
| 「オプションは少なく、質は高く」アウディの新しい方向性 |
アウディ自身、品質の低下を認めている
高級車の魅力のひとつは、豊富なオプションから自分好みに仕立てられることでもありますが、しかしアウディは今後、その選択肢を大幅に絞り込む方針を打ち出しています。
「現在、アウディではステアリングホイールだけで100種類以上のバリエーションがあります。しかし、実際には3〜4種類で十分なのです。」アウディCEO ゲルノート・デルナー
ステアリングホイールに「100種類以上」のバリエーションが存在したとは驚き以外の何ものでもありませんが、つまり、オプションを削減することでコストを抑えるだけでなく、より上質な仕上がりを提供する方向にシフトするということになりそうです。
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削減で浮いたコストを「質」に再投資
アウディのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、マッシモ・フラスチェッラ氏もこの方針に賛同しており、同氏によれば「選択肢を減らすことで、その分より高品質な要素を作り込むことができるようになります」。
実際、最近公開されたコンセプトカー「Concept C」では、操作系にアルマイト処理されたアルミニウムを採用し、さらに、ステアリングホイール(センターパッド)上のエンブレムには(メッキではなく)本物の金属を採用するなど従来以上のプレミアム感を演出しています。
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参考までに、アウディは初代TTにおいて「金属」の使用を内外装パーツに取り入れることで高い質感を再現していますが、その後「スパッタリング」という金属風の質感を持つメッキが採用されることで本物の金属パーツの採用が減少してしまい、これが不評だったのが3代目TTではまた「金属パーツ」が増加することに。
そして「コンセプトC」はそのデザインだけではなく、初代TTがアウディにもたらした「改革」、あるいは概念そのものを再導入しようという考え方を持つクルマなので、このクルマにおいて初代TTで話題となった「高い品質を持つ内装、そしてその品質を裏打ちする金属パーツの採用」が推し進められているのは当然のなりゆきなのかもしれません。
そのほか、(ブガッティ・トゥールビヨンのように)タッチスクリーンを隠せるギミックや、独立したエアコン操作系(タッチ式ながら物理的に分離)など、「原点回帰的な人間工学」も提案されており、様々な面において今後のアウディの方向性を示唆するのがコンセプトCであると考えられます。
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「シンプルさ」と「明確さ」を掲げる新デザイン哲学
アウディは今後の内装デザインにおいて、 「本質への削減」「不要なラインや要素の排除」 をキーワードに掲げていますが、この方向性は「Strive for Clarity(明確さを求める)」という新キャッチフレーズの下で展開され、2027年に発売予定のConcept C市販版が”その最初の実例”になる予定であることも説明されています。
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A1とQ2を廃止、ラインナップを整理
このコンセプトCのほか、今回明らかになったもうひとつの大きな変化は「エントリーモデルの整理」。
- A1(VWポロベースのコンパクトハッチ) → 現行世代で廃止予定
- Q2(サブコンパクトSUV) → 廃止予定
これにより、アウディの最廉価モデルは A3 に一本化されますが、ただし、完全にエントリー層を切り捨てるわけではなく、2026年には新しいエントリー向けEVの発売が予定されている、とのこと。※メルセデス・ベンツとBMWは「エントリークラスは儲からない」として規模を縮小する傾向にあるが、アウディもそれに倣うことになる
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まとめ
- アウディはオプション数を削減し、「数より質」の戦略に転換
- ステアリングホイールは100種 → 3〜4種へ
- Concept Cでは高級素材や人間工学的な設計を導入
- A1とQ2は廃止され、A3が最廉価モデルに
- 2026年には新しいエントリーEVが登場予定
こういった流れを見るに、アウディは「シンプルさ」と「上質さ」を前面に打ち出し、EV時代にふさわしいラグジュアリーブランド像を再構築しようとしているようで、まさにこれは「バウハウス的な動き」と言えるのかもしれません。
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参照:Auto Express