エントリーモデルなれど最新かつ最高の機能を持つインフォテイメントシステムを装備
さて、新型メルセデス・ベンツAクラス(A180 Style)に試乗。
最近メルセデス・ベンツが「ブランド若返り」のために力を入れているコンパクトクラスの「最右翼」で、上位モデル顔負けの装備が与えられていることが特徴です。
新型メルセデス・ベンツAクラスにおいては、TVCMでもお馴染みのAI搭載インフォテイメントシステム”MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)”が話題となっていますね。※新型Aクラスの公式サイトはこちら
メルセデス・ベンツA180はこんなクルマ
新型メルセデス・ベンツA180のエンジンは1.33リッター4気筒ターボ(136馬力)、トランスミッションは7速AT(DCT)、駆動方式はFF。
ボディサイズは全長4420ミリ、全幅1800ミリ、全高1420ミリ。
車体重量は1360キロと軽量で、最初回転半径は5メートルとこれまたコンパクト。
日本の道路事情にもマッチしたサイジングだと言えそうですね。
なお、新型メルセデス・ベンツのグレードは初年度限定モデルの「Edition 1(もうほとんど完売)」を除くと「A180」「A180 Style」の2つで、A180の価格は328万円、A180 Styleの価格が369万円。
両者のエンジンや駆動系は同一で、その差はパワーシートやプライバシーガラス、パーキングアシスト、キーレスゴー、内装ではモニターサイズ(A180は7インチ、A180 Styleでは10.25インチ)など「快適装備にある」と捉えて良さそう。
そう考えると価格の安いA180を購入して「必要なオプション」だけを追加した方がいいようにも思えますが、売却時にはやはりA180 Styleのほうが「有利」だとも考えられ、購入時と売却時とで「ロスする金額」を考慮すれば、A180 Styleのほうが優れる、とも言えます。
A180 Styleの装備としては「キーレスゴー」「アクティブパーキングアシスト」「シートヒーター」「パークトロニック」「メモリー付きフルパワーシート」「コンビニエンスオープニング/クロージング」といったものが挙げられ、この内容だけを見ても完全に上位モデルなみ。
オプションパッケージだと「ナビゲーションパッケージ(これを装着しないとMBUXが使えないので必須)」、内外装がAMG風になる「AMGラインパッケージ」、「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」、「レーダーセーフティパッケージ」、「アドバンストパッケージ」ほかが用意されています。※全部装着すると120万円くらい
メルセデス・ベンツAクラスの外装はこんな感じ
新型メルセデス・ベンツAクラスの全体的な印象としては「ツルンとしている」というもの。
メルセデス・ベンツの競合たるBMWやアウディは、そのデザインに立体感をもたせ、プレスラインも複雑になる傾向にありますが、メルセデス・ベンツは逆にシンプルに、そして段差がなくなってきています。
特にテールランプではその傾向が顕著で、BMWは「3Dデザイン」を押し出した立体構造を持つ(レクサスのようにボディからはみ出ている)のに対し、最新のメルセデス・ベンツはCLSしかり、このAクラス然り、「ボディと一体化」。
一方でヘッドライトの内部構造など「内側」はより複雑になってきているように思います(このあたりは上位モデルと差がつけられている)。
メルセデス・ベンツAクラスのインテリアはこんな感じ
インテリアだとやはりデジタル式のメーターそして隣接する10.25インチのモニターが大きな特徴。
一通り各部を操作して感じるのは、「各パーツの質感が非常に高い」こと。
取り付け精度や剛性が高く、たとえばドアインナーハンドルの操作感は他メーカーとは一線を画する、と考えています。
ウインカーやシフト操作、各種スイッチやエアコンのブロワーについてもそれは同様で、このあたり「ひとつひとつのパーツをしっかり作りん混んでいる」ということがわかりますね。
そして、そういった「作り込み」の賜物なのか、ドアを閉める時の音もまたほかメーカーの車よりも質感が高く、一切のビビリや不安定さを感じさせないもの(重厚というよりは、余計な音がせず、音の収束が異常に早い)。
そのほかマルチファンクションステアリングホイールは上位モデルと共通しており、使用される素材やその加工も「エントリークラスの枠を超えた」もので、高い商品性を持っている、という印象ですね。
以前までメルセデス・ベンツはクラスごとに内装の機能や装備に差を設けていたものの、最近ではその差が極めて小さく(基本機能は同じになったと言っていい)、新しいモデルから最新の機能が与えられている、という印象(上位モデルだから最新や最高の機能が与えられるわけではない)。
こちらは発表直後に新型Aクラスを見てきたときの印象をまとめたもの。
MBUXはこういったシステム
MBUXは巨大なタッチ式ディスプレイと音声認識ソフト、AIからなる双方向型インフォテイメントシステムだと言うとわかりやすいかと思いますが、タッチパネルによる操作だけではなく、「ちょっと暑い」と言うとエアコンの温度を下げてくれたり、という操作も可能。
なお、MBUXの音声認識率はなかなかのもの。
ただ、何か喋りかけても反応が「ワンテンポ遅れる」印象はあり、しかしこのあたり慣れると問題はないかと思います(じきソフトウェアもバージョンアップされると思う)。
すでに動画で公開されているように、車内の温度や今日の天気、そして行き先の設定も簡単にできるので非常に便利ですね。
とくに住所や目的地入力については、最近の欧州車に採用されている「タッチパッド」は左ハンドル用に作られていて、もともと右手で操作するのが前提。
しかし日本のように「右ハンドル」になると、左手でセンターコンソールにあるタッチパッドを操作することになるので不便きわまりなく、しかし音声による操作だとそのあたりの問題が解決されることになります。
こちらの「メルセデス・ベンツ日本 プロダクトエキスパート」の人が説明する動画の方がわかりやすそう。
なお、TVCMではこんな動画も流されていますね。
メルセデス・ベンツAクラスで走ってみよう
さて、さっそく新型メルセデス・ベンツAクラスで走ってみましょう。
高い質感を持つドアを閉め、座り心地の良いシート(これはかなり高いレベルにあると思う)に腰を下ろして各ミラーやステアリングホイール、シートを調整してエンジンスタート。
エンジンスタート時の振動は非常に小さく、そしてドア開閉時の音同様にすぐに振動が収束するようですね。
走行してすぐに気づくのは、室内のノイズ、バイブレーション、ハーシュネスが高いレベルで抑えられていること。
とにかく快適な乗り心地を持っており、これまでのAクラスで感じた「跳ねるような」硬さはなく、かなり”しっとり”とした乗り味を持つようです。
メルセデス・ベンツというと、とにかく「硬い」乗り心地で知られますが、新型