
| 美しさは見る者次第?メルセデスEQSの“風変わりな”デザインとは |
メルセデス・ベンツがEQシリーズで得た教訓と今後の戦略
メルセデス・ベンツのEVラインアップにおけるフラッグシップ「EQS」は、市場であまり評価されなかったクルマの一つです。
「EQSってそこまで悪い見た目かな・・・?」と感じている人もいるかもしれませんが(ぼくもそこまで悪くないと思う)、デザインに関しては否定的な意見が多いのもまた事実。
EQSは徹底した空力性能を優先した“ジェリービーン”のようなフォルムが特徴。しかしこのアプローチが、従来のSクラスのような存在感やラグジュアリー感を求める層には受け入れられなかったのだとメルセデス・ベンツ自身が「過ち」を認める発言を行っています。
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デザイン責任者が語る「EQSは10年早かった」
今回、メルセデス・ベンツのデザイン責任者であるゴードン・ワグナー氏は英Autocar誌のインタビューに対し「EQSは10年早すぎた」とコメント。
つまり、クルマ自体があまりにも未来的すぎて、現代の消費者にとっては時代を先取りしすぎた製品であり、それがために「受け入れられなかった」というわけですね。
実際、EQSは登場から4年経過していますが、デザインに対する評価は依然として低調のままで、EQSに限らず、EQシリーズ全体のスタイリングが支持されていない状況もあり「最新のEQシリーズはガソリン車風のデザインに先祖返り」することに。
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Sクラスの購買層には響かず──「まったく別のクルマだった」
ゴードン・ワグナー氏は、EQSがSクラスの顧客層に刺さらなかった理由として、「EQSはまったく別のコンセプトで開発されたクルマだったから」だと認めており、伝統的なSクラスが“ショーファーカー(運転手付きで乗ることを前提とした高級セダン)”として長いボンネットや堂々としたフォルムを持っているのに対し、EQSは空気抵抗を最優先したパッケージングや、それ(伝統的なSクラス)とは正反対の哲学を採用していて、さらにはEVならではの「フロントにエンジンを積まない」という利点を活かした「キャブフォワード」なスタイリングを持っています。
“未来的Sクラス クーペ”として売っていれば結果は違った?
同氏はさらに振り返りの中で、「EQSはCLSやSクラス クーペ、あるいは“未来的なクーペ”として売るべきだったかもしれない」とも。
つまり、Sクラスの後継という立ち位置ではなく、まったく新しいジャンルとして提示していれば、市場の反応も変わっていた可能性があるということですが、メルセデス・ベンツはすでに、EQシリーズのようにEV専用デザインで“別ブランド感”を出す手法からの転換を図っています。
つまり現在はガソリン車とEVとを統一デザインで展開していて、例えば新型CLAはパワートレインの違いに関係なくほぼ同じデザインを持っており、さらに、次期GLCのEV版は「EQC」ではなく「GLC EV」として登場予定です。
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GクラスのEVモデルも「EQG」ではなく「G580 with EQ Technology」として販売されており、BMWと同様に1つのモデル内でパワートレインを選べる戦略へと舵を切っているのが「メルセデス・ベンツの現状」でもあるわけですね。
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EQデザインは「進歩的で意図的」だった──だが顧客は“電子機器”と認識?
ゴードン・ワグナー氏は以前にもEQシリーズのデザインについて「非常に進歩的で、意図的なものだった」と擁護したことがあり、しかし、EQSが市場で受け入れられなかった背景には、EVそのものに対する消費者の認識もあると指摘します。
「EVは“電子機器”のように見られている。内燃機関車は“高級機械式腕時計”のような感覚で、長く所有するものとして捉えられている」
つまり、クルマに「永続性」「機械的魅力」を求める層には、EQSはあまりにも“未来的”で“使い捨て的”に映ってしまったのかもしれません。
今後のEQSはどうなる?
メルセデス・ベンツは(驚くべきことに)EQSの販売継続を決めており、2026年には二度目のフェイスリフトが予定されていますが、このマイナーチェンジでは、新型CLAと同様に、前後ランプに「スリーポインテッドスター」を取り入れたデザインになる見込み。
(ガソリンモデルとデザインを共有する)次期電動Sクラスの本格登場は2030年ごろと見られており、それまでのつなぎ役として、EQSは今後もアップデートを続けながら残り続けることとなりそうですね。
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参照:Autocar