| モーターを前後に一つづつ搭載するミドシップハイパーカーはなかなかに珍しい |
さらにはアストンマーティンらしい「豪華さ」も
さて、アストンマーティンが新型ハイパーカー「ヴァルハラ」の市販スペックを公開。
ヴァルハラそのものはプロトタイプとしてすでに発表済みで、受注も開始されているものの、今回はようやくそのデザインとスペックが確定したということになりますね。
なお、このヴァルハラはヴァルキリー、ヴァルキリーAMR Proに続く「第三の」ハイパーカーであり、この後にミドシップ化されたヴァンキッシュが続くことで「アストンマーティンのミドシップラインアップ」が完成することになります。
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アストンマーティンの新型ミドシップスポーツ、AM-RB003の名称は正式に「ヴァルハラ」になると発表。限定500台、1.5億、1000馬力のハイパーカー
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そのネーミングは「神話」繋がり
アストンマーティンは戦争に関するネーミング、「V」で始まるネーミングを好んで選ぶようで、サーキット専用の限定モデル「ヴァルカン」も戦闘機の名称から。
Vつながりだとヴァルキリー(Valkyrie)、ヴァンテージ(Vantage)、ヴィラージュ(Virage)というモデルもあり、他に(未使用ですが)「ヴァレカイ(Varekai)」も商標登録済みだと報じられています。
そして今回の「ヴァルハラ」については北欧神話の主神であるオーディンの宮殿を意味し、参考までに「ヴァルキリー(ワルキューレ)」は北欧神話に登場する半神の名称であり、神話の中でヴァルキリーは死者の魂を「ヴァルハラ」へ運ぶとされているので、この二者は神話の中で繋がっているということになりますね。
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搭載されるエンジンはメルセデスAMG製のV8に
なお、アストンマーティンはヴァルハラに「自社開発のV6エンジンを搭載する」として開発を進めていたものの、経営体制が変更になり、メルセデスAMGの投資比率が増加するにあたって「AMG濃度」が濃くなることに。
これによって新開発のV6エンジンは開発がキャンセルされ、ヴァルハラの心臓はメルセデスAMG製の4リッターV8ツインターボへと置き換えられることとなっています。
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アストンマーティンが”ヴァルハラ”に搭載するV6エンジン公開!実は「この60年ではじめての、自社設計によるエンジン」だった!
| ヴァルキリーに積まれるエンジンはコスワース製 | 現在アストンマーティンのエンジンラインアップは「V812ツインターボ」と「V8ツインターボ」の2つですが、このうちV8ツインターボについてはメルセ ...
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ただ、このヴァルハラについてはハイブリッド構造を採用していて、このV8ツインターボエンジンに2つのエレクトリックモーターを組み合わせることで合計950PSを発生(4リッターV8エンジン単体では750PS)。
この出力はヴァルキリーには及ばないものの、アストンマーティンの市販車としては(ヴァルキリーを除くと)過去最高出力であり、実際にアストンマーティンはこのクルマをして「会社にとって大きな前進であり、変革の瞬間である」とコメントしています。
なお、このエレクトリックモーターについては前後アクスルに1つづつ装着され、モーターのみでの走行も可能。
その場合はフロントのみに電力が送られ、つまりFFとなるそうですが、近年のスーパーカー/ハイパーカーにおいてこの「前後アクスルに2モーター」という構成は非常に珍しく、フェラーリSF90ストラダーレのような「エンジンとトランスミッションとの間に1モーター、フロントに2モーター」、もしくはフェラーリ296GTB、マクラーレン・アルトゥーラに採用される「エンジンとトランスミッションとの間に1モーター」が主流です。
