| 現在、多くのスポーツカーメーカーがかつて活躍したエンジニアを閑職に押しやり、新世代のエンジニアを起用している |
これも時代の流れではあるが、「捨てる神あれば拾う神あり」
Image:Eccentrica
さて、ランボルギーニにて最高技術責任者を長年勤めたマウリツィオ・レッジャーニ氏が、ディアブロのレストモッドで一躍名を挙げたエクセントリカに加わったとの報道。
マウリッツォ・レッジャーニ氏については解説が必要だと思われ、ここでその概略を述べておくと、同氏は1959年にスーパーカーの聖地でもあるサン・マルティーノ・スピーノ(モデナ)で生まれ、この地で(スーパーカーへの愛とともに)育っており、1982年にはマセラティのエンジン設計・開発部門にて自身のキャリアをスタートさせています。
その後は1987年から1995年まで、カンポガリアーノのブガッティ(ロマーノ・アルティオーリ時代)でEB110のパワートレインを担当したのちにムルシエラゴのプロジェクトリーダーとしてランボルギーニへと1995年に入社し、2001年には同社にてパワートレインおよびサスペンションの研究開発部門の責任者に任命され、2006年には最高技術責任者へと昇格してV12、V10、V8(ターボ)モデルを始めとする、最も重要なモデルの技術およびデザイン革新を担ったという人物です。
なぜマウリッツォ・レッジャーニ氏はランボルギーニを退職したのか
じゃあなぜその人物がランボルギーニを辞したのかというと、ランボルギーニはこれからの電動化時代を迎えるに際してマウリッツォ・レッジャーニ氏を最高技術責任者のポジションから外し、代わりにルーベン・モール氏を昇格させたことが原因だと思われます。※マウリッツォ・レッジャーニ氏はランボルギーニのモータースポーツ部門の副社長へと異動
なお、こういった動きはフェラーリなどほかのスポーツカーメーカーでも顕著であり、つまり「いかにそれまでの業績に貢献した人物であっても、これからの時代にそぐわないと判断した場合は容赦なく異動させる」という動きが見られたのが2022年。
-
ランボルギーニも人事異動!これまでの開発責任者はモータースポーツ部門へ、そしてアウディから新たな車両責任者が着任。ガソリン時代の終焉を意味し、電動化時代への対応か
| この流れはもはや誰にも止めることができない | すでにフェラーリも同様の人事を発表済み | ランボルギーニが「研究開発部門の組織変更を行った」と発表。これによると、ルーベン・モール氏が(アウディの ...
続きを見る
そしてマウリッツォ・レッジャーニ氏は新しく与えられた役割、そもそもの人事を不服と捉えていたと見え、昨年ランボルギーニを退職しており、そして今回新たな活躍の場を見つけたということになりそうですね。
ちなみにこの「エクセントリカ」について述べておくと、ランボルギーニの熱心なコレクターであり、インテリア関連会社を経営することで知られるエマニュエル・コロンビーニ氏によって設立された新しい会社で、2023年6月にディアブロのレストモッドプロジェクトを発表することでその名が世界中に知られることに。
-
神話再び。ランボルギーニ・ディアブロのレストモッドプロジェクトが始動。手掛けるのはランチア・デルタ、ポルシェ928の現代版を手掛けたエンスージアスト
| 近代ランボルギーニのデザインに携わったワルター・デ・シルヴァもディアブロ”レストモッド”プロジェクトに参画するようだ | これまでの実績から見て、誰もが納得する「現代のスーパーカー」となるのは間違 ...
続きを見る
ここでのマウリッツォ・レッジャーニ氏の役割はディアブロのレストモッドを開発するためのアドバイザー的ポジションだとされ、(ムルシエラゴ以降の)歴代ランボルギーニV12モデルの開発を率いてきた人物にとってこれ以上ふさわしい職務はないのかもしれません。
「これは、30年前に起こったことを現代の技術をもって思い起こさせるという、特別な機会です。私たちは、可能な限り優れたディアブロを持ちたいという少数の顧客のために、エキサイティングな体験を創造します。」
マウリッツォ・レッジャーニ
-
究極のディアブロ誕生か。ランボルギーニ愛好家が19台のみをレストモッドし1.9億円で発売開始。インスピレーション元はディアブロGTR、あらゆる面での機能向上が図られる
| ディアブロが本来持つ荒々しさに加え、最新の機能やデザイン、そして素材によるラグジュアリーがプラス | これぞまさに究極のレストモッドだと言えそうだ さて、先日その製作がアナウンスされたランボルギー ...
続きを見る
この「現代化された」ディアブロは完全なオーバーホールからスタートし、最新の技術を用いたステアリングシステム、トラクションコントロール、エアコンシステムが装備され、新しいヘッドライト含むライティングシステムなど多くの外観上のアップデートが行われます。
なお、搭載されるV12エンジンは500馬力から550馬力という「50馬力の」パワーアップにとどまりますが、マウリッツォ・レッジャーニ氏いわく「大きな出力向上よりも、軽量化の方がはるかに重要です。これが私のビジョンであり続けます」とのことなので、このディアブロ”レストモッド”は先端素材を用いての大幅な軽量化がなされると考えていいのかも。
「全体的な目標は、デザインを正しく維持することですが、(当時使用された)プラスチックを高品質の素材に交換し、人間工学とユーザーエクスペリエンスを完全に見直すことで、外観と感触を向上させることです」。
Eccentrica
なお、シンガー・ヴィークル・デザインによるポルシェ911の「再解釈」に始まった現在のレストモッドブームですが、現在ではランチア・デルタ / ストラトス、ルノー5ターボ、ポルシェ928、フェラーリF355など様々なモデルにも対象が拡大しており、これらの新興レストモッダーあるいはカロッツェリアは「スーパーカーメーカーを辞した前世代のエンジニア」にとっての重要な受け皿となるのかもしれませんね。
-
フェラーリF355「究極の」レストモッド登場。F355の持つアナログ体験を強化すべく現代の素材・技術を盛り込み、内外装デザインはあのイアン・カラムが担当
Image:Evoluto Automobili | このフェラーリF355レストモッド「355 バイ エボルート」はデザイン、機能、パフォーマンスなど全てにおいてオリジナルのF355を尊重している ...
続きを見る
あわせて読みたい、ランボルギーニ関連投稿
-
まさかもう走っているとは。生産わずか19台、その価格2億円。ランボルギーニ・ディアブロのレストモッド「エクセントリカ」が目撃される
| ランボルギーニ・ディアブロ「エクセントリカ」はついこの前に発表されたばかりで「納車はまだ先」だと考えていたが | そのルックスはSF的、あるいは未来的だと言ってもいい さて、様々な話題を振りまいた ...
続きを見る
-
ランボルギーニは60年の歴史においてこんなコンセプトカーやワンオフモデルを作っている。(2)意外とディアブロベースのワンオフも多かった
| ディアブロベースだと、プレグンタ、カント、ラプターといったモデルも | 近代のランボルギーニも多数のワンオフモデルを製作している さて、ランボルギーニの60年にわたる歴史の中で登場した様々なワンオ ...
続きを見る
-
「見た目ほぼ完璧」なランボルギーニ・ディアブロのレプリカが中古市場に登場→即完売。これはさすがのボクでも瞬時に真贋の見分けがつかないな・・・。【動画】
| 多少は「おや」と思うところがあるものの、全体的には本物のランボルギーニ・ディアブロと見分けがつかない | ここまで精巧にレプリカを作るには相当なコスト、そして情熱が必要であったと思われる さて、北 ...
続きを見る
参照:Supercar Blondie, Bloomberg