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新型アストンマーティン ヴァンテージの試乗レビュー続々。「顧客がアストンに求めるもの全てがここにある「ポルシェ911ターボキラーの本命」「高機能サイコパス」【動画】

新型アストンマーティン ヴァンテージの試乗レビュー続々。「顧客がアストンに求めるもの全てがここにある「ポルシェ911ターボキラーの本命」「高機能サイコパス」【動画】

| ポルシェ911に及ばない部分もあるようだが、911と比較されるようになったというだけでも大したものである |

いずれにせよ、凄まじくレベルアップしたことは間違いないようだ

さて、新型アストンマーティン・ヴァンテージの広報車が配備され、各カーメディアにて試乗レポートが続々登場することに。

それらを見ていると「飛躍的な進歩」を遂げており、完全に上のせグメントへと移行したという印象ですが、実際に出力が(従来モデル比で)155馬力もアップしており、これまでのヴァンテージと同列に比べること自体が無意味なのかもしれません。

なお、その割に価格についてはさほど上がっておらず、これまでの2240万円から2690万円へと移行しているものの、性能の向上やインフレ、そして昨今の円安を考慮すると「最小限」の値上げであるとも考えています。

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新型アストンマーティン・ヴァンテージは全方位にて進化

参考までに、北米だと15万ドル中盤といった(従来型の)価格設定から19万ドルオーバーへと大きく価格が改定され、この値付を見ても「もはや新型ヴァンテージが以前と同じセグメントに存在しない」ということがわかりますが、これはもちろんアストンマーティンが意図的に計画したもので、「これからは”販売台数”を優先しない」「スポーツカーマーケットにおいて、アストンマーティンしか持ち得ない”高級”という要素にて勝負してゆく」という主張の現れであるとも考えることができます。

新型ヴァンテージに搭載されるのは従来通りメルセデスAMG由来の4リッターV8エンジンで、しかし大幅に改良が施されることで出力は665馬力へと一気に向上。

トランスミッションはZF製の8速AT、駆動輪は後輪のみ、そして0-100km/h加速は3.4秒。

なお、馬力に比較すると「3.4秒」というのは”そこまで”速い数字ではなく、しかしこれは(ぼくがこれまでのアストンマーティンを運転した経験から言うと)多少のスリップを許容し、タイムよりも面白さを重視した結果なのかもしれません。

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しかしながら、新型アストンマーティン・ヴァンテージは「出力が向上し、外観が新しくなり、インフォテイメントシステムが自社設計となり、それにあわせてインテリアが刷新された」だけではなく、根本から再設計されたスポーツカーだと表現したほうが正しいようで、そのアルミニウム製フレームは全体の剛性を向上させたのみではなく”サスペンションの動作に関連する重要な領域”を局部的に強化しているといい、実際に新しいファイアウォールとフロントサスペンションタワーの補強によって、フロントの剛性が100%向上したいい、ストラットブレースの追加のおかげでリアの剛性が29%向上した、とアナウンスされています。

さらには「より剛性の高い構造」から得られる利点を活用して、サスペンションのあらゆる面が再調整されることとなり、新しい運動学 (荷重下でのサスペンションの幾何学的挙動)、剛性範囲が500%拡大された新しいビルシュタイン製DTX アダプティブダンパー、再調整されたスプリングとスウェイバー、より大きなDB12と同じサイズの、しかしヴァンテージ専用のミシュランパイロットスポーツS 5タイヤ等によって「より快適で、より静かで、より優れた」乗り心地を実現しているそうですが、ドライバビリティそして楽しさという面を含めても「ポルシェ911を凌駕する」というレビューも見られます。

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なお、エンジンについて触れておくと、ターボチャージャーの大型化、プロファイルが変更されたカム装着といった変更に加え、圧縮比の低下(10.5:1から8.6:1)によって可能となったブースト圧の増加が改良のトピックとなり、しかし注目すべきは本家メルセデスAMGの各モデル(E63やS63)に搭載される同型エンジンよりも9%ほど出力が高いことで、これまで「AMGに対する遠慮が見られた」ヴァンテージとは大きく異なる部分です。

参考までに、現在メルセデスAMGはアストンマーティンに対する出資比率を高めており、ともにF1のペースカーへとして活躍するなど、その関係性が(現在のローレンス・ストロール氏の管理下となってから)大きく変化を見せており、両者の関係性が強化される一方、パフォーマンス面における差別化が図られ(メルセデスAMGとアストンマーティンは競合する存在ではないということが確認できたからなのかも)、さらにはインフォテイメントシステムの自社開発、他自動車メーカーとの提携など、ある方面では「AMG離れ」も進んでいるという傾向も。

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新型ヴァンテージに話を戻すと、この強力なエンジン、強靭な足回りをコントロールするための車両コントロールシステムも進化させていて、新しい9段階のトラクションコントロールシステムにより、ドライバーは道路速度に対する車輪のスリップの割合を正確に制御できるほか、最新のボッシュ車両コントロールシステムは、ブレーキベクタリング、電子制御リミテッドスリップディファレンシャル、およびアダプティブダンパーを統合して制御するとされ、電制デフ(E-diff)に至っては135ミリ秒で0から100パーセントのロック率にまで移行できる、とのこと。

このほか6D-IMU 慣性測定ユニットはヴァンテージの動きを6軸で追跡し、統合ブレーキ スリップ コントロール (IBC) プログラムはホイールごとの制動力をアクティブに管理することでブレーキスリップベクタリング (BSV) と呼ばれるコーナー進入時の最適なヨーと姿勢を提供する、と説明されています。

さらにインテグレーテッドトラクションコントロール (ITC) はブレーキ、エンジン出力、E-diff を組み合わせて車輪のスリップを制御し、トラクション スリップ ベクタリング (TSV) は車輪のスリップを最適化して希望のヨー角を実現しますが、ヴァンテージでは”ドライバーが車両を意のままにコントロールするため”各方面における大量のベクタリングが発生しているわけですね。

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新型アストンマーティン・ヴァンテージの「見どころ」はインテリアにある

そして上述の通り、新生アストンマーティンは「高級」をひとつのコアバリューに掲げてのモデル変革を行っていますが、それはインテリアという「もっとも視覚的に理解できる」部分にも現れており、これまでのヴァンテージの内装を一新し、DB12の流れを汲む新しいデザインへ。

このデザインは使いやすさが大幅に向上しており、物理スイッチとタッチパネルとを組み合わせることで「音量調整中にシートヒーターセレクターを操作する」といった複数の動作であっても直感的に行うことができるようになり、そのフレームレートと解像度は「自動車業界随一」だとも評されています(感度や反応が鈍いと著しく気分が盛り下がる)。

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加えて80個もの「ローレット加工が施された」高級なパーツがコクピットを飾ることになり、このあたりはポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンといったライバルが持ち得ない要素であり、インテリアのカスタマイズオプションとともに「抜きん出ている」ところでもありますね。

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こういった様々な変更点を踏まえ、レビュワーのポジティブな意見を総合すると「従来型ヴァンテージの発展形ではあるものの、全く新しいクルマだと言っていい」「アストンマーティンに対して顧客が要求するものがすべてある」「以前よりも快適性が増し、ロードノイズが軽減され、どのモードでも乗り心地は素晴らしい」「ハンドリングは軽く機敏」「アストンマーティンが本来持ち、目指してきた高度な洗練性が花開いている」「思い通りに運転でき、ドリフトするのも、ラップタイムを狙うのも自由自在」「アクセルペダルのストロークが長く、微妙なパワー調整ができる」「格好良いスーツを着た高機能サイコパス」「ブレーキが強力でフェードしにくい」。

反面、ネガティブなものだと「低速コーナーではダイナミックさに欠ける」「ドライビングダイナミクスはポルシェ911の到達した高みにはやや及ばない(ただしそれは911の到達点が高すぎるためで、911と比較されるだけでも大したものだと思う)」。

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なお、「911ターボよりコントロールが容易で、危険なシーンに遭遇することなく楽しめる」「911ターボキラーの本命」という声も聞かれており、その出力や価格帯の類似性から911ターボとの比較を行うレビュワーも多く、これは今までのヴァンテージには見られなかった傾向なのかもしれません。

ローレンス・ストロール氏はアストンマーティンのエンブレムを「昔風に」戻したり、そのスタイリングもまたアストンマーティンらしさを追求するなどブランドのヘリテージに忠実な運営を行っており、これに加えて「高級感」さらには「F1を通じて得られたパフォーマンスに対する取り組み」を付与するという試みを行っていて、「これからのアストンマーティンは、本来そうあるべきクルマとなり、独自のポジションを獲得する」と自信を見せています。

そしてDB12、ヴァンテージ、さらに直近で発表された新型BDXについても、その言葉をクルマ自身が(ローレンス・ストロール氏以上に)雄弁に物語っており、今後のニューモデルにも大きな期待を寄せることができそうだ、と思います。

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