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| さすがはマクラーレン、ここまでこだわったクルマはマクラーレン以外では作れないであろう |
このW1は現代最高、そして究極のサーキットウエポンであることは間違いない
さて、マクラーレンは昨日新型ハイパーカー「W1」を発表したところですが、これはF1そしてP1という「1の血族」であり、それらと同様にその時代を象徴し、ライバルに先んじたクルマです。
そしてこのハイパーカー(マクラーレンは”スーパーカー”と表現)には「変形するボディ」「3Dプリントされたサスペンション」など革新的な装備が取り込まれ、もっともパワフルなだけではなく、もっとも速いマクラーレンのロードカーという絶対的なポジションを確保しています。
そしてこのクルマのあちこちには「単なるパフォーマンス以上のストーリーが隠されており、ここでそれらを見てみましょう。
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マクラーレンW1は1,000kgのダウンフォースを発生する
まず、W1の魅力の多くは空力にあり、実際に時速280km時点で1,000kgものダウンフォースを発生させ、これはアストンマーティン・ヴァルキリーの1,100kgに近く、マクラーレン・セナの800kgポンドを超えていますが、ヴァルキリーはアンダーボディの「グラウンドエフェクト」に依存している唯一の他のロードカーであることを考慮すると、いかにW1の空力性能が優秀であるかがわかりますね。
なおフロントウィングは”アクティブで”、必要に応じてダウンフォースを調整しますが、リアには「アクティブ・ロングテール」ウィングがあり、1997年のF1 GTRレースカーに触発された意匠でもあり、可動することでリアボディが最大で約30延び、アンダーボディに装着されたディフューザーの効果を高めます。※リアウイングの下にあるパネルも「スカスカ」で、マクラーレンが軽量性を強く意識していることがわかる。これは現行モデルでも同様で、メッシュパネルが非常に薄い
さらにディフューザーには広いトンネルがあり、キャビンのすぐ後ろからリアアクスルの前にかけてカーブを描くそうですが、このディフューザーはリアバンパーとしても機能し、強い衝撃に耐えられる構造になっています。
加えてW1では「レース」モードに設定した際、フロントでは37mm、リアだと17mm車高が(自動的に)下がり、スプリングレートとダンピングフォースを大幅に増加させる、ともアナウンスされています。
マクラーレンW1のフロントにはF1にインスパイアされたサスペンションが採用されている
マクラーレンW1に採用されるフロントサスペンションは「F1にインスパイアされたもの」で、ダブルウィッシュボーンを使用し、プッシュロッド、トーションバー、インボードダンパーが用いられます。
しかしこのサスペンションアームは3Dプリンターによって製造されるチタン製という新規性を持っており(ロワーアームはエアロ形状を持ち、ブレーキの冷却を助ける)、マクラーレンいわく「ボディの隙間から見ることができる」。
これらのコメントを総合すると、フロントセクションは「フォーミュラカーのような構造にガワを被せただけ」だとも考えられ、アストンマーティン・ヴァルキリーのように空気の通り道だらけとなっています(ドアミラーの生え方がスゴい)。
ルーフにエンジンスタートボタンがある
W1ではルーフ内張りにエンジンスタートボタンやレースモードスイッチ、ウインドウのコントロールを配置した航空機スタイルのオーバーヘッドコンソールが採用されていますが、これは今までのマクラーレン製ハイパーカーと同様で、「フルフェイスヘルメットを被っているとき、一番見やすい位置を選択した」ため。
サンバイザーはカーボン製、厚さは2.5ミリ
ちなみにサンバイザーは「カーボンファイバー製」、そして厚さは2.2ミリ(画像は公開されていない)。
もちろんこれは軽量化を考慮したためですが、マクラーレンは「グラム」どころか「ミリグラム」単位での軽量化を考慮しているようで、たとえばアルトゥーラ(下の画像)のエアコン吹き出し口のルーバーは「ぼくが見たことがあるクルマの中ではもっとも薄く」作られています。
ドア開閉方法は「アンヘドラル」
マクラーレンは長年(ドアが前方に開く)ディへドラルドアを採用してきたものの、このW1ではドアが上に開く「ガルウイング」スタイル。
ただしマクラーレンはこれを「アンヘドラルドア」と呼んでいて、この名称は、航空用語から来ており、翼の角度を指しますが、これにより、ドアの先端でのエアフローが改善されています。※ドア(サイド部分)の構造を見ると、マクラーレンがいかにW1でエアロダイナミクスを重視したかがわかる
マクラーレンW1にはリバースギアがない
W1には新開発のV8ハイブリッドシステムが搭載されますが、トランスミッションも新しく設計しなおされ(8速デュアルクラッチ)、バックの際にはエレクトリックモーターを使用するため、「バックギア」を有しない構造です(アルトゥーラ、フェラーリSF90同様である)。
もちろんこれによって軽量性、コンパクトさを実現できることになりますね。
W1に採用されるパワーステアリングは「油圧」である
W1では近年の多くのスーパーカーやハイパーカーが採用する「電動」ではなく「油圧」をステアリングアシスト方式に採用しており、これは「純粋で他にはない」ドライビングコミュニケーションを提供するためだと説明されています。
マクラーレンW1は「シート固定」、これによって全長が7センチ短くなる
W1ではメルセデスAMG Oneやブガッティ・トゥールビヨン同様に「シートが車体に固定され」、かわりにステアリングホイールとペダルセットが前後にスライドするという仕様を持っています。
こにれよってシートレールのぶんの高さや重量を削減でき、シートのスライド幅を確保する必要がなくなったため、全長を「7センチ」節約することができたのだそう。
ステアリングホイールにはスイッチが2つしかない
たとえばフェラーリはステアリングホイールにスイッチを集約させる傾向にありますが、マクラーレンW1ではステアリングホイール上のスイッチは「たった2つ」で、それらは(瞬間的に加速力をUPさせる)E-ブースト用、もう一つはドラッグリダクションシステム(DRS)用。※しかも色分けされていて瞬間的に判断ができるようになっている
W1にはトランクがないがヘルメットを置くスペースがある
なおW1にはフロントトランクがなく(エアチャンネルが設けられている)、しかしシート後方にはヘルメットを置くスペースが設けられ、このクルマの素性を物語っているかのようですね。
ちなみに画像を見ても分かる通り、リアウインドウは無く車体後部は「全閉」で(ウインドウはあるが、これはエンジンを見るためだけのものだと思われる)、よって後方確認にはデジタルミラーが使用されます。
V8ツインターボは新設計、その配置すら「空力的」
W1に積まれる4リッター・ツインターボエンジン(MPH-8)は完全に新しく設計されており、従来のM840Tとは全く異なるユニットです。
フルードダンピングシステムを採用することでレッドラインは9,200RPMを実現、そして単体で928PSを発揮し、1リッターあたり233PSという(これまた)マクラーレン史上最高の出力を誇ります。
ちなみにエンジンの角度を「3度」傾けることでW1の全体的な空気力学性能を向上させているのだそう。
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参照:McLaren