| トヨタは”クルマと社会”との関連性に対する意識が高い |
トヨタ自動車の公開するコンテンツ「トヨタのカーライフノウハウ」。
その中に「クルマの機能」というページがあり、これがなかなかためになる、とぼくの中で話題に。
これはクルマの機能を「走る」「曲がる」「止まる」という基本的な分類に基づいて構成したものですが、これからクルマについて知りたいと考える人にとって理解しやすいものとなっていて、ここでその内容を紹介してみたいと思います。
クルマを構成するパーツは1台あたり2~3万もある
トヨタではクルマの構成を大きく「ボディ」「エンジン」「ドライブトレイン」「タイヤとサスペンション」に分類していますが、一台のクルマを構成するパーツは2万点~3万点、と述べ、そしてそれぞれを下記のように定義しています。
クルマ(ガソリンエンジン車)の動力はエンジンです。エンジンで生まれた動力をドライブトレインでタイヤへと伝えることでクルマは走ります。動力を伝える駆動系とサスペンションやタイヤの総称がシャーシと呼ばれます。シャーシはボディーに組み付けられます。
エンジンはこういった原理で動いている
トヨタでは通常のガソリンエンジンについて解説していますが、「吸入」「圧縮」「燃焼」「排気」というサイクルについて図解。
ここではエンジン型式については触れていないものの、エンジン型式には直列やV型そして水平対向、エンジンそのものにも「ディーゼル」「ロータリー」といった形式があるのはご存知の通り。
EVとPHEVはどう違う?
そしてトヨタでは新世代の「動力源」としてEV、PHEVについても紹介。
まずトヨタはEVを下記の通り紹介していますが、付け加えるならばEVはガソリン車に比べるとエキゾーストシステムやトランスミッションを省略できるというメリットもあり、パーツ構成だと60%ほど従来のクルマに比較して少なく、つまり組み立てにかかるコスト、ユーザーにとってはメンテナンスコストが安いというメリットが存在します。
電気をエネルギー源として、モーターで走行する自動車をEV(Electric Vehicle)と呼びます。バッテリーに充電した電気エネルギーを、インバーターを通じてモーターへ伝え動力とします。ガソリンエンジンに必須の吸排気の装置や冷却装置も不要のため、技術構造は簡単で部品点数も少なくなります。またモーター駆動方式の特徴として停車状態から一気にフルトルクを発揮できるため、ギアによる変速の必要もなく、加速力に優れ、また静粛性も高いです。しかし駆動用バッテリーのコストが高いこともあり、車両価格がガソリン車と比べて割高になる場合があります。
そしてハイブリッド。
ハイブリッドはひとつのクルマにガソリンエンジンとモーターという、「2つの」動力源が存在するために構造が複雑になり、組み立てコストだけで考えるとEVより高くなりがち(ただしEVはバッテリー容量が大きくならざるを得ず、そのためにトータルの車両コストが高くなる)。
ハイブリッド車(Hybrid Vehicle)は、ガソリンなどの内燃機関エンジンと電気モーターによる2つの動力源を持ちます。特徴としては、減速時のエネルギーを電気エネルギーとしてバッテリーに回収(回生)することです。この駆動力を得ることで、エンジンの使用を抑制でき、低燃費を実現しています。モーターとエンジンの関係は、スプリット方式、パラレル方式、シリーズ方式など様々な方式が開発され、現在も進化しています。また、PHV(プラグインハイブリッド)車は、差込プラグでコンセントから直接バッテリーに充電できるシステムを持ちます。HVよりもバッテリーを多く搭載し、普段の近距離走行はEVで走り、長距離走行はHVで走行できるタイプです。
ステアリングはこういった原理を持っている
そして次は「曲がる」ステアリングシステム。
トヨタによる解説は下記のとおりですが、ハンドル操作(回転)をタイロッドの並行運動に変換するには相当な力が必要で、これをアシストするのが「パワーステアリング」。
ステアリングホイール(ハンドル)を動かすことで、ステアリングシャフトへ回転運動が生じ、それがステアリングギアボックスで、往復運動に変換され、タイロッドに伝わります。タイロッドの先端はナックルにつながっており、平行運動によりナックルを押したり引いたりして、タイヤの角度を変えます。
現代のクルマはパワーステアリング=パワステが当たり前の装備となっていますが、一部ロータスのクルマのように、パワステのない「重ステ」なクルマも存在します。
パワステは便利ではあるものの「パワーアシストにエンジンの駆動力をロスする(パワステは油圧で作動するが、そのポンプを動かす動力源としてエンジンからベルト経由でパワーを頂戴している)」「システム自体が重い」というデメリットもあり、ロータスはこれを嫌ったわけですね。
なお、現在はエンジンからパワステ作動のための動力を奪わず、別途電力によってアシストする「電動パワステ」も一般的に。
参考までに、「タイロッドとナックル」について、一般にスポーツカーはこの接合部のブッシュが柔らかく(ブッシュを用いず、ダイレクトに取り付けているクルマもある)、高級車はブッシュが柔らかく設定されており、そのためスポーツカーは操作に対してクイックに反応したり路面からのフィードバックが繊細で、高級車はその逆の傾向にあります。