むしろ「前後車軸にモーター1つづつ」というのはテスラのようなピュアEVに多い構成であり、アストンマーティンはかなり面白い選択をしてきたな、という印象ですね。
そしてアストンマーティン・ヴァルハラに積まれるトランスミッションは8速デュアルクラッチ、そしてマクラーレン・アルトゥーラ同様にバックギアはなく、モーターを逆回転させてクルマを後退させることに(電欠になるとバックできないが、そういった事態はまずなさそうだ)。
気になる加速性能について、0-100km/h加速は2.5秒(ブガッティ・シロンと同じ)、最高速度は330km/hというハイパーカーにふさわしい数字を誇り、ピュアエレクトリックモードでの最高速は130km/h、しかし航続可能距離は15kmのみ。
車体構造としてはカーボン製バスタブシャシーを持ち、市販時の目標重量は1,550kg(油脂類込みの車両総重量だと思われる)、高度なアクティブエアロによって時速240キロ時に600kgのダウンフォースを発生。
電制デフを備え、ニュルブルクリンクの目標タイムは「6分30秒」だとされています。
参考
- 乾燥重量・・・オイルやガソリン、冷却水などを入れていない状態
- 車両重量・・・オイルやガソリン(満タン)、冷却水を入れて走行可能とし、しかし工具やスペアタイヤなどの付属品は載せていない状態
- 車両総重量・・・車両重量に対し、乗員を乗せたと想定した状態
フロントサスペンションにはF1スタイルのプッシュロッド式が採用され、マルチマチック可変スプリングレート・アダプティブ・スプール・バルブ・ダンパー、フロントリフターが搭載されることで極限時の走行、そして日常の使用両方をカバー。
ブレーキディスクはカーボンセラミック、そして「ブレーキ・バイ・ワイヤ」。
ホイールはセンターロック、タイヤはミシュランとの共同開発によって誕生した専用品だとアナウンスされています。
アストンマーティンらしく快適性、豪華さも重視
なお、アストンマーティンはスポーツカーブランドであると同時にラグジュアリーブランドであり、そのためヴァルハラでも「豪華さ」を重視。
今回画像は公開されていないものの、コクピットはヴァルキリーよりも広く快適で、新しいHMIシステムは、Apple CarPlayとAndroid Autoを搭載したタッチスクリーンディスプレイにてコントロールでき、ステアリングコラムは、シートが固定されているにもかかわらず、さまざまな身長のドライバーに対応できるように幅広い調整が可能だとされています。
先進の運転支援システム(自動緊急ブレーキ、前方衝突警告、アクティブ・クルーズ・コントロール、ブラインド・スポット・モニタリングなど)が搭載されるともアナウンスされ、もしかすると「もっとも快適で乗りやすいハイパーカー」となるかもしれませんね。
たしかに今回公開された画像を見ると、「走りだけを追求」したわけではなく、高い芸術性をも求めていることがわかり、「非常に高価な」しかし走りにはなんらプラスにならないブロック状のテールランプも。
ヘッドライトも「超軽量」とされるヴァルキリーのものに比較すると複雑な構造を持っていて、アストンマーティンはヴァルキリーとヴァルハラの性格をうまく分けているように思います。
エンブレムも「0.4グラムしかない」ヴァルキリーに比較するとかなり立体的(それでもほかモデルに比較すると厚さが数分の一しかなく、かなり軽そうだ)。
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テールパイプの内側までもがペイントされているように見え、このあたりもアストンマーティンならでは。
アストンマーティンのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるマレク・ライヒマン氏によれば、「ヴァルキリーから遺産を受け継いだことは明らかですが、ヴァルハラはより成熟し、完全に独立したデザインになっています。F1に参戦するブランドに期待される純粋な空力的機能と、アストンマーティンが誇る美しいフォルム、印象的なプロポーション、そして模範的なディテールを兼ね備えたモデルです」とコメント。
プロダクションスペックのヴァルハラは公開されたといえど、現時点ではまだ正確な重量や生産時期、価格、そして内装など「不明な」点が多く、続報に期待したいところですね。
アストンマーティン・ヴァルハラのプロモーション動画はこちら
参照:AstonMartin