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マニュアル・トランスミッションは安全技術の義務化、環境対策によって消滅?衝突被害軽減ブレーキとの相性が悪く、エンジン回転数の制御が難しいMTは社会にとっても「悪」に

2021/06/14

マニュアル・トランスミッション

| 近代のクルマは「トランスミッション単体」で語ることができず、すべてが統合して制御されている |

どう考えても、一部のマニアのためにトランスミッションを生き残らせることは難しい

現在マニュアル・トランスミッションを採用するクルマはどんどん減少していますが、最新のレポートによると、安全技術の普及や規制が「MT消滅に拍車をかける」とのこと。

とくに緊急ブレーキ技術(衝突被害軽減ブレーキ=AEB)を車両に導入した場合、マニュアル・トランスミッションとの共存が(不可能ではないが)難しく、問題を解決する際のコストが非常に高く付く模様。

現代において、マニュアル・トランスミッションの採用するということは、「オートマティック・トランスミッションと入れ替えるだけ」ではなく、様々な車両のシステムと連携させる必要があり、思ったよりもコストがかかるということなのでしょうね。

スバル「アイサイト」もMT車には装備されない

実際のところ、先ごろ発売された新型トヨタ86/スバルBRZについて、スバル得意の「アイサイト」はAT車のみに装備され、MT車には「非装着」。

スバルはこれについて「MT車には、AEB作動後に、クリープを防ぐための電子パーキングブレーキを搭載していないため」だと述べていますが、MT車にて走行中にAEBが作動し、そのままギアが入っていれば再び走り出してしまう可能性もあるということになるのだと思われます。

なお、これを防ぐためにはAEB作動後に矯正エンストさせる等の対応もできると思われ(マツダ車の場合、AEB作動後にはクラッチを踏まなければエンストするというロジックを採用している模様)、しかしそうなると再始動に手間取ったりという別の問題が生じるのかもしれません(追突される可能性もある)。

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よって、技術的にも、その他の要因においても「AEBとMTとは、技術的にも環境的にも相性が悪い」と言ってよく、とくに近年のMT比率の低さを勘案するに、「ちょっとしか台数が出ないMTのために、多大なコストを割くわけにはゆかない」という判断となるのも自然な流れ。

参考までに、スバルのカナダ法人によれば、2016年には19.2%だったMT比率が2020年には6.4%にまで減ってしまっているそうで、この状況で「MTにお金をかける」ことはメーカーとして許されないのかもしれません(ポルシェのようなスポーツカーメーカーであれば話は別)。

ただ、WRX STI、BRZといったスポーツカーラインアップではMT需要が非常に高いといい、よって今のところスバルはMTを廃止する予定はないものの、もしAEBが義務化される国や地域が増えてくると、「MTを廃止しなければならない」という判断も必要になってくる、とも述べています(つまりスバルは、コストを投じてまでMTを生き残らせるつもりはない)。

そのほかにもマニュアル・トランスミッションにとって厳しい環境が続く

上記のような事情の他にも「MT消滅」の環境が現代には揃っており、たとえばMT車が採用されるようなハイパフォーマンスカーについては「ハイパワー化」が進んでおり、BMWの場合だと「保有しているMTが、一定以上のハイパワーに対応できない(高い入力にトランスミッションが耐えることができない)」。

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そしてハイブリッドやアイドリングストップとMTとの組み合わせも実現が難しいことでも知られ(不可能ではなく、実現した例もある)、しかしわざわざお金をかけてこういった困難を解決する理由もなく、同じ費用を投じるのであれば、自動車メーカーとしては、電動化含む環境規制対応技術に力を入れたいと考えていることも明白です。

さらに、「MTだとOC2排出量が大きくなり、場合によっては規制にマッチしない」という例も。

つまり、コンピューターがシフトチェンジのタイミング、エンジン回転数などを細かく制御するATに比較し、「人が」シフトチェンジを支配した場合には効率性が落ちるということになりますが、”環境によろしくない”MTに費用を投じることは、現代の企業としてはまず許されないことだとも考えられます。

こういった環境を鑑みるに、様々な方面から「MTの生き残る範囲を狭められている」ということもわかりますね。

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電気自動車にもMT?

なお、時代はこれからEVへと突入しますが、そこでいくつかの自動車メーカーが搭載を検討しているのが「EV世代のマニュアル・トランスミッション」。

エレクトリックモーターは自由にパワーとトルクを変化させることができるので、理屈の上から言えばトランスミッションは不要であり(ただし、ポルシェ・タイカンのように自動変速機を搭載したEVもある)、EVにMTを搭載すると電子クラッチなどの新たな技術やデバイスが必要となって、そのぶん価格や重量が増加します。

もちろんこれは機能・性能面ではまったく「無意味」ではあるものの、今後様々な自動車メーカーからどんどん登場するEVの中で競争力を発揮するため、「MT搭載」をひとつの武器とするという考え方もあるようですね。

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参照:Automotive News Canada

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