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アウディE5スポーツバックが中国で発売開始、わずか30分で1万件超の受注を獲得。やはり「中国専用の仕様」でなくては中国で”売れない”?

アウディE5スポーツバックが中国で発売開始、わずか30分で1万件超の受注を獲得。やはり「中国専用の仕様」でなくては中国で”売れない”?

Image:AUDI

| アウディは中国の自動車メーカーとの「共同開発」に未来を託す |

発売初日に驚異的な受注を記録

2025年9月16日、(中国におけるアウディの現地合弁企業)SAICアウディが新型EV「アウディE5スポーツバック」の発売を開始し、わずか30分で10,153件の注文を獲得したと発表。

ミッドサイズEV市場に投入された同モデルは、価格が23万5,900元(約480万円)からと比較的”戦略的”な設定を持っています。

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いくつかの自動車メーカーは「現地仕様」のEVにて巻き返しを図る

かつて中国市場では「外資系の自動車メーカー」のシェアがほとんどであったものの、EVが普及しはじめたあたりから「現地の新興EVメーカー」の勢力が拡大し、これによって既存自動車メーカーの多くがシェアを失い続けるという事態へと陥ることに。

これはメルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ポルシェといったプレミアムカーメーカーのみに限った話ではなく、フォルクスワーゲンやトヨタ、ホンダ、日産のような普及価格帯の自動車メーカーにまで広く関係する話であり、そのためいくつかの自動車メーカーは「現地の自動車メーカーに教えを請う」ことで現地対応の中国専用モデルを投入しているわけですね。

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なお、中国で外資系自動車メーカーが売れなくなった背景には様々な理由がありますが、もっとも大きなものとしては「嗜好の違い」。

中国市場ではクルマを運転する楽しみなどは微塵も考慮されず、むしろ「運転しなくていい」「楽に移動したい」「移動中、運転に気を取られず他のことを楽しみたい」という要望が非常に強く、さらにはデザイン的な嗜好もほか市場と全く異なります。

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よって外資系自動車メーカーの製品と中国市場の要求との乖離が年々大きくなってゆき、そのギャップを埋める存在としての中国車が勢力を伸ばしていたというのが直近の状況であり、そしてアウディが導入した解決策が「現地専用の、現地で開発したクルマを投入する」。

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ただ、中国の嗜好に合わせたクルマをつくると、それは他の市場で販売するクルマと全く異なるものになってしまい、よってアウディは混乱を避けるため、既存ブランドとの区別のために中国専用ブランドではすべて大文字の「AUDI」という表記を用い、象徴的なフォーリングを廃止することに。

かくして登場した「完全なる中国市場専用車」が今回のE5スポーツバックというわけですね。

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アウディE5スポーツバックのグレードと価格

E5スポーツバックは4種類のグレードを展開。

いずれもCATL製バッテリーを搭載し、後輪駆動(RWD)と四輪駆動(AWD)の両方を設定しています。

グレード価格(元)駆動方式出力バッテリー容量航続距離(CLTC)
Pioneer235,900RWD220kW76.2kWh(LFP)618km
Pioneer Plus269,900RWD300kW100kWh(NCM)773km
Pioneer quattro269,900(AWD386kW83.3kWh(NCM)623km
Flagship quattro319,900AWD579kW100kWh(NCM)647km

最上位の「Flagship quattro」は0-100km/h加速3.4秒を誇ります。

デザインとサイズ

外観は「Audi Eコンセプト」から受け継いだファストバックシルエットを採用(クーペ風セダンが好まれるのも中国市場の一つの特徴である)。

Cd値0.252という高い空力性能を実現していますが、中国で好まれる「ツルッとした」外観を持っており、アウディらしい「グリルによる主張」が最小限に止められていることには要注目ですね。

  • 全長:4,881mm
  • 全幅:1,960mm
  • 全高:1,479mm
  • ホイールベース:2,950mm

ライティングは942個のLEDと約2,000個の三角形要素で構成され、ダイナミックなウェルカムアニメーションを演出するのも「中国風」。

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インテリアとテクノロジー

キャビンには59インチ一体型ディスプレイを配置し、Qualcomm製Snapdragon 8295チップとAudi OSで駆動。

  • デジタルコントロール「Audi Island」
  • 電子ミラー
  • 大規模言語モデルを活用した「Audi Assistant」
  • マルチゾーン音声認識
  • Apple CarPlay / Huawei HiCar対応

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さらに、シートヒーター・ベンチレーション、パノラマルーフ、360度カメラ、ワイヤレス充電などを標準装備。上級グレードではエアサスペンション、CDCアダプティブダンパー、BOSE 18スピーカーなども備わりますが、AIによるアシスタントも「常駐」するもよう。

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先進運転支援機能

E5スポーツバックは27個のセンサー(LiDAR、レーダー、カメラなど)とNvidia Orin-Xチップを搭載。MomentaのEBMソリューションを採用し、都市部走行・高速道路・自動駐車といった高度な運転支援を実現しています。

競合と市場ポジション

アウディE5スポーツバックは、競争の激しい中国のミッドサイズEV市場に参入。

ライバルはテスラ・モデル3、NIO ET5T、Zeekr 007 GTなどが想定され、2025年8月にはテスラ・モデル3が1万7,739台を販売し、このセグメントのリーダーとなっています。

そして今回、それだけ「受注が集まった」ということは、中国の現地メーカーとの「協業の甲斐があった」ことが明らかになるとともに、ひとつの成功法則が導き出されたと考えていいのかもしれません(これは日産、マツダも同様である)。

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参照:AUDI

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