| 米国では「非を認め、真摯に対応するもの」にこそ高い評価が与えられる |
問題が発生しないのが一番ではあるが、これを「ゼロ」にすることは難しい
さて、リコールというと一般にネガティブなイメージを(ぼくら消費者に)与えがちですが、実際には「全てのリコールが否定的であるとは限らない」という考え方も存在します。
その理由としては「これから起こりうる問題について、メーカーが自費で問題を解決することがリコールであり、消費者にとってはある種の朗報である」から。
なお、リコールは様々な理由や原因によって行われ、そのひとつは「自社によって発見されたもの」です。
これは新型車の発売後にも継続して行われる調査によって(発売前には予見できなかった)不具合が発見されたり、同様の調査によってサプライヤーが問題を発見し自動車メーカー(納入先)へと通知したりすることで不具合が明らかになり、その問題が各種法規を満たさなくなった場合や甚大な被害を(人や財産に)及ぼすと判断された場合にリコールが実施されます(輸入車における、”本国からの連絡による”も同様の例と捉えて良いかと思われる)。
実際にユーザーによって問題が発見される場合も
一方、実際にクルマを使用するユーザーがトラブルを経験し、それをディーラーへと連絡するという経路にてはじめて自動車メーカーが問題を知りうるというケースもあり、これは少し前に話題となった「燃料ポンプに問題があって車両が停止する」という事例が該当するかと思います。
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この例であれば、実際に不幸な事故が発生してしまってはいるものの、リコールを行うことで、将来起こりうるもっと多くの事故を防ぐことが可能となっていて、この観点から見ると「リコールが必ずしも悪いことではない」ということがわかるかと思います。
つまり、自動車に関しては、予見できない問題が常に発生するリスクが潜んでおり、問題はそのリスクをどうやっていち早く知るか、そして知ったのちにどれだけ早く対応を実施して事故を未然に防ぐのかということが重要になってくるわけですね。※つまりはリコール隠しが最悪である
ただ、リコールがあまりに多いとなると、設計・製造段階における品質管理の観点からブランド レベルの問題を示すこととなり、リコールが多すぎるということは、つまるところ特定の自動車メーカーが可能な限り最高の基準で物事を行うことに重点を置いていない事実を露呈することになりかねません。
トヨタはリコールが意外と少なかった
そこで今回紹介したいのが米国NHTSA(米国連邦政府の機関である国家道路交通安全局)が発表した「自動車メーカー別のリコール件数」で、昨年にリコールを最も多く発表した自動車メーカーはフォード(26件)、そしてクライスラー(22件)、BMW(13件)、メルセデス・ベンツ(12件)、キア(11件)、ヒョンデ(11件)、GM(9件)、ジャガー・ランドローバー(9件)、最も少なかったのがトヨタの6件。※すべての自動車メーカーを網羅しているわけではないようだ
参考までに、日本において出されるリコールを見ていると、トヨタの場合は「自社の調査による」「サプライヤーからの報告による」等の理由によって問題を把握することが多く、つまりは発売後のクルマであっても自社の調査によって(消費者が知る前に)自社で先に問題を把握していて、これはつまりトヨタ内部での品質検査体制が確立されており、かつサプライヤーに対する報告義務体制も明確になっているということを意味します。
一方、同じ日本の自動車メーカーであってもマツダは「市場からの報告によって」問題を把握する場合が多いように見受けられ、これは自社でトラブルを発見する体制が十分ではないという事実を意味するのかもしれません(トラブルの発見を自社の品質管理体制ではなく消費者に頼っている)。
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ただ、上述のとおりリコールは「メーカーが真剣にトラブルに向き合っていることの証」でもあり、いかに大きなリコールであっても「真摯に問題に向き合えば」ブランド価値が下がらないことも別の調査にて立証されていて、やはり重要なのは「問題と正面から向き合うこと」で、問題そのものよりも、対応の内容(姿勢)がそのブランド価値を大きく左右するのかもしれません(トヨタは過去にフロアマット問題の対応によって評価を上げたことがあるが、最近だとジャガーがI-PACEのバッテリー問題への対応で大きく評価を下げた)。
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