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| シャオミはアップルよりも「広く深い」レベルでその製品が人々の生活に根付いていた |
さらにシャオミは「地の利」を掌握しサプライチェーンと生産拠点を確保
さて、昨年後半から現在にかけてのEV市場では「シャオミの躍進」がたびたび報じられていますが、その反面、ここ最近でクローズアップされているのが「なぜアップルはEVでの成功を掴めなかったのか」。
シャオミそしてアップル両者ともスマートフォンを軸に事業を展開しており、一方のシャオミはEV市場における有力プレイヤーとして一躍有名となり、しかしアップルは過去に何度もEV事業への進出が囁かれ、しかし結果的には「撤退」を決めています。
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シャオミとアップルの「差」はなんだったのか
アップルについては(直近では)数年前に「電気自動車を発売するのでは」というウワサが流れ、多くのファンが“iCar”の登場を心待ちにしていたものの、ヒョンデ、キア、ポルシェ、BMW、BYD、さらにはトヨタとも交渉の場を持ったとされながら、昨年はじめには正式にプロジェクトが中止され、約600人の従業員が解雇または他部署への配置転換を命じられたことが報じられています。
なお、シャオミはテクノロジー企業というポジションではアップルのライバルでもあり、電気自動車事業への参入発表からおよそ2年というスピードにて「SU7」を発売し、わずか1年という短期間のうちに中国国内において13万5000台を販売し、大きな成功を収めています。
つまりアップルとシャオミでの「EV事業」における(現時点での)差は非常に大きいということになりますが、この差については大きく分けると「2つ」あるといい、1つめはまず「シャオミがエコシステムを構築していたこと」。
For the first time, #XiaomiSU7Ultra is showcased to a global audience at #MWC25. Join our Xiaomi Insider for an exclusive walkthrough.⚡️
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どういうことかというと、シャオミは中国国内だと(スマートフォンメーカーとしてだけではなく)「総合家電メーカー」として捉えられており、中国の家庭ではスマートライト、空気清浄機、ロボット掃除機、ミキサーなど、生活のあらゆるシーンでシャオミ製品が存在し、すべてが1つのアプリで制御可能だとされています(中国では、シャオミ製品が存在しない家庭はないとも言われているほど)。
よってシャオミは中国人にとって非常に親しみがあり、そしてシャオミはこのエコシステムを活用し「クルマを家電製品の一部」として組み込むことに成功していて、例えばほかのシャオミ製品との連携、そしてこれまでユーザーが使用していた家電からのデータをもとに「ドライバーのライフスタイルに基づいて最適な充電タイミングを提案」といったことも可能なのだそう。
つまりシャオミSU7は「ユーザーの生活全体に入り込むことに成功した」のだとも考えてよく、これによって従来のクルマとは一線を画すユーザー体験を提供しているわけですね。
そしてこれは、シャオミがクルマ(SU7)を「移動手段」としてではなく、スマートホームの延長線上にある「コネクテッドデバイス」として位置付けたことを意味していて、これによりアップルがなし得なかった領域での成功を収めたのだとも考えられます(アップル製品とライフスタイルとの連携も可能ではあるが、シャオミのように一般的な家電領域にまでは踏み込んでいない)。
そしてもうひとつの「シャオミ成功の要因」が”サプライチェーンの完全掌握”。
Hot tech, long lines, and endless excitement at the Xiaomi #MWC25 booth! The queue says it all.
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「サプライチェーン掌握の重要性」はコロナ禍に入った後に注目されるようになった領域ですが、この際には日米欧の多くの自動車メーカーが「パーツの生産管理や輸送をサプライヤーに頼りきっていたため」、コロナ禍における様々な要因によってパーツの入手が困難になってしまい、その対策が後手に回ってしまったのは記憶に新しいところ。
一方の中国では、中国政府が長年にわたりEV産業に対して巨額の補助金を投入し、国内のEV製造体制を強化してきたという経緯があり、結果として中国ではEV製造に関するサプライチェーンが国内でほぼ完結する環境が整っています。
シャオミもこの利点を最大限に活用し、たとえばEV用バッテリーを世界最大手のBYDおよびCATLから調達し、さらに北京汽車集団(BAIC)が保有していた自動車工場を引き継ぐことですぐに量産体制を確立するといった対応を行っていて、同胞意識による横のつながりを構築したのだとも考えられます。
この迅速な生産・供給体制により、シャオミはわずか2年ちょっとで「SU7」を市場投入し、驚異的な販売実績を上げることができたわけですね。
Fan energy at an all-time high! The future is unfolding right here on the first day of #MWC25. 🤩 #XiaomiExplorers
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📍Hall 3 | 3M30, Fira Barcelona Gran Via pic.twitter.com/ufFxkxMj4M
アップルの困難とは何だったのか
逆にアップルが電気自動車の発売にまでこぎつけることができなかった理由としては以下の内容が考えられ、これらをうまく処理できていれば、ぼくらは今頃「iCar」を目にしていたのかもしれません。
- サプライチェーンの欠如:Appleはスマートフォン生産においてはフォックスコンなどの委託製造パートナーを活用していたものの、自動車の製造には完全に新しいサプライチェーンが必要であった(一方のフォックスコンはOEM用EVシャシーを提供しており、なぜアップルがこれを使用しなかったのかはわからない)
- 提携の難航:アップルはヒョンデやトヨタとの提携を模索していたものの、開発の主導権を巡って対立し、結果的に計画が白紙に戻ることに(アップルはあくまでもプロジェクトのリーダーという立場を貫き、提携先には隷属を求めたとされる)
- 巨額の初期投資:自動車製造はスマートフォン製造とは異なって膨大な設備投資と長期的な開発期間を必要とし、アップルはこのリスクを回避するため、最終的にプロジェクトを中止たとされる
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