| そのスペックや外観よりも、やはりインテリアが最大の魅力。ロールス・ロイスは「空間に勝る贅沢はない」という信念を持っている |
おそらくは一見して分かる部分より、「実際に所有してはじめてわかる」部分に注力されている
さて、ロールス・ロイスが1906年の創業以来「初」となるピュアエレクトリックカー「スペクター(Spectre)」を発表。
現時点では価格が公表されていないものの、早ければ納車が2023年末から開始される、とアナウンスされています。
ボディ形状は「クーペ」となり、つまりレイスの後継という位置づけとなりそうですが(ただしロールス・ロイス自身はファントムクーペの後継だと述べている)、クーペを選んだことについては”若者をターゲットにしているから”だと以前に公表されていますね。
なお、ロールス・ロイスの共同設立者、チャールズ・スチュワート・ロールスは(驚くべきことに)1900年の時点で「電気自動車 は完璧にノイズレスでクリーンである。匂いも振動もない。固定された充電ステーションが整備されれば、非常に便利になるはずだ」という言葉を残していますが、それが100年以上の時を経てようやく実現することになり、チャールズ・スチュワート・ロールスからすると「ようやくこの時が来たか」と天からこの世を見下ろしているのかもしれません。
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ロールス・ロイス・スペクターは意外と保守的だった
そして今回公開されたスペクターの画像やスペックを見て思ったのは「意外と地味だな」ということ。
その外観は「ガソリンからエレクトリック」という大きな転換期を牽引するという大役を仰せつかった割には「ガソリン時代を引きずっている」ように見え、以前に発表されたロールス・ロイスの未来を示したコンセプトカー、103EXのようなぶっちぎりの未来的ルックスを期待していたぼくとしてはちょっとテンションが下がっています。※ホイールにはかろうじて103EXの面影が見える
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もちろんスペクターのシルエットはティーザー画像でも示されていたので、「大きく未来には行かない」ことがわかってはいたものの、予想を超える何かがなかったのはちょっと残念というのが偽らざる心境です(ただ、もちろん大きな変化を与えなかったのは意図的なものであるはずで、ロールス・ロイスはこのクルマを”過渡期”における橋渡しだと考えているのだと推測すると合点がゆく)。
ヘッドライトはBMW XMやi7 / 7シリーズ同様のスプリット形式で、(実際のヘッドライトは)バー状のデイタイムランニングランプの下に格納されています。
ヘッドライトは「ジュエリーボックス風」、そしてフロントグリルはロールス・ロイス史上もっともワイドで、22個のLEDによって内側から照らし出されるようですね。
テールランプはレイスよりもコンパクトに見え・・・
そのレンズ形状、内部構造ともに立体的に。
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このロールス・ロイス・スペクターの車体はアルミニウム製のスペースフレームを中心に構成されているといい(ベースはファントムと同じアーキテクチャ・オブ・ラグジュアリー)、その剛性はそれまでのロールス・ロイスに比較して+30%。
3,210ミリという長大なホイールベース(全長は5,453ミリ)の間に搭載されるバッテリー(容量は公開されていない)の重量は700kgもあり、そのため車体重量は2,975kgにも達します。※一回の満充電あたり航続距離は520kmだとアナウンスされている
エレクトリックモーターの数やレイアウトについても公表されていないものの、最高出力は585馬力(最大トルクは900Nm)、0-100km/h加速は4.5秒という数字が示され、これらについてもいささか「普通」。
ただし、もちろんこれら数値についてもロールス・ロイスはなんらかの思惑があるはずで、「数値によらない魅力」を持つのがこのスペクターであり、それが理解できないならば、それはすなわちロールス・ロイスを理解していないということなのかもしれません。
なお、ロールス・ロイスはこのスペクターを完成させるために世界中の路上を走らせたといいますが、「主に欧州のリゾート地を走らせる」という用途を想定してセッティングが進められたとされ、南仏ニースにて最終的な調整が行われたもよう。※ロールス・ロイスの創業者がこの地を好んだという理由もあるようだ
もちろん「魔法の絨毯のような乗り心地」はこれまでにないレベルでの完成を見ており、直進時の凹凸路面でのロールを防ぐためにアンチロールバーを瞬間的に切り離すというプラナーサスペンションシステム(これは他メーカーでも採用の傾向があり、高級車では常識となるかも)、アダプティブダンパー、そして4輪ステアリングを標準にて備えると紹介されています。
ホイールサイズは23インチ、そしてこのサイズのホイールを装着するのはなんと「100年ぶり」。
ロールス・ロイス・スペクターはこんなインテリアを持っている
そしてこちらはロールス・ロイス・スペクターのインテリアで、ロールス・ロイスCEO、トルステン・ミュラー・エトベッシュ氏が「これは、私たちのブランド、素晴らしい顧客、そしてラグジュアリー業界にとって、大胆な新章の始まりなのです。だからこそ、スペクターは、ロールス・ロイスがこれまでに生み出した中で最も完璧な製品であると信じています」と胸を張るインテリア。
さらに同氏は「ロールス・ロイス・モーター・カーズでは、完璧を追求することは、最高の製品を作ること以上に重要なことです。それは文化であり、姿勢であり、私たちの指針となる哲学なのです。創業者であるヘンリー・ロイスは、”何事も完璧を目指せ”と言いました。スペクターは、この文化の中で生まれました。それは、私たちの時代の感性と完全に調和しているのです。スペクターは、我々のブランドの将来の方向性を示し、世界で最も目の肥えた人々の呼びかけに完璧に応えています」とも。
ロールス・ロイスで有名なのは、天井に無数の星が煌く「スターライトルーフ」ですが、スペクターではそれを一歩進めて「スターライトドア(4,796個のLEDが仕込まれている)」を導入。
なお、ロールス・ロイスはほぼ100%「オーダーメイド」にて製造されており、このスペクターではこれまでのモデル以上にパーソナリゼーションの幅を広げている、とのこと。
ロールス・ロイスは「空間に勝る贅沢はない」という信念を持っているそうですが、ロールス・ロイスの顧客は「世界で最も裕福な人々」であり、およそ考えうる最高級のものに触れている人々でもあるため、ロールス・ロイスは、オートクチュール、モダニズム彫刻、航海デザイン、テーラリング、現代アートなど、自動車以外の世界にもインスピレーションを求めたといいます。
ちなみにこのダッシュボードは「柄が描かれている」のではなく「2年の歳月と10,000時間以上の作業時間をかけて開発されたこのイルミネーション」だそうで、スペクタクルな光のショーを実現してくれそう。
メーターはフルデジタルを採用し、「ロールス・ロイスの顧客がオーダーメイドの時計を好むことにヒントを得て、文字盤の色を自動車の内装色に合わせることができるようになった」とのこと(おそらく様々な文字盤を用意しているのだと思われる)。
フロントシートのデザインは、英国のテーラリングからインスピレーションを得たものだと紹介されています。
ちなみに多くのプレミアムカーブランドが「非レザー」内装を打ち出しているものの、ロールス・ロイスは今回のスペクターにおいてもとくにそういったエコ素材には触れておらず、レザー路線を貫くのかもしれません。
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そのほか、ロータリーコマンダーや・・・。
ドアに内蔵された傘も健在。
このあたりも既存のロールス・ロイスから「大きく離れない」ことを意識したのかも。
キーについてもこれまでと大きく変わらず、しかしパープルが採用。
この「パープル」はロールス・ロイスの新しいイメージカラーでもありますね。
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参照:Rolls-Royce