| これほどまでに各社の戦略が分かれ、そして先行きが不透明であった時代は例を見ない |
アウディはあくまでも電動化に関しては強気の姿勢
さて、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、ステランティス、日産、GM、フォードなどが(EVの需要減退を受け)相次ぎ「完全電動化を後ろ倒ししてガソリンエンジンを延命する」と述べ、これまでとは路線を変更し、”市場の実情に合った”マルチパワートレーン戦略を採用すると発表しています。
その一方、電動化の雄であったアウディのゲルノート・デルナーCEOは「電動化計画に変更はなく、2033年までにヨーロッパと北米での内燃機関の販売を段階的に廃止する」とコメントしており、現在の「電動化に懐疑的な風潮」に惑わされず初志を貫くことに言及し、他社とは大きく異なる姿勢を改めて強調することに。
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アウディは2026年に最後の内燃機関搭載車を発表
ゲルノート・デルナーCEOは昨年アウディのトップに就任したばかりではありますが、それまでのアウディの路線を踏襲し、自身の役割として「電動化次代に向け、シンプルで効率的なポートフォリオを構築すること」を示していて、つまるところ「ガソリン/ディーゼル車を廃止し、ラインアップをEVへと入れ替え、かつEV用プラットフォームも最小限に留める」ことを使命としています。
そして一つの焦点は2030年であり、この時点で「ほぼEVのみのラインアップ」へと移行すべく、2024-2025年にかけて20以上の新型EVを投入し、内燃機関搭載車については2026に発売されるクルマが最後となるもよう。
アウディにおける一般的なライフサイクルは7年なので、この”最後のガソリン車”は2026年に発売された後、2033年まで寿命をまっとうすることになりますが、そこから先は欧州と米国市場向けとしては「EVのみ」、その他の市場(おそらくはアジアと中南米、アフリカ、中東)については「それまでに発売したガソリン車を細々と」販売することになりそうです。
実際のところ、ゲルノート・デルナーCEOは「現時点でも内燃機関登載車の販売比率が減少している」と述べ、2026年以降は急速にそのシェアが低下すると見込んでおり、「内燃機関搭載車の販売規模がビジネスとして成り立たないレベルにまで減少するだろう」とも語っているため、状況によっては2033年を待たずして(北米と欧州では)アウディのガソリン車が消滅してしまうのかもしれません。
今後「世の中がどうなるか」は誰にもわからない
ただしアウディの計画とは裏腹に、世の中は非常に流動的となっていて、直近だとユーロ7の導入内容が大幅に緩和され、そいて主力市場のひとつであるアメリカではドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利する可能性が高まっており、もしそうなると(同氏はガソリン車を支持しているので)EV販売を促進してきた補助金など優遇政策が緩和もしくは撤廃される可能性も。
しかしながらゲルノート・デルナーCEOはこういった未来に対しても「たとえ再び法律を変えるだけの動きがあったとしても、この10年(2020年代)が終わるまでに新たな政治状況は発生しないと考えます。ドナルド・トランプ”新大統領”につられる形にて、欧州議会で右派ポピュリストが勝利したとしても、CO2排出量と排気ガスの規制を満たすにはエレクトロモビリティが唯一の方法であることに変わりはありません」。
つまりアウディはかなり強気の「EV推進戦略」を維持することになりますが、柔軟性を欠いた戦略であることは間違いなく(BMWだと、そもそもガソリンエンジン廃止の期限を切っておらず、”世の中の流れに合わせる”としている)、これが吉と出るか凶と出るかについては2030年を待たずして結果がわかるものと思われます(こればかりは本当にわからない。中国製EVが欧米から締め出され、EVに注力したアウディがそれら市場での勢いを増す可能性もある)。
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参照:Auto News