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| マツダは新型CX-5の内装において大きくインターフェースを変えてきた |
ミニマリズムは正義? それとも使いにくい?
マツダは先日、ベストセラーモデルであるCX-5の第3世代を正式に発表していますが、CX-5は2012年の登場から約13年で世界累計476万1329台を販売したマツダの屋台骨です。
よってモデルチェンジに際しては、旧来のファンを失わず、かつ新しいファンを取り込むという難しい課題が課せられるわけですね。
そこでマツダは「キープコンセプト」な外観を取り入れつつも各部をブラッシュアップしているのですが、インテリアに関しては(外装に比較し)大きな変化が加えられたことが話題となっています。
「ボタンもダイヤルもない?それなら買わない」「物理操作系がないのは絶対に無理」——SNSや自動車系メディアの記事には、そんな“アナログ派”からの不満の声が相次いでおり、今回マツダはそれに対するコメントを発しています。
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なぜ“ボタンレス”に?マツダの回答
こうした反応を受け、米マツダ広報担当のタマラ・ムリナルチク氏は次のように回答。
「社内調査によれば、現在のユーザーは大型インフォテインメントディスプレイによる操作を好んでいます。今回のCX-5では、これまでのコマンダー式操作を廃止し、タッチスクリーンと音声操作に統一しました。」
具体的には、以下のような新たな「HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)」が採用されているとのこと。
- エアコン、オーディオ、ナビなどの操作を音声で実行できる高度な音声認識
- ステアリングホイール上の直感的なスイッチにより、視線移動を最小限に抑えた操作性
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「タッチスクリーンは使いづらい」と言っていたはずでは?
この方針転換には驚きの声もあり、というのも、2019年にマツダは「タッチスクリーン操作は運転中に不安定で危険性がある」とし、Mazda3ではわざわざタッチ機能を排除していたから。
当時のHMI開発責任者マシュー・バルブエナ氏は(当時)次のようにコメントしています。
「ドライバーがタッチスクリーンに手を伸ばすと、無意識にステアリングにトルクをかけ、車線がズレる危険があります。画面を見る必要があるため、注意力も散漫になります。」
ちなみにこちらは先代(日本だとまだ現行)CX-5のインテリアで、センターコンソールやシフト周りに多数のスイッチが並んでいることがわかりますね。
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それがわずか数年で方向転換を遂げた理由については中国市場の影響が背景にあるとも指摘されていて、実際にマツダは近年、長安汽車との合弁でEZ-6やEZ-60といったEVを展開しており、これらの車両もすでにタッチスクリーン中心の操作系を採用済み。
新型CX-5は“純マツダ設計”ではあるものの、インテリアデザインに関してはEZ-6やEZ-60との共通点が多いのもまた事実で、まずこちらはEZ-6ですが、非常にシンプル、そしてセンターコンソール周りのスイッチが消失しています。
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そしてこちらはEZ-60。
ステアリングホイール中央のカモメマークが「MAZDA」に変更されていますが、このデザインは新型CX-5にも継承され、もちろんEZ-6同様に「シンプルかつミニマル」。
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そこでもういちど新型CX-5のインテリアを見てみると、これらと近い雰囲気を持つことがわかります。
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ただ、センターコンソールには「シフトスイッチ」ではなく「シフトレバー」が残され、いくばくかの物理スイッチが残ることからも「完全に中国スタイルへと」移行したわけではないことがわかり、マツダは「ある程度の共通性を全世界で持たせつつ、より多くの嗜好に対応できるよう、最大公約数を狙った」ということもわかりますね。
なお、この「市場の嗜好」については中国とそれ以外にて大きく性質が異なり、中国ではマツダのいうように「タッチや音声操作」つまりスマートフォンと同じ操作系を、しかし日米欧では「独立した物理スイッチを操作する」方法が好まれることが統計から明らかになっていて、そのためフォルクスワーゲン、フェラーリ等は「タッチ式から物理式へ」の回帰を進めていることが明かされています。
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ただ、マツダの場合、中国市場において「中国人の嗜好にあわせた」モデルが驚異的なヒットを飛ばしたことから「中国式のほうが正しいのでは」と考え、そちらが優先されることとなったのかもしれません。
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ロータリー復活モデルや次期ロードスターはどうなる?
そこで気になるのは今後のマツダ各モデルへの影響。
とくに次期MX-5(ロードスター)や、長年噂されてきたロータリー・スポーツカーの復活モデルなど、走りにフォーカスした車種には“ボタンレス・インターフェース”が果たして合うのかどうか、という点です(スポーツカーでは、走行する速度域が高い場合、運転に集中しなければならない場合が多く、操作時にあれこれ考える余裕はない)。
過度なミニマリズムは、操作性やドライバーの満足感を損なう可能性もあるため、マツダがどこで“デジタルとアナログの境界線”を引くのか、今後の展開に注目が集まるところですね。
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参照:Motor1