Image:Ford
| たしかにクルマが売れ、それらが走行すればするほどフォードに利益は入ってくるものとは思われるが |
それでも「得るもの」よりは「失うもの」のほうが大きいだろう
さて、好き嫌いは別として、インターネットの世界は広告によって動いているといっても過言ではなく、そして現在メインの広告は、クリック、インプレッション、ページビューをカウントし、ブラウザの履歴やその他のデータからそのユーザーに可能な限り最適な広告を提供するというサジェスト型広告です。
そして今回フォードが特許を申請したのが「クルマの車内にもそれを持ち込む」という特許ですが、その仕組がちょっと恐ろしいとして話題に。
フォードが申請した特許はこうなっている
そこで今回フォードが申請した内容を見てみると、その仕組は「乗員の会話を聞き取ってその内容にマッチした広告をスピーカーから流す」「カーナビなどの検索履歴にマッチした関連広告を表示する」というもの。
たとえば乗員同士の会話にて「アウディ」という言葉が頻出すれば、フォードはアウディに関連した広告を流すということになり(もしかしたらライバル会社の広告は流さないかもしれない)、カーナビでラブホテルばかりを検索しているとラブホテルの広告が(そういったものがあればの話ですが)表示されるということになりますね。
これは様々な問題を含んでいて、ひとつはまず「そういった個人的な会話を収集し分析し、収益に結びつけていいのか」ということ。※自動車業界は個人情報の取り扱いに対する意識がもっともユルいとも言われている
そしてもうひとつはオーナーの行動や嗜好がバレバレになってしまい、いつも同じ人とそのクルマに乗って行動するなら問題はないものの、たまに違う人を乗せたりすると「気まずい」ことになってしまったりするのかもしれません(いつもネット上でアダルト関連の検索や視聴を行っていると、アダルト関連の広告がその人の画面に表示されるように、クルマでも同じようなことが起きないとも限らない。そういったものでなくとも、行動パターンを知られることにもつながる)。
そして「レンタカー」「カーシェア」でクルマを借りると、(リセットしない限りは)前に使用していた人の性質が筒抜けになってしまい、これもまた(ある意味では面白いのかもしれませんが)「ちょっと嫌」。
加えて、広告配信の方法や内容によってはドライバーの関心を引きすぎてしまい、結果的に運転から注意をそらしてしまう可能性も考えられ、この特許は「かかるコスト、得られる利益の割にリスクが高い」とも認識しています。
一体ユーザーにメリットはあるのか
この特許は、フォードが広告配信業者との提携によって「フォードが利益を得るだけ」のように思われなくもありませんが、そうなると消費者の反発は非常に大きいと思われ、よってフォードは配信される広告の内容や成果によってユーザーに利益を還元する可能性もあり、さらには「広告配信を選択すれば、オプションのサブスク料金を無料にしたり割り引いたり」という可能性も。
しかしそれでも様々な懸念が残り、この特許は「特許のまま」で終わり、実装されることはないのかもしれませんね(そう願う)。
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