
| これによって車両価格が下がることを期待したものではあるが |
メルセデス・ベンツとしても「儲けネタ」であるだけに”安く売る”つもりはないだろう
メルセデス・ベンツのアイコンとして、世界中のセレブリティや本格オフローダーから絶大な支持を集める「Gクラス(ゲレンデヴァーゲン)」。
そのDNAを受け継ぎ、ひと回り小ぶりなサイズと手頃な価格帯で登場予定だとされる新型コンパクトSUV、通称「ベビーGクラス(あるいはリトルg)」のパワートレインを巡って「大きな方向性の転換」が報じられることに。
当初この新型モデルは「完全な電気自動車(EV)専用モデル」として開発が進められていると報じられていたのですが、2026年5月、メルセデスAMGの最高経営責任者(CEO)であるミハエル・シーベ氏が下した決断はこの予想を裏切るもので、「アメリカのディーラー陣からの強い要望に応え、ガソリン(内燃機関:ICE)モデルを追加する」という同氏のコメントが報じられています。
ここでは、なぜメルセデス・ベンツがEV専売の計画を撤回せざるを得なかったのか、その背景にあるリアルな市場の冷え込み、そして判明しつつある新型「リトルg」の概要について考えてみましょう。

今回の要点(この記事のまとめ)
- ガソリンエンジンの搭載が確定: EV専用と見られていた新型コンパクトGクラス(通称:ベビーG)に内燃機関(ICE)モデルが用意されることが公式に認められる
- 米国ディーラーの反発: 「EVだけでは売れない」というアメリカの販売現場からの切実なフィードバックがメルセデス・ベンツ首脳陣の戦略を動かした
- 専用のラダーフレームを採用: 既存の乗用車プラットフォームの流用を拒否し、Gクラスにふさわしい本格的な「専用ラダーフレーム(梯子型車台)」を新開発
- 1.5L 4気筒ターボハイブリッドが有力: 新型CLAにも採用される最新の1.5Lマイルドハイブリッド、またはEV(eATS 2.0 4MATIC)の2本立てとなる見込み
- 2027年後半にデビューか: 本格的なオフロード性能を引っ提げ、トヨタの新型ランドクルーザーFJやディフェンダー・スポーツを迎え撃つ
なぜベビーG(リトルg)にガソリンエンジンが追加されることに?
今回の戦略転換の最大のトリガーとなったのは、メルセデス・ベンツにとって中国と並ぶ最重要市場である「アメリカ」の販売ネットワークからの声であったといい、2026年5月19日にロサンゼルスで開催されたラウンドテーブル(座談会)にて、メルセデスAMGのCEOであるミハエル・シーベ氏は、 Automotive Newsなどの取材に対し、次のように極めて率直に(今回の翻意の)舞台裏を明かしています。
「定期的に意見交換を行っているアメリカのディーラーたちから寄せられたフィードバックは、非常に明確なものでした。彼らは『我々には内燃機関(ガソリン車)バージョンが必要だ』と言ったのです。我々はそれを受け入れ、いいだろう、ガソリン仕様を投入しよう、と決めました。もちろん、それにふさわしい十分なパワーを持たせる予定であり、これは確実に実現します」

