなのかもしれませんね。
ドバイは経済についてもよく考えられた制度を持っており、現地で仕事をするのは「多国籍企業」の人か「出稼ぎ」。
前者はどこの国にでもあることですが、後者はドバイ特有ともいえます。
というのも、ドバイの人口に占める「ドバイ人」の比率は20%以下で、残り80%は外国人。
さらに80%のなかの多くは出稼ぎで占められるとされ、現地で聞いた範囲ではインド人、スリランカ人、パキスタン人、フィリピン人など。
要は英語を喋る国々の人々ですが、そういった人々は自国で働くよりもドバイのほうが高い収入を得ることができるので、ドバイにやってくるわけですね。
そういった人々が仕事をして税金を収め、その税収で「20%以下のドバイ国籍の人」が暮らせるようになっており、実際にドバイ国籍の人は医療費ゼロ、所得税もゼロ、公務員の平均年収は3000万円くらい(税金がないので全部自分の懐に)。
出稼ぎの人も得をする、ドバイの人も得をするシステムであり、このあたり「高度に、かつ近代的に洗練された奴隷制度(悪い意味ではない)」とも言えますね。
ドバイは外国からの労働力の受け入れにも積極的だ
なお過去にはイスラム圏で「奴隷制度」が存在してますが、それはぼくらのイメージする奴隷とは異なり、奴隷の扱いや福祉については規定が存在した上、奴隷には教育を施したり温情を持って接するべきとの教えがあり、加えて略奪による奴隷の獲得は禁止。
奴隷の中には弁護士など高い地位に就いていたものあるとされますが、そのようなシステムが形を変えて現代で発展した、と考えて良いかもしれません(繰り返しですが、ここで言う奴隷制度は悪い意味ではなく、日本で言う社畜よりはよほど待遇が良いと言える)。
使う側、使われる側がきっちり義務を果たせば双方ともメリットがある、ということですね。
しかしながらドバイへどっと外国人が流れ込んで治安が乱れること、ドバイ人の仕事を奪われることを懸念してか、「単身(家族持ちはダメ)のみ」でしか出稼ぎには来れず、しかも失職すると即刻強制送還。
外国人に対しては厳しい管理がなされますが、「決まりを守っている範囲は」しっかり保護されるというのもイスラム圏の特徴なのかもしれません。
なお街中にはあちこち工事中のたてものが見られ、これからもさらなる発展が見込まれ、「ドバイランド」のオープンでさらに経済が活性化しそうです。
ちなみに景観を守るためか下品なネオンはなく、街中の照明はある程度統一されています(このあたり欧州と似ている)。
こういった部分も厳しく規制をおこなっているのでしょうね。