
| 車社会の悲劇をなくす鍵は「スマホ」にあり |
日本だとそこまで飲酒運転は大きな問題ではないようだが
どれだけクルマの安全技術が進歩したとしても、アルコールが絡むことでドライバーの判断力を奪ってしまい、悲劇的な事故を引き起こしてしまうのが現実世界。
アメリカではとくに飲酒運転による事故が社会問題となっており、政府が自動車メーカーに対し車載技術による飲酒運転防止策の導入を働きかけているほどで、それに応じる形で各社とも対応を急いでいる、と報じられています。
そして今回、この喫緊の課題に対してBMWが世界知的所有権機関(WIPO)に出願した特許が「極めてスマートで現実的な解決策」として注目を集めることに。
その解決策は「バーチャルキー」
BMWが考案したのは、現代のドライバーの必需品となった「バーチャルキー(メーカーによって呼び方は異なるが、スマートフォンを活用したキーレスエントリーシステム)」内の機能にアルコール検知機能を連動させるという画期的なアイデアで、ここではこの特許技術の仕組み、そしてなぜこれが従来のシステムより優れているのか、さらには飲酒運転防止技術の未来について考えてみます。
この記事の要約
- BMWが出願した飲酒運転防止特許の具体的な仕組みと連動技術
- バーチャルキー(スマホキー)を活用することで従来のインターロックより導入が簡単に
- エンジン始動を制限しつつ、エアコンやラジオの使用を許可する柔軟性
- アメリカ政府や他社(トヨタ、GMなど)が推進する飲酒運転防止技術の最新動向
BMWの「スマート・インターロック」の仕組み
スマホキーとアルコール検知器のデジタル連携
BMWの特許の核となるのは「携帯電話キー(デジタルキー / バーチャルキー)とアルコール検知器を連携させる」という仕組み。
近年、多くの自動車メーカーがスマートフォンを物理的な鍵の代わりに使える機能を提供していますが、このバーチャルキーは、他の人に鍵を共有したり、特定の機能に制限を設けたりできる柔軟性を持っています。
そこでBMWはこの柔軟性を活用し、以下の機能を組み込もうというわけですね。
- 連携: 携帯電話キーのアプリに車載型またはポータブル型のアルコール検知器を接続
- 始動条件: アプリ内で運転者が息を吹き込み、法定血中アルコール濃度を下回ることをクルマの始動条件としてプログラムする
- 物理的な阻止: 基準値を超えた場合、システムはエンジンの始動をロックし、飲酒運転を物理的に阻止
従来のインターロックより導入が簡単な理由
従来、飲酒運転の再犯防止のために裁判所命令などで取り付けられてきたアルコール・インターロック装置はイグニッション(点火装置)に配線を組み込む必要があり、設置に手間とコストがかかったという欠点も(そんな装置があること自体にも驚かされる)。
一方でBMWの特許技術では全ての制御をデジタルで完結させることができ、このデジタルなアプローチによって特定の運転者に義務付けるだけでなく、一般車両への普及が大幅に容易になる可能性が出てきます(ただ、特許の出願内容を見るに、アルコール検知器そのものは必要となるようだ)。
| 項目 | 従来のアルコール・インターロック | BMWの特許技術(スマホキー連携) |
| 制御方法 | 車両のイグニッション回路に物理的に接続 | スマートフォンアプリを介したデジタル制御 |
| 導入の容易さ | 設置工事が必要で複雑 | アプリと検知器の連携で比較的簡単 |
| 柔軟性 | エンジン始動を完全に阻止 | アクセサリー電源の供給が可能 |
人道的配慮も:待機機能の提供
このシステムは、従来のインターロックに比べて柔軟な運用が可能だとされ、その理由は以下の通り。
- 運転者が飲酒していて運転ができない状態でも、アプリはアクセサリー電源(ラジオやエアコンなど)の使用を許可
- これにより、ドライバーは車内でタクシーや迎えのクルマが来るのを安全に待機することができ、「運転させないが、車内での安全を確保する」という人道的配慮が組み込まれている点も、この特許のスマートな部分である
飲酒運転防止技術:加速する世界の動向
日本でも義務化が進むアルコールインターロック
現時点だと、日本で現在義務化されているのは、特定の事業者が業務で使用する自動車に対しての「アルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認」にとどまっていて、これはエンジン始動を制限する機能の義務化ではなく、運転者に対するアルコールチェックの実施義務です。
しかしながら事業用車両を中心としたアルコール検知器による始動機能制限の義務化、さらには飲酒運転の再犯防止策として(米国同様の)呼気アルコール・インターロック装置の法制化や義務化を求める声がNPO団体や企業から内閣府などに提出されるなど、社会的な関心が高まっているという状況も。
米国政府の要請と他メーカーの取り組み
そして「クルマ社会」であるアメリカでは、上述のとおり政府が自動車メーカーに対して車載技術による飲酒運転防止機能の搭載を義務付ける方向で動いており、以下のような取り組みが進行中。
- GM(ゼネラルモーターズ):CEOがこの目的のための技術開発に取り組んでいることを公言
- トヨタ:ミリ波センシング技術など、先進技術を活用した飲酒運転防止策を開発中。呼吸パターンなどから飲酒を検知する可能性も研究されており、今後数年で大きな進展が期待されている
結論:技術で「ゼロ」を目指す自動車メーカーの責任
BMWの特許は、単なる技術的な進歩ではなく、「飲酒運転を社会から根絶する」という自動車メーカーの社会的責任を示すもの。
スマートフォンキーという普及した技術を活用することで、従来の煩雑なインターロックシステムよりも簡単かつ柔軟に飲酒運転を防止するこのアイデアは、特に飲酒運転の再犯者に対する法的な装着命令が出たケースや将来的な一般車両への普及において「非常に強力な抑止力」となるのかもしれません。
今後、各国政府が飲酒運転防止技術の導入を義務化すれば、BMWのようなスマートなデジタル連携技術が安全なモビリティの新たなスタンダードとなる可能性は極めて高く、思わぬ方向から「デジタルキー」の普及が進む可能性がありそうですね。
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参照:CARBUZZ
