ブレーキはこういった仕組みで作動する
そして次は「止まる」、つまりブレーキ。
これもブレーキペダルを踏む力がそのままブレーキパッドを動かしているわけではなく、油圧によって「ブレーキペダルを踏む力」を増加させているわけですね。
走行中のブレーキ操作は足元のフットブレーキを用います。その仕組みは一般的には油圧式と呼ばれる方法を採用していて、ブレーキペダルを踏むと、マスターシリンダーにより踏力に応じた油圧が発生します。その油圧が、ブレーキパイプとブレーキホースを通じて、各車輪のホイールシリンダーに伝わります。そして、ホイルシリンダーのピストンでブレーキパッドをディスクローターに押しつけることで、制動します。
なお、ブレーキにも「ドラムブレーキ」「ディスクブレーキ」が存在しますが、トヨタはこれについても言及。
ブレーキの種類はドラムブレーキとディスクブレーキがあります。ドラムブレーキは、車軸とともに回転するブレーキドラムを設け、その内側にある摩擦材を押しつけて制動を行います。一方でディスクブレーキは、車軸とともに回転する円板を設け、これを両側から摩擦材で挟み込み、制動を行います。摩擦面が露出しているため、放熱性が高い上、水が付着しても回転の遠心力で飛ばされ乾燥が早いのが特徴です。
ディスクブレーキについても「対抗ピストン」「フローティング」があり、それぞれにメリットやデメリットが存在しますが、これはブレーキ専門メーカー、「曙ブレーキ」が詳しく解説しています。
駆動方式は3タイプ
そしてトヨタは駆動方式についても紹介。
サイト上ではFF、FR、4WDという現在トヨタが持つレイアウトのみとなっていますね。
FF [ FRONT ENGINE / FRONT DRIVE ]
FFとは、フロントエンジン・フロントドライブの頭文字の略語で、車の前部にエンジンが位置し前輪を駆動輪とする方式のことを指します。前輪駆動のFF車はフロント部にエンジン、駆動輪、操舵が集まり、リヤのパーツ点数も少なく重量がかからない分、フロントに重量が掛かり駆動力が伝わりやすくなります。さらに、室内空間が比較的広くとれる上に、自動車全体としては軽量化につながります。FR [ FRONT ENGINE / REAR DRIVE ]
FRとはフロントエンジン・リヤドライブの頭文字の略語で、車の前部にエンジンが位置し後輪を駆動輪とする方式のことをいいます。後輪駆動のFR車は前後の重量配分がよく、操縦安定性がよいのも特徴です。ドライバーの思い通りの走りができるため、ドライブの楽しさも味わうことのできる駆動方式と言われています。4WD [ 4 WHEEL DRIVE ]
4WDとは、「4 Wheel Drive」の頭文字をとった略字で「四輪駆動車」のことをいいます。FF方式とFR方式の駆動系が組み合わさったような構造をしており、エンジンの駆動力を前後4つのタイヤに伝えるため、操縦安定性が高まります。自動車によっては、AWD(All Wheel Drive)ともいわれ、FF方式やFR方式をベースにしたものなどがあります。
もちろんこのほかにも「MR(ミドシップ/リアドライブ)」「RR(リアエンジン/リアドライブ)」といったクルマも存在。
前者はトヨタも「MR2」「MR-S」といったクルマで採用していますが、現在だとフェラーリ488、マクラーレン各モデル、ポルシェ718ケイマン/ボクスターなどがこの形式。
エンジンやトランスミッションという重量物を車体の中央に集めることで運動性能が向上するものの、挙動がやや神経質になるほか、室内空間が絶望的に狭くなる、というデメリットがあり、「得るものは多いが、失うものも多い」レイアウトですね。
なおランボルギーニ・ウラカンやランボルギーニ・アヴェンタドールは「MR」に「4WD」をプラスし、操縦安定性を高めています。
↓ポルシェ918スパイダーはミドシップ4WD
そして「RR」は現在ではポルシェ911、スマート、ルノー・トゥインゴあたりが採用していますね。
メリットとしてはミドシップよりも室内空間が広くなるということが挙げられ、よって「4人乗り」も可能に。
そして走行性能だと「駆動輪である後輪と重量物(エンジン)との距離が近く、駆動輪にトラクションがかかるので加速性能が高い」ということ。
いかにエンジンパワーが高くとも、それを駆動力に変換できなければ意味はなく、たとえば脚力に優れるランナーでも「滑りやすい靴」を履いていてはポテンシャルを活かしたダッシュができないのとよく似ています。
↓ポルシェ911は典型的なRR
RRはつまるところ「タイヤを地面に押し付ける力が強く」、地面にしっかりとタイヤを接地させ、同じパワーであってもFRよりはトラクションがかかりやすいということになり、ポルシェ911が「バットでぶっ叩かれたように」弾け飛ぶ加速を見せるのはこれが理由。
ただし車体の重量が極端に後ろ寄りであることから(ポルシェ911だと70%が後輪寄り)、操縦安定性的にはすべてのレイアウトの中で「もっともナーバス」だと言えそうです。