| このロールス・ロイス・ドロップテイル・アメジストの価格は軽く20億円を超えているだろう |
ロールス・ロイスのビスポークモデルは年々そのレベルが上がっている
さて、ロールス・ロイスはつい先日、最新コーチビルドモデルとして「ドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”」を発表していますが、その際には合計で4台のドロップテイルが存在することも明かされています。
そして今回、間を置かずに「2台めの」ドロップテイル”アメジスト”を公開することとなっており、構造としてはドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”と同一ではあるものの、このドロップテイル”アメジスト”は「宝石」「木材」をテーマとして製作されたといい、ロールス・ロイスによれば「空気力学的に機能的するウッドパネルを持つ唯一のクルマ」なのだそう。
ロールス・ロイス・ドロップテイル”アメジスト”の依頼主は「宝石商」
このドロップテイル”アメジスト”の製作を依頼したのは「宝石ブティックから多角的な事業を展開する多国籍企業へと成長した家業を持つ」顧客だといい、この顧客はプライベート・ミュージアムに多数の"貴重な宝石、重要な自動車、現代美術品のコレクション”を保管しているのだそう。
その個人名は伏せられているものの、今回アメジストをモチーフに選んだのは、それが「息子の誕生石であり、純粋さ、透明感、回復力の不朽のシンボル」であるからだとされ、実際にアメジストがインテリアとエクステリアに組み込まれるという贅沢な仕様を持っています。
なお、エクステリアにはツートンカラーの塗装が施されていますが、これはクライアントの家の近くの砂漠に咲く野草であるグローブ・アマランサスからインスピレーションを得たものだと紹介されています。
ロールス・ロイスによれば、これらペイントは「花の開花の複数の段階を捉えた」もので、ボディは繊細なシルバーを基調とした柔らかな紫色をベースに、赤、青、紫のマイカ(雲母)フレークをブレンドしたダークパープルのアクセントが用いられ、これによって"繊細なメタリックの光沢を持つユニークなモーブカラー "を作り出すことに。
そのほか、ホイールは特別仕上げの22インチ、ブラッシュ仕上げとポリッシュ仕上げが施されたパンテオン・グリルを備え、カーボンファイバー製のロアセクションは、「アメジスト顔料で着色された繊細なラッカー層」を持っています。
このペイントは「ほとんどの照明ではボディカラー同色に見える」そうですが、この部位は”繊細さと抑制に対するクライアントの情熱”を物語っている、というコメントも出されており(強い光が当たったときのみカーボン柄が透けて見えるのかもしれない)、強いこだわりが反映された部位であることもわかりますね。
ちなみにこの「ブラシ仕上げのグリルとグリルフレーム」はかなりレア。
そしてこのロールス・ロイスのマスコット、スピリット・オブ・エクスタシーの台座はアメジストのカボション(カボション加工は、宝石をファセット加工ではなく、丸みを帯びた形に成形し、磨き上げたもの)で、カボション加工はあえて目立つ輝きを避けるために使用されることが多く、ここも「繊細さと抑制」を表現している部分なのかもしれません。
外装におけるハイライトはリアセクションに用いられた単板デッキあり、これはロールス・ロイスが今までに製作した中で最大のウッドサーフェスであり、同時に自動車業界で唯一の”空気力学的に機能するウッドサーフェス”だと説明がなされ、どういうことかというと、「空力学者と木材のスペシャリストが協力し、パネルの形だけでなく、さまざまな木目の質感や単板自体の正確な配置角度を試し、見た目とダウンフォースを適切に発生するように設計されている」。
ちなみにルーフは「デタッチャブル」方式が採用され(おそらく車内に格納できないので、一旦外せばガレージに置いて出かけることになるものと思われる)、そしてこのルーフは”カラーエレクトロクロミックガラス”を採用しており、半透明から不透明にまで透過率を変更することができますが、「カラー」という文字が入るとおり、半透明ではインテリアカラーの「デューン(砂丘)」、そして不透明になると「アメジスト」へと変化します。
ロールス・ロイス・ドロップテイル”アメジスト”のインテリアはこうなっている
インテリアにおける最大の特徴は「ロールス・ロイス史上、最も広範な表面積」を持つウッドパネル。
カラマンダー・ライトを使用したオープン・ポア・ウッド・トリムはフェイシアとドアからショール・パネル、片持ち梁の "台座 "センター・アームレスト、そしてアフト・デッキにまで及んでおり、文字通りスペクタクルな印象です。
そしてエアコンの調整ダイヤルにも巨大なサイズのアメジストが埋め込まれ・・・。
メーターにはアメジストカラーがあしらわれます。
なお、「ドロップテイル”ラ・ローズ・ノワール”」ではダッシュボードにオーデマ ピゲの腕時計が据えられていましたが、このドロップテイル”アメジスト”ではパテック フィリップ、オーデマ ピゲと並んで雲上3ブランドの一角を成すヴァシュロン・コンスタンタンの「レ・キャビノティエ・アーミラリ・トゥールビヨン(2軸トーゥールビヨンにダブルレトログラード)」が装着されています。
見たところだとストラップを取り付けることができず、車両に装着してのみ使用ができる時計のようですが、手巻きムーブメント、アメジストカラーのインサート、手作業によるサンバースト・ギョーシェ模様が施されたホワイトゴールドの地板を持ち、もちろんこのドロップテイル”アメジスト”のために製造されたワンオフモデルです。※オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンとくれば残り2つのドロップテイルには何が装着されるのか非常に気になる。パテック フィリップは間違いなさそうだ
なお、このロールス・ロイス「ドロップテイルシリーズ」の開発には34億円程度が投じられているといい、もちろんそのコストは「4台のドロップテイル」にて分担されることになるものと思われ、そこにベースとなる車両価格やロールス・ロイスの利益を乗せると「販売価格は1台あたり20億円は下らない」と考えていいのかも。
これは自動車の価格としては常軌を逸したもので、しかしこの金額を支払ったとしても同様のクルマを他の自動車メーカーが作ることができるとは考えられず、よってこのクルマはロールス・ロイスのみが作りうる、そしてそれだけの価値があるクルマ(あるいは芸術作品)だとも考えることができそうですね。
そしてこのドロップテイルシリーズについては、一切の性能が公開されていませんが、それはもちろんこのクルマが「性能を云々する」性質のものではなく、かつ自動車の領域を超えているために性能によって判断される製品でもなく、しかし同時に「必要な要求を満たすだけの」性能を保有しているということを示しているのだと思われます。
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参照:Rolls-Royce, Vacheron Constantin