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車のデザインについて。トヨタとスバル、ホンダの戦略を考える

2016/05/16

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車のデザインというのはなかなか難しいもので、そして近年は車の性能そのものよりもデザインやプロモーションが売り上げを左右するとも考えられます。

そこで各社のデザインを考えてみますが、まずはトヨタ。
トヨタは年間146万台(2015年、日本国内)を販売し、国内外ともにナンバーワンの登録台数を誇ります。
2位のホンダに比べて倍の台数を販売しており、ラインナップ数は66車種(トヨタの分類による。意外と少ないように思う)。

トヨタはさすがにこれだけの販売を誇るだけあってデザインテイストが非常に豊富。
シエンタのような丸っこいものもあればプリウスのように曲線とエッジが混在する未来的なもの、アルファードのように直線的なもの、もしくはクラウンやハリアーのように独立したデザイン系統を持つもの、など。
またトヨタは一部のモデルに専用のエンブレムを与えることがあるのも特徴で、クラウンやハリアー、アルファード等のフロントグリルにはトヨタマークではなく車種専用のエンブレムが与えられています。

現在の自動車業界においてはブランディングが非常に重要であり、メーカー名を押し出すことの重要性が増すとともに各メーカーのブランドエンブレムが巨大化しており、とくにVWではそれが顕著(エンブレムがどんどん大きくなっている)。

よって「トヨタ車でありながらもトヨタのエンブレムを一番重要なところに掲げず、ほかのエンブレムを用いる」のは極めて異例ですが、下手すると一車種で他メーカーの主要モデルくらいの台数を販売するトヨタでもあり、「ハリアー」「クラウン」などはひとつのブランドとして考えると、これは納得のゆくところでもありますね。

そのような感じで「メーカーとしての統一感」よりも車種としてのアイデンテティを重視したのがトヨタのデザインとも言えますが、これによって「より多くの」消費者の嗜好を拾うことができているのでは、と考えています。
つまりトヨタ・プリウスの未来的なデザインが好きでなくとも、同じトヨタのクラウンが持つコンベンショナルなデザインが好き、という人が存在するということですね。

そして「セダン」とおうカテゴリの中でも上述のように保守的なクラウン、前衛的なマークX、未来的なSAI、という感じでさらに多くの嗜好をカバーできるようにデザインされているのも特徴。
これは「メーカーとしての統一感には欠けることになるが、より多くの人に販売できる」戦略でもあり、デザインを分けたりという手間はかかるものの、ある意味効率的なのかもしれません。

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これとは真逆の戦略を採用するのがホンダで、ホンダは現在のところデザインテイストが統一されています(一部前の世代のもの、商用車は除く)。
基本的にはエッジが立っており、ヘッドライトとグリルが連続するデザインで、全体的にウエッジシェイプ、という感じですね。

ぼくはこれらのデザインを「格好良い」と思いますが、同時に「格好悪い」と感じる人が多く存在するのも事実。
となると、「好き嫌い」の分かれるデザインといって良く、どんなにホンダが好きでも、どんなに性能を評価していたとしても、デザインが気に入らなければ「買わない」ということになるわけです。

ここがホンダの強みでもあり弱みでもあるところで、しかし当然ながらホンダはこれを理解したうえで採用する「より強いブランドイメージ、より忠実なファン」を獲得するための戦略なのかもしれません(そのために個性を強め、嫌いな人は嫌いでもいい、と考えているのかも)。
なおホンダの公開する動画にもその傾向は見られ、ホンダ自身がホンダブランドに対してゆるぎない自信を持っている様子がわかります(よってブランドやデザイン、コンセプト自体をプロモートするものが多い)。

たとえば「ジェイド」は売れないホンダの代名詞ですが、ぼくはこれは「シンプルでスタイリッシュすぎる」と思うのですね。
ホンダの現在におけるデザイン言語を使用するとこうなってしまうのは理解できますが、もしかするともうちょっと押しが強い(ウエッジシェイプではない)ルックス、もうちょっと泥っぽい無骨なルックスでアウトドアや自然を感じさせたほうが良かったのかもしれません。

ただ、ホンダはそれを戦略上行わず、結果として売り上げが振るわず、よってホンダのデザイン言語とワゴンというアウトドア的性格の強いモデルとの間に乖離が生じたのではないかと考えるのですね(ワゴンはやはり後述のスバルのようにワイルドなほうが受けが良いと思う)。

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逆に現在のホンダデザインと相性が良いのがスポーツ系の車で、とくにS660、新型NSXは他メーカーにはない特徴を発揮できていると考えられます。

ちなみにホンダの2015年における国内販売はトヨタに次ぐ二位で72万台。
モデルラインナップは37車種(ホンダの分類方法による)で、単純計算だと1車種あたり19,500台の販売ということに(トヨタは1車種あたり22,100台)。

販売網の差はありますが、「好き嫌いを網羅している」トヨタのほうが一車種あたりの販売が多く、「好き嫌いが分かれ、好きな人は買うがそうでない人は買わない」ホンダは一車種あたりの販売が少ない、ということになります。
トヨタ型のように「ミニバンやセダンというカテゴリ内でも複数のデザインを揃える」のは一見生産効率/コスト上は無駄のように思えても、実際はビジネスとして効果があると考えても良いのかもしれませんね。

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次いでスバルですが、これは2015年の販売が16万台、ラインナップは21車種。
1車種あたり7,600台の販売ということになりパっと見では効率が悪いようにも見えますが、スバルはけっこう軽や商用車も多く、全体的にみるとそれらの比率が高くなっているので、単に売り上げ台数を車種で割るというのはいささか乱暴かもしれません。

そしてスバルの場合はエンジンやトランスミッションの数が少なく、プラットフォームの数も少なく、そしてミニバンを持たずに「ほぼ同じような車種」をコストを平準化しながら作っている、というが面白いところ。
しかしながらそのコンポーネント含めての「バリエーションの少なさ」がスバルのコアバリューを逆に高めている(ブレないというイメージを演出する結果に)と考えられ、これはシンメトリー4WD、ボクサーエンジンが良い例ですね。

加えてスパルは「4WD」のイメージが非常に強く、それを全身で表したデザインが特徴。
車そのものが比較的大柄で、グリルやヘッドライト、テールランプなどひとつひとつのパーツと主張が大きく、トラックで言うとフォードF-150のように非常にワイルド。
そのワイルドさが消費者に「夢」を抱かせると思われ、スバルの車を購入するとなんとなく自分の生活をかえてくれるのでは、という期待を抱かせるのだと思います。

以上、ざっとぼくの思うところで貼りますが、自動車メーカーによって戦略や方針が異なるのが面白いですね。

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