
| 以前から「4ドア」投入のウワサがあったものの、ついに実現? |
マクラーレンが「4ドア」モデル計画を正式化
マクラーレンといえば、低く構えたミドシップスーパーカー、跳ね上げ式のドア、そして後輪駆動を思い浮かべる人が多いと思いますが、しかしその伝統に変化が訪れようとしている、との報道。
経営難に直面する同社は、新たな収益源を求めてスーパーカー以外の領域に進出する準備を進めているといい、そう遠くない将来に「4ドア」モデルが投入されることとなるもよう。
2027年に登場予定、SUVかユーティリティ車か?
イギリスの老舗スーパーカーメーカー「マクラーレン」は、2025年4月にアブダビの投資会社CYVNホールディングスに買収されて以降、ラインナップ拡大を急速に進めている状況にあり、今回新CEOであるニック・コリンズ氏はディーラーミーティングにおいて、従来のミドシップスポーツカーを超える新しいモデル群を計画中であると語っています。
報じられた内容によると、マクラーレンは2027年に「ユーティリティスタイルの4ドアモデル」を投入予定。
SUVと呼ぶのは(今のところ)避けているようですが、事実上クロスオーバーSUVに近い存在になる可能性が高いと見られ(SUVっぽい箱型ではなく、ランボルギーニ・ランザドールのようなスタイルになるのかも)、現行のグランドツアラー「GTS」の後継モデルに相当する位置づけになると予想されています。
さらには電動化戦略についても言及され、興味深いことに「完全なEV化」ではなく、まずはハイブリッドモデルを中心に展開し、今後3年以内に大半のモデルがハイブリッド化される見込みであることについても言及されたようですね(たしかに新CEOはEVに対して静観の構えを見せていた)。
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CYVNグループの強力なリソース
マクラーレンを傘下に収めたCYVNは、英国のスタートアップ「Forseven」や、かつてマクラーレンF1を生み出した伝説的エンジニア、ゴードン・マレー率いる「Gordon Murray Design」の車両部門への出資、中国EVメーカーNioへの少数株保有など、幅広い自動車関連技術を手中に収めています。
これらのリソースを統合することで、マクラーレンの新モデル開発に大きなアドバンテージをもたらすことになるのは間違いなく、さらに新CEOのニック・コリンズ氏はジャガー・ランドローバーに在籍していたこともあり、そこでの経験も存分に発揮されるのかもしれません。
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他スーパーカーブランドに倣う合理的な選択
フェラーリの「プロサングエ」、ランボルギーニの「ウルス」、ポルシェの「カイエン」や「マカン」の成功が示すように、スーパーカーメーカーがSUVを投入するのはもはや珍しくはなく、アストンマーティンのように「万年倒産体質」の会社をSUV(DBX)が救った例もあり、SUVはもはやスポーツカーメーカーにとっても「必須の存在」。
販売台数と収益を確保し、その資金でピュアスポーツカーの開発を続ける――マクラーレンも同じ戦略に舵を切ったといえそうです。
なお、市販車部門としてマクラーレン・オートモーティブは創業当時、4ドアセダンをも含む「フララインアップカーメーカー」を目指しており、しかしその後に「スーパースポーツ専業」へとシフトしています。
その後も当時のCEO、マイク・フルーイット氏がこの路線を継続し「絶対にSUVは発売しない」としていたものの、コロナ禍を機に経営が傾いてしまい、そこでフェラーリにてプロサングエ、ポルシェでカイエンを開発したマイケル・ライタース氏をCEOへと据えて「SUV発売」への準備を整えることに。
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しかしその後、CYVNホールディングスによって組織と経営体制が一部変更となり、マイケル・ライタース氏は短期間で解任されてニック・コリンズ氏がCEOに、そしてフェラーリの乗用車部門の立て直しで知られるルカ・ディ・モンテゼーモロ氏が取締役へと着任するなどの変化があったのが直近のマクラーレン。
マイケル・ライタース氏はSUVを投入するに際しては「適任」だと思えたものの、なぜ同士が過飲されたのかについてはまったくわからず、しかし「大人の事情」があったのだとも推測しています。
ちなみに今回報じられる「SUV」に関する情報は多くはなく、しかし「2027年に発表」というところからすると(開発期間が短い)、市場に存在するいずれかのSUVをベースとする可能性が高く、もしかすると、これまでに報じられたようにBMWとの共同開発となるのかもしれません。
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まとめ
マクラーレン初の4ドアモデルは、ブランドの未来を担う重要な存在となります。SUV市場への参入は保守的なファンにとって賛否両論を呼ぶかもしれませんが、ブランド存続のためには不可欠な選択肢といえます。
果たしてマクラーレンは「スーパーカーのDNA」をどこまでこの新モデルに宿すのか、今後の発表に注目が集まるところでもありますね。
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参照:Jalopnik