| 1987年に発生した米国の株価大暴落によって資金繰りが悪化したことが直世知の原因だとされるが |
いずれにせよ、このクルマが発売されていたならば、ポルシェの歴史は今とは違うものとなっていただろう
さて、ポルシェはラインナップ拡充のために様々な試作車を製作していることでも知られますが、そんな中でもいくつか「もしもこれが実現していたら」というクルマがいくつかあり、そのうちのひとつが「984」。
当時のポルシェは設計順に連番を降る傾向にあったので、初代ボクスターである「986」の2つ前の設計番号が与えられていることがわかりますが、設計されたのは1987年で、ポルシェの掲げる理念のひとつである「いかに低い走行抵抗によって、いかに高いドライビングダイナミクスを実現するか」を追求したクルマです。※ポルシェは抵抗を嫌うので、抵抗が大きくなりがちな「高回転型」エンジンについても積極的ではない(しかしフラット6のように限られた成約の中でパワーを追求し、結果的に高回転になる例もある)
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ポルシェ984とはどんなクルマだったのか
そこでこのポルシェ984についてもう少し見てみると、これはスペインのセアト(SEAT)との共同にて開発した小型のロードスターで、135馬力、車体重量880kg、最高速220km/hというスペックを持っています。
ただ、もっとも驚くのは当時「目標販売価格14,000ドル」を掲げており、当時の為替レートが1ドル=145円だったので、つまりは「203万円のポルシェ」ということに。
参考までに、1987年の新卒初任給は200,300円だとされるため、「新卒の年収よりも安価なポルシェ」であったことに加え、1989年に発売されたマツダ(ユーノス)ロードスターの開始価格である169万円と比較しても大きく乖離していないということがわかります。
そのデザインは当時の928と944からインスピレーションを受けており、インテリアはほぼ「944(後期)のまま」。※ただし当時は944のインテリアデザインは先進的だと捉えられており、これはむしろストロングポイントであった
上述の通りセアトとの共同にて開発が進められるものの、その後セアトが何らかの事情でプロジェクトから引き上げることとなってしまい、そこでポルシェはセアトのエンジンを使えなくなったために自前の空冷4気筒エンジン(水平対向)へとスイッチすることになるのですが、このエンジンは(プロトタイプでは914から流用した電人であったものの)市販時には新開発のフラット4を積むことを想定しており、この新型エンジンは小型航空機にも積まれる予定であったと言われます。
なぜかポルシェは「984」計画をシャットダウン
ただしその後にポルシェはこの984計画を中止し、かわりに水冷フラットシックスを搭載した「986ボクスター」を1996年に発売することになるのですが、その経緯については明かされておらず、「ポルシェのみぞ知る」。
セアトが撤退したことでコストが上昇したのかも知れませんし、小型航空機の計画がなくなったのかもしれませんし、あるいは911の水冷化に「乗っかる」こととなったのかもしれません。
あるいは、その後何度か出ては消えた「廉価版ポルシェ」の計画中止の理由と同じく「利益率と利益額が低いから」なのかもしれません。※ポルシェ公式だと、1987年のアメリカにおける株価大暴落が直接の原因だとされている
ただ、1989年にマツダが「ロードスター」を発売し初代NA世代のみで25万台を販売したことを考慮すると、このポルシェ984が発売されていたならば、当時のポルシェの事情を大きく変えていた可能性があり(986ボクスターの登場によって年間販売台数が2万台を突破したと記憶しているので、この984がポルシェでもっとも売れるモデルとなっていた可能性が高い)、ポルシェが「開発費のモトが取れる」採算レベルとしていた15,000台を軽く超えるヒット作となっていたのかもしれません。
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そう考えると、もしもポルシェがこの984を発売していたならば、現在のポルシェは「SUVやセダン中心のブランド」ではなく、「小型軽量のスポーツカーを作るブランド」として知られるブランドであったのかもしれませんね。
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