自動車業界を襲うEVシフトの減速、そして高額なプレミアムEVが販売店で長期在庫化している冷酷な現実(フルサイズEVである『G580 EQ』の苦戦など)を前に、現場の最前線にいるディーラーたちは「EVオンリー」の危険性を察知し、メーカーに猛烈なプッシュをかけたというわけですが、その一方でシーベ氏は「欧州市場では新型CLAのEV版が非常に好調であるため、ヨーロッパでは電動版ベビーGにも強い需要を期待している」とも付け加えており、グローバル市場のインフラや温度差に合わせて「ガソリン(ハイブリッド)とEVを併売する柔軟な両建て戦略」へシフトしたということになりそうですね。
なお、こういった「方針転換」は以前のメルセデス・ベンツでは考えにくかったもので(決めた方針はめったに覆さない)、しかし最近だと「4気筒の廃止」「V8の継続」など次々と(消費者の声を聞き入れた)方向性の変更を行っており、これはある意味で「メルセデス・ベンツが現状に危機感を持った」からなのかもしれません。
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新型メルセデス・ベンツ ”ベビーG”:車種概要
ネット上で「ベビーG(Baby G)」や「リトルG(Little G)」の愛称で親しまれているこの新型SUV。
メルセデス・ベンツ前CEOのオラ・ケレニウス氏が「大文字のGの息子、あるいは娘のような存在」と(約2年前に)表現した通り、デザインは本家の無骨なスクエアシルエット、丸型ヘッドライト、フェンダーマウントのウィンカー、リアの背面スペアタイヤといった「ゲレンデらしさ」を完璧に受け継ぐことが確定しています。
なお、テスト車両のカモフラージュ柄に「小文字のg」が大量に配されていたことから、市販時の名称は小文字の「gクラス」になるのではないか、とも噂されているようですね(メルセデス・ベンツ自身も小文字の「g」を用いたティーザー画像を公開している)。
1. 妥協なき「専用ラダーフレーム」の新規開発
多くの自動車メーカーが、コスト削減のために既存のシティ派SUVのプラットフォーム(モノコック構造)を流用して“見た目だけ四駆”のクルマを作る中、メルセデス・ベンツは「Gクラス」の名を汚さないために本気を出しており、同社の最高技術責任者(CTO)であるマルクス・シェーファー氏は、「Gは極めて特別でオーセンティック(本物)なクルマ。ミニGも本物でなければならない。既存のプラットフォームをただ持ってくるような妥協はせず、このクルマのためだけに全く新しいラダーフレーム(骨格)を開発した」と明言しています。
これにより、クラス最高峰の悪路走破性と堅牢性が保証されたことになり、「純粋主義社も安心」といったところかもしれません。
2. パワートレインと予想スペック
ガソリン(マイルドハイブリッド)仕様には、ジーリー(吉利汽車)とルノーの共同出資会社「ホース・パワートレイン(Horse Powertrain)」が製造を手掛ける、メルセデス・ベンツによって設計された最新1.5L 4気筒ターボエンジン(新型CLAのガソリン版と同じ)が搭載される見込みだといい、また、EV仕様には800Vアーキテクチャ対応の超急速充電システムが組み込まれることについても(以前に)言及されています。
| マイルドハイブリッド(ICE)仕様 | ピュアEV(電気自動車)仕様 | |
| パワートレイン | 1.5L 直列4気筒ターボ + モーター | eATS 2.0 デュアルモーター (4MATIC) |
| システム最高出力 | 約 190 hp 〜 211 hp | 約 354 hp(前後合計) |
| 駆動方式 | 機械式または電動式 4WD | インテリジェント 4WD (4MATIC) |
| バッテリー容量 | —(48Vマイルドハイブリッド) | 約 85 kWh (NMCバッテリー) |
| 航続距離 | ガソリン満タンでロングドライブ対応 | 約 724 km (WLTPサイクル予測) |
| シャシー構造 | 新開発・専用ラダーフレーム構造 | 新開発・専用ラダーフレーム構造 |
| 全長(サイズ感) | 約 4,400 mm(本家より約40cmショート) | 約 4,400 mm(トヨタRAV4と同等サイズ) |
| 発表・発売時期 | 2027年後半デビュー、2028年生産開始予定 | 2027年後半デビュー、2028年生産開始予定 |
競合比較と市場でのポジショニング(これからのオフロード市場)
この新型「gクラス」が投入されるコンパクト・プレミアム・クロスカントリー市場は、今後数年で最も熱い激戦区となることが予想されており・・・。
迎え撃つ強力なライバルたち
- トヨタ ランドクルーザーFJ: 伝統のラダーフレーム構造をコンパクトサイズに凝縮。堅牢性と信頼性、圧倒的なコスパで市場の覇権を狙う。
- ランドローバー ディフェンダー・スポーツ(コンパクト版): 英国のプレミアムオフローダー。ラグジュアリーな内装と、洗練された電子制御による悪路走破性が強み。
なぜ「ガソリンエンジン」が勝負の分かれ目になるのか?
近年、過酷な環境(砂漠、岩場、過疎地)に挑むオフロード車のバイヤーたちの間で、「充電インフラのない山奥や砂漠で、EVのオフローダーは命を預けられない」という現実的な不安が広がっているといい、どんなにEVのトルク制御が優秀であっても、いざという時にガソリンを携行缶で補給できる安心感には敵うものではなく、メルセデス・ベンツがアメリカのディーラーの声を聞き入れ、ガソリン(マイルドハイブリッド)モデルの追加に踏み切ったのは、これら「本物のオフロード性能」を求めるユーザー層を競合のトヨタやランドローバーに根こそぎ奪われるのを防ぐための「極めて理にかなった防衛策」。
また、本家Gクラス(G63など)が2000万〜3000万円オーバーのハイエンド層に位置するのに対し、この「gクラス」は想定価格帯がその約半分、あるいは競合を見据えた現実的なプレミアム価格に抑えられると予想されていて、これにより「ゲレンデのデザインは大好きだけど、大きさと価格で諦めていた」というライト層や若年層のユーザーを一気に囲い込む戦略だというわけですね(ただ、ラダーフレーム車種は製造に手間が(モノコックよりも)かかり、需要を満たすだけの供給ができるかどうかが問題である)。

結論
メルセデス・ベンツ「新型ベビーGクラス」がガソリンエンジンを搭載するというニュースは、「一新型車の仕様変更」を超え、自動車業界における『EV一辺倒の時代の終わり』と『顧客ファーストへの原帰』を象徴しています。
メーカーが机上の空論や環境規制だけでエコカーを押し付けようとしても、実際に車を売り、クルマを買う現場(ディーラーとユーザー)の声が最終的に製品の未来を決定づけるという素晴らしい前例となったことには間違いがなく、「本物のラダーフレーム」に「扱いやすいコンパクトボディ」、そして長距離も安心して走れる「ガソリンハイブリッド」という非の打ち所がない全方位のスペックを手に入れる新型「gクラス」は、2027年の登場と同時に、世界のコンパクトSUV市場の勢力図を塗り替える絶対王者となる可能性を秘めていて、本家ゲレンデのオーナーたちを嫉妬させるほどの、小さくも偉大な「息子(あるいは娘)」の誕生を楽しみに待ちたいと思います。※ただ、その前に「Gクラス カブリオ」という超大物の発表が控えている
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