>中国/香港/台湾の自動車メーカー

シャオミはなぜ「アップルが断念した」電気自動車の発売を実行し成功することができたのか?シャオミとアップルとの「相違」とは

シャオミはなぜ「アップルが断念した」電気自動車の発売を実行し成功することができたのか?シャオミとアップルとの「相違」とは

Image:Xiaomi

| シャオミはアップルよりも「広く深い」レベルでその製品が人々の生活に根付いていた |

さらにシャオミは「地の利」を掌握しサプライチェーンと生産拠点を確保

さて、昨年後半から現在にかけてのEV市場では「シャオミの躍進」がたびたび報じられていますが、その反面、ここ最近でクローズアップされているのが「なぜアップルはEVでの成功を掴めなかったのか」。

シャオミそしてアップル両者ともスマートフォンを軸に事業を展開しており、一方のシャオミはEV市場における有力プレイヤーとして一躍有名となり、しかしアップルは過去に何度もEV事業への進出が囁かれ、しかし結果的には「撤退」を決めています。

アップルと日産がアップルカーについて提携交渉
アップルがついに10年以上進めてきた自動車事業(プロジェクト・タイタン)からの撤退を決める。発足当初から苦戦続き、投資家はこれを評価し株価は上昇

| アップルのEV計画については当初から方向性が二転三転し、その実現製、収益性が疑問視されていた | ここまで巨額をつぎ込んだということになるが、それでも未来の損失を回避できたと考えるのが妥当だと思わ ...

続きを見る

シャオミとアップルの「差」はなんだったのか

アップルについては(直近では)数年前に「電気自動車を発売するのでは」というウワサが流れ、多くのファンが“iCar”の登場を心待ちにしていたものの、ヒョンデ、キア、ポルシェ、BMW、BYD、さらにはトヨタとも交渉の場を持ったとされながら、昨年はじめには正式にプロジェクトが中止され、約600人の従業員が解雇または他部署への配置転換を命じられたことが報じられています。

なお、シャオミはテクノロジー企業というポジションではアップルのライバルでもあり、電気自動車事業への参入発表からおよそ2年というスピードにて「SU7」を発売し、わずか1年という短期間のうちに中国国内において13万5000台を販売し、大きな成功を収めています。

つまりアップルとシャオミでの「EV事業」における(現時点での)差は非常に大きいということになりますが、この差については大きく分けると「2つ」あるといい、1つめはまず「シャオミがエコシステムを構築していたこと」。

ポルシェ・タイカン・ターボGTを破ったシャオミSU7 ウルトラが正式に発売、その価格が予定よりも35%引き下げられて1090万円に。タイカン・ターボGTの現地価格に比し1/4、もはやポルシェに「打つ手なし」
ポルシェ・タイカン・ターボGTを破ったシャオミSU7 ウルトラが正式に発売、その価格が予定よりも35%引き下げられて1090万円に。タイカン・ターボGTの現地価格に比し1/4、もはやポルシェに「打つ手なし」

Image:Xiaomi | もう「どうやっても」中国車に対抗するのは無理なような気がしてきた | 日米欧の自動車メーカーはそれぞれの強みを再分析し「生き残る道」を模索せねばならないだろう さて、シャ ...

続きを見る

どういうことかというと、シャオミは中国国内だと(スマートフォンメーカーとしてだけではなく)「総合家電メーカー」として捉えられており、中国の家庭ではスマートライト、空気清浄機、ロボット掃除機、ミキサーなど、生活のあらゆるシーンでシャオミ製品が存在し、すべてが1つのアプリで制御可能だとされています(中国では、シャオミ製品が存在しない家庭はないとも言われているほど)。

よってシャオミは中国人にとって非常に親しみがあり、そしてシャオミはこのエコシステムを活用し「クルマを家電製品の一部」として組み込むことに成功していて、例えばほかのシャオミ製品との連携、そしてこれまでユーザーが使用していた家電からのデータをもとに「ドライバーのライフスタイルに基づいて最適な充電タイミングを提案」といったことも可能なのだそう。

つまりシャオミSU7は「ユーザーの生活全体に入り込むことに成功した」のだとも考えてよく、これによって従来のクルマとは一線を画すユーザー体験を提供しているわけですね。

そしてこれは、シャオミがクルマ(SU7)を「移動手段」としてではなく、スマートホームの延長線上にある「コネクテッドデバイス」として位置付けたことを意味していて、これによりアップルがなし得なかった領域での成功を収めたのだとも考えられます(アップル製品とライフスタイルとの連携も可能ではあるが、シャオミのように一般的な家電領域にまでは踏み込んでいない)。

そしてもうひとつの「シャオミ成功の要因」が”サプライチェーンの完全掌握”。

「サプライチェーン掌握の重要性」はコロナ禍に入った後に注目されるようになった領域ですが、この際には日米欧の多くの自動車メーカーが「パーツの生産管理や輸送をサプライヤーに頼りきっていたため」、コロナ禍における様々な要因によってパーツの入手が困難になってしまい、その対策が後手に回ってしまったのは記憶に新しいところ。

一方の中国では、中国政府が長年にわたりEV産業に対して巨額の補助金を投入し、国内のEV製造体制を強化してきたという経緯があり、結果として中国ではEV製造に関するサプライチェーンが国内でほぼ完結する環境が整っています。

シャオミもこの利点を最大限に活用し、たとえばEV用バッテリーを世界最大手のBYDおよびCATLから調達し、さらに北京汽車集団(BAIC)が保有していた自動車工場を引き継ぐことですぐに量産体制を確立するといった対応を行っていて、同胞意識による横のつながりを構築したのだとも考えられます。

この迅速な生産・供給体制により、シャオミはわずか2年ちょっとで「SU7」を市場投入し、驚異的な販売実績を上げることができたわけですね。

アップルの困難とは何だったのか

逆にアップルが電気自動車の発売にまでこぎつけることができなかった理由としては以下の内容が考えられ、これらをうまく処理できていれば、ぼくらは今頃「iCar」を目にしていたのかもしれません。

  • サプライチェーンの欠如:Appleはスマートフォン生産においてはフォックスコンなどの委託製造パートナーを活用していたものの、自動車の製造には完全に新しいサプライチェーンが必要であった(一方のフォックスコンはOEM用EVシャシーを提供しており、なぜアップルがこれを使用しなかったのかはわからない)
  • 提携の難航:アップルはヒョンデやトヨタとの提携を模索していたものの、開発の主導権を巡って対立し、結果的に計画が白紙に戻ることに(アップルはあくまでもプロジェクトのリーダーという立場を貫き、提携先には隷属を求めたとされる)
  • 巨額の初期投資:自動車製造はスマートフォン製造とは異なって膨大な設備投資と長期的な開発期間を必要とし、アップルはこのリスクを回避するため、最終的にプロジェクトを中止たとされる
アップルはかつてBYDと秘密裏に提携しており、「プロジェクト・タイタン」終了後にBYDへとその成果を引き渡していたとの報道。これをもってBYDは世界を制することに
アップルはかつてBYDと秘密裏に提携しており、「プロジェクト・タイタン」終了後にBYDへとその成果を引き渡していたもよう。これをもってBYDは世界を制することに

| アップルは「自動車ビジネスから手を引く」のが早すぎたのかもしれない | BYDへと「アップルカー」の生産を委託するという道もあったはずだが さて、長い間アップルの自動車プロジェクト「タイタン」のウ ...

続きを見る

DSC08147

合わせて読みたい、関連投稿

シャオミSU7 ウルトラは発売後数日で「2年分の受注枠が埋まる」。さらに2027年までに世界展開を行う意向を発表
シャオミSU7 ウルトラは発売後数日で「2年分の受注枠が埋まる」。さらに2027年までに世界展開を行う意向を発表

Image:Xiaomi | シャオミは「遅れてきた真打ち」であり、海外市場においても強い存在感を示すだろう | BYDに加え「警戒すべき」中国の自動車メーカーがまた増える さて、シャオミは先日「SU ...

続きを見る

シャオミSU7 ウルトラ発売の興奮収まらず。発売後わずか2時間で年間販売目標の1万台を販売し、海外販売を示唆する発言も
シャオミSU7 ウルトラ発売の興奮収まらず。発売後わずか2時間で年間販売目標の1万台を販売し、海外販売を示唆する発言も

Image:Xiaomi | 日米欧の自動車メーカーにとってシャオミSU7 ウルトラは「悪夢そのもの」であろう | さらには安価なSU7標準モデル、SUV「YU7」も控え、シャオミはBYD以上の脅威と ...

続きを見る

昨年、シャオミは中国のみで10万台のSU7を販売し、一方ポルシェは全世界でタイカンを21,000台販売したのみ。もはや消費者は「ポルシェを高く、時代遅れ」だと評価?
昨年、シャオミは中国のみで10万台のSU7を販売し、一方ポルシェは全世界でタイカンを21,000台販売したのみ。もはや消費者は「ポルシェを高く、時代遅れ」だと評価?

Image:Porsche / Xiaomi | かつて欧州車は「富のシンボル」であり憧れの対象であったが | しかし現在では中国車が高い魅力を備えるにいたり、ポルシェはその価格の高さを正当化すること ...

続きを見る

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->中国/香港/台湾の自動車メーカー
-, , ,