
| 「EVOマガジン」創業者が知られざるディーノの謎に迫る |
この記事の要約
• 息子の情熱が父を動かした: エンツォの息子アルフレード(ディーノ)が、軽量なV6エンジンの重要性を父に説いたことが全ての始まり
• フェラーリ初の市販ミッドシップ: それまでのフロントエンジンV12から脱却し、新たな章を切り開いた歴史的モデル
• 現代へと続くV6の系譜: ディーノのDNAは、現代の296 GTBや最新のF80、さらにはF1やル・マンの技術へと直結している
伝統を打ち破った「ディーノ」という革命
フェラーリといえば、かつては「フロントエンジンのV12こそが正義」とされる世界でもあり、しかしその常識を覆してフェラーリに新たな方向性を示したのが「ディーノ」です。
多くのファンが愛してやまないこのクルマは「美しいスポーツカー」であるだけにとどまらず、それはエンツォ・フェラーリと、若くして亡くなった愛息アルフレード(愛称:ディーノ)の情熱が生んだ、父と子の物語でもあることがよく知られています。
ここではマラネロのフェラーリ・クラシケ(クラシックカー認証部門)のアーカイブから紐解かれた歴史と、現代の最新技術へと繋がるV6エンジンの進化について掘り下げてみましょう。
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V6エンジン誕生の裏側とホモロゲーションの壁
ディーノV6エンジンの歴史は、1950年代後半のフォーミュラ2(F2)からスタートし、当時、エンジニアとして深く設計に関わっていたディーノは、病床にありながらも父エンツォとV6エンジンの技術的な議論を重ねていたといいます。
なお、イタリア語しか話さなかった父エンツォとは異なり、ディーノは英語を話すことができたため、より多くの、そして世界中のエンジニアとの意見交換を通じ、「V6の時代」を父よりも早く感じ取ることができたのだとも言われていますね。
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そして市販モデルとしての「ディーノ 206 GT」が登場する背景には、F2レースのレギュレーション変更が重なっており・・・。
• 500基の壁: 特定のカテゴリーに参戦するため、2リッターエンジンを年間500基以上生産する必要があった
• フィアットとの提携: 自社だけでこれだけの数を生産できなかったフェラーリはフィアットと提携し、「フィアット・ディーノ」へとエンジンを供給することでこのハードルをクリアすることにした※フィアット・ディーノはFRレイアウトを持ち、クーペとスパイダー合わせて数千台が生産されたとされる
かくしてフェラーリはF2用エンジンの量産の道筋をつけ、そして1967年に誕生した206 GTは、フェラーリ初の市販ミッドシップ車として世界に衝撃を与えることになったというのが大まかな流れです(V6エンジンのアイデアを出したのはフェラーリだが、フィアットの協力なくしてはディーノが誕生しなかった)。
しかしながらちょっとわからないのが「空白の期間」で、ディーノが亡くなったのは1956年、しかしディーノ(206GT)が登場したのは1967年なので、「亡き息子の夢を実現する」のに11年も要したこと。
この空白を埋めるだけの説明は文献をあさっても見つけることが出来ませんが、もしかすると「エンツォが息子の死を乗り越えるには、それだけの期間が必要だった」のかもしれません(あるいは、単にF2用エンジンのレギュレーション変更に合わせただけなのかもしれない)。
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車種概要とスペック:206 GTから246 GT、そして現代へ
ディーノは、その後のフェラーリのスタンダードとなる「ミッドシップ・レイアウト」の先駆けとなり、初期の206 GTは全アルミ製ボディの採用によって非常に軽量であったものの、後の246 GTではスチールボディへと変更され、ホイールベースも延長されるなど、より洗練されたモデルへと進化しています。
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ディーノ 206 GT スペック表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エンジン | 2.0L 65度 V型6気筒 |
| 最高出力 | 180馬力(当時の仕様による) |
| 最高回転数 | 8,000 RPM |
| 乾燥重量 | 900 kg |
| ボディ素材 | アルミニウム |
| 生産台数 | 154台(206 GT) |
豆知識: 当時のディーノには、実は「フェラーリ」のバッジは付いておらず、これは(V12意外はフェラーリとは認めないというエンツォ・フェラーリの意向を反映し)あくまでも「ディーノ」という独立したブランドとして扱われていたためですが、後に多くのオーナーが誇らしげにフェラーリの跳ね馬バッジを後付けしたというエピソードもこのクルマの愛され方を象徴しています。※新車販売当時、顧客の要望に応じてフェラーリバッジが装着されたこともあったようだ
現代の296シリーズへの継承
現在、フェラーリの主力モデルの一つである「296 GTB」や最新の「F80」もV6エンジンを採用しています。
現代のエンジニアによれば、V6は非常にコンパクトで軽量なため、重量配分の最適化や車の俊敏性(アジリティ)を向上させるのに最適な選択肢だといい、ディーノが提唱した「軽量・コンパクトなV6」というコンセプトは、半世紀以上の時を経て、ハイブリッド技術と融合し、120度V6エンジンとして究極のパフォーマンスを実現している、というわけですね。
結論:受け継がれるディーノの魂
ディーノはエンツォ・フェラーリにとっての「挑戦」であり、それと同時に息子への「愛」の形。
それまでのV12フロントエンジンという伝統を壊してまでミッドシップV6を採用した決断がなければ、今日のフェラーリの成功はなかったかもしれません。
マラネロの工場、かつて鋳造所があった場所で今も守られ続けている膨大な設計図や記録は、ディーノのDNAが今もなおフェラーリの魂として息づいていることを証明しています。
もしディーノを見かけることがあるならば、それは単なるクラシックカーではなく、フェラーリの歴史を塗り替えた「革命の象徴」であることを思い出してみるといいかもしれません。
フェラーリ ディーノの歴史を紐解く動画はこちら
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