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| 「限定生産」につきシリアルナンバーは「固有」であるはずだったが、まさかの「重複」 |
この記事の要約
- 前代未聞のミス: 限定1,963台の「911 S/T」で、シリアルナンバー「1724」が2台に重複して刻印される事態が発生
- ポルシェの決断: ミスを修正するだけでなく、2人のオーナーを独本社へ招待し、公式な「歴史の一幕」として記録
- オーナーの絆: グアテマラと世界の反対側に住むオーナーが対面。それぞれの思いが詰まった特別仕様車が公開される
- 伝統の継承: 誤ったプレートはポルシェ公式アーカイブに保管。手作業が生んだ「人間味」をブランドの誇りへと転換
なぜ、限定車の「番号重複」が最高のファンサービスに変わったのか
世界中のコレクターが切望するポルシェ911の生誕60周年記念モデル「911 S/T」。
わずか1,963台しか存在しないこの特別な車両で、あってはならない「シリアルナンバーの重複」というミスが発覚し、これはネット上での指摘が原因となっています。
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簡単に説明すると、ある911 S/Tのオーナーが自身の911 S/Tをインスタグラムにアップしたところ、「同じシリアルナンバーを持つ911 S/Tが存在する」という指摘がなされ、そしてそれは「事実」であったわけですね。
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そしてここで誰もが思ったであろうことが「ポルシェは911 S/Tを(公式に発表した)限定台数、1963台以上に作っているのではないか」。
実際のところ、ポルシェも「そう捉えられるであろう」と考えたのか比較的早い段階で公式にコメントを出し、さらには今回の「対応」へと続くこととなっています。
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1724番を巡る、2人のオーナーとポルシェの物語
通常、こうしたミスは”サービスキャンペーン”や部品交換でひっそりと処理されるものの、ポルシェのカスタマイズ部門「Sonderwunsch(ソンダーヴンシュ:特別リクエスト)」はこの問題をむしろ前面へと公表し、このヒューマンエラーを「職人の手仕事が生んだ唯一無二のエピソード」と捉え、オーナーをも巻き込んだ特別なイベントへと昇華させることに。
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ただ、重複してしまった「1724」という数字には、オーナーそれぞれの深い思い入れがあり、グアテマラのポルシェクラブ会長、ペドロ・ソリス・クルスマン氏にとって「1724」は家族の誕生日(母・祖母・本人が17日、父が24日)を組み合わせた特別な数字。
一方、もう一人のオーナー、スーザン・タハー氏の車両は本来「1742」となるはずが、手作業の注文プロセスで誤って「1724」が刻まれてしまったという経緯があるのだそう。
ポルシェはこの2人をドイツ・ツッフェンハウゼンの本社に招待し、正しいプレートへの交換式を執り行うとともに、誤ったプレートを「公式アーカイブ」に殿堂入りさせるという粋な演出を行っています。
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究極の2台:それぞれの個性が光る911 S/Tのスペック
同じ「1724」を一時的に共有した2台ですが、その中身はポルシェの「Sonderwunsch」プログラムによって、全く異なる個性を放っていて、それぞれの仕様は以下の通り。
911 S/T オーダー仕様比較
| 項目 | ペドロ・ソリス・クルスマン車 | スーザン・タハー車 |
| エクステリアカラー | ショアブルーメタリック(Heritage Design) | ローズレッド(Paint to Sample Plus) |
| インテリア | クラシックコニャック(ピンストライプ入り) | ガーズレッド・レザー |
| 特別装備 | カーボンファイバー製ロールゲージ | 1970年代の「フレーズ」を再現したカラー |
| コンセプト | ヘリテージデザイン・パッケージ | 1974年IROC参戦モデルへのオマージュ |
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911 S/T 基本スペック
- エンジン: 4.0リッター水平対向6気筒自然吸気エンジン
- 最高出力: 386 kW (525 PS)
- トランスミッション: クロスレシオ・6速マニュアルトランスミッション
- 設計思想: 徹底した軽量化(911 GT3 RSのエンジンを公道向けに最適化)
ミスすらも「付加価値」に変えるポルシェのブランド力
今回の一件は、効率化が進む現代の自動車製造において、ポルシェが今なお「人間の手」による仕事を大切にしている証でもあり、「間違いを隠すのではなく、それを物語(アネクドート)にする」という姿勢はブランドへの忠誠心をさらに強める結果となったのかもしれません(これ以降、重複が報じられていないところを見るに、今回の件は本当に「間違い」だったのだと思われる)。
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💡 新しい気づき:Sonderwunsch(ソンダーヴンシュ)とは?
ドイツ語で「特別な願い」を意味するこのプログラムは、1970年代にポルシェが顧客の要望に応じて1台限りのクルマを作っていた時代にまで期限を遡ることができ、現在では「ポルシェ・エクスクルーシブ・マヌファクトゥア」の一部として、標準のオプションリストにはない、世界に1台だけのポルシェを造ることが可能です。
今回のローズレッド(旧称:フレーズ)の復活もこのプログラムから生まれ、2026年モデルからは正式なカラーオプションとして採用される予定である、と説明されています。
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参照:Porsche

















