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| 史上最重量&最強、そして“356 SL並みのバッテリー”という衝撃 |
容易に想像できたことではあるが、それでも驚きは隠せない
- 新型カイエン・ターボ エレクトリックは、ポルシェ史上“最も重い”モデルである。
- そのバッテリー重量は、あの伝説的レーシングカー「356 SL」1台分に匹敵する。
- そして同時に、史上最強の量産ポルシェでもあるというギャップがとんでもない。
ポルシェの新型EV「カイエン・ターボ エレクトリック」が正式発表されましたが、最大出力1,139馬力という“量産ポルシェ史上最強”の称号に加え、「史上最重量」という衝撃的なタイトルも獲得したことが明らかに。
ここではその重量の背景、驚異のスペック、競合SUVとの比較、そしてポルシェSUVの歴史的文脈まで解説します。
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史上最重量&最強、そして“356 SL並みのバッテリー”という衝撃
新型カイエン・ターボ エレクトリック(Cayenne Turbo Electric)が発表されるや否や大きな話題となっており、その主な理由は以下の3つ。
- 量産ポルシェ史上最高出力:1,156馬力
- トルク1,500Nmをローンチコントロール時に発揮
- 車重2,645kg=ポルシェ史上最重量
従来の最重量記録保持者は「カイエン ターボEハイブリッド クーペ(2,595kg)ですが、そこからさらに+50kgも重くなって新たな記録を樹立しており、さらに驚くべきはバッテリー単体の重量です。
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- バッテリー容量:113kWh
- バッテリー重量:約600kg(1,322lbs)
これは 1951年ル・マンを制した伝説的モデル「ポルシェ356 SL」1台分とほぼ同じ重量(640kg)。
ここまでのヘビー級ながらも加速性能と航続距離を両立させている点は「技術的にも大きなトピック」と考えてよいかと思います。
特徴とスペック|性能・デザイン・技術的背景
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■主要スペック(ターボ エレクトリック)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 最大出力 | 1,156 hp(ローンチコントロール時) |
| 最大トルク | 1,500 Nm |
| 車両重量 | 2,645 kg |
| バッテリー容量 | 113 kWh |
| バッテリー重量 | 約600 kg |
| 駆動方式 | デュアルモーターAWD |
| 0-100km/h | 2.5秒 |
■なぜこんなに重いのか?
ポルシェがカイエンEVを“ここまで重く”してでも追求したのは以下のポイントです。
●① 大容量バッテリー=航続距離と高出力のため
1,156馬力という桁外れのパワーは膨大な電力を消費し、そのためには大容量113kWhのバッテリーを搭載する必要があり、これが重量増の最大要因となっています。
現時点では「1,000馬力を超えねば」新型車として大きなインパクトはなく、そして1,000馬力を超えると消費電力が大きくなり、そしてそれをカバーするバッテリーを積むために車重が増加するという「堂々巡り」に。※卵と鶏のようなものである
●② Cayenne伝統の「走りの質」を維持
カイエンは初代(2002年)から“ポルシェらしい走行性能”を重視し、フルタイム4WD、ロックデフ、低速レンジまで備えた本格オフローダーでしたが、EV化に際しても「重量があっても操る楽しさを失わせないセッティング」を目指している、とされています。
そして「重くても高い運動性能」を誇るためには各部を強化する必要があり、各部を強化するとますます重くなってしまうという「これまた堂々巡り」。
これが2シーターのスポーツカーであれば「軽さ」が基本設計時のトッププライオリティとなるものの、カイエンだと「オフローダー」なのでそうもゆかず、もともと必要とされる「最小限の重量」がそもそも重い、というハンデを背負っています。
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●③ 次期3列SUV登場を見据えた方向性
ポルシェはすでに3列シートSUVを予告しており、そのEV版ではさらに重量増が予想されることから「重量は増える方向」という流れを見越した設計である可能性も。※ただ、3列シートSUVはまずPHEVから登場することが明らかになっている
競合比較|重量の“世界標準”を見ると逆に軽い?
実はカイエン・ターボ エレクトリックは、EV SUVの世界ではそこまで極端ではなく、ライバルとの比較を記してみると以下の通り。
| モデル | 車重 |
|---|---|
| メルセデス ベンツG580(EQテクノロジー) | 3,084kg |
| メルセデス・ベンツ EQS SUV | 3,081kg |
| リビアン R1S | 3,205kg |
| ルーシッド グラビティ | 2,766kg |
| キャデラック エスカレード IQ | 4,143kg(!) |
| カイエン ターボ エレクトリック | 2,645kg |
こうやって見るとアメリカ市場では4トンクラスのEV SUVもが存在することもわかり、実のところカイエンEVは「ポルシェらしく性能と重量を絶妙に両立したEV」なのかもしれません。
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歴代カイエンから読み解く“重量の必然”
参考までに、初代カイエン(2002年)はすでに2,355kgの重量があり、フルオフロード仕様の4WDシステム、デフロック、可変スタビライザーなど「悪路走破性を高めるための」機構満載で“そもそも重いSUV”だったわけですね。
さらに電動化で重くなるのは自然な流れであり、「重量の増加=走りの劣化」ではなく、むしろパワーや制御技術の進化で重量増加を補うのがポルシェ流と言えるのかもしれません。
できれば「軽量化してほしい」と考えるのは誰もが共通で考えることかもしれませんが、現代においてクルマは様々な規制によって重くなる傾向があり、ガソリン車であっても直売の巨大化によって重量増は避けられないところ(もちろん軽量化技術も進歩しているが、それに追いつかないレベルでクルマが重くなっている)。
よって今必要なのは、BMWに代表されるように「重くても軽く感じさせる」ドライバビリティの実現なのだとも思われます。
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結論|重量はデメリットではなく“ポルシェEVの方向性”そのもの
カイエン・ターボ エレクトリックは「最重量」と「最強」という相反するキーワードを両立したポルシェの新時代SUV。
- EV化で重量は増える
- しかし走りの質を犠牲にしない
- 1,156馬力という圧倒的性能は正当な進化(ポルシェの求める走りを実現するためには必要な馬力であったのだと思われる)
「重量が増加してゆく」という避けられない運命を受け入れたうえでポルシェが用意した「最適解」がこのカイエン・ターボ・エレクトリックだと考えていいのかもしれません。
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参照:Porsche, Motor1
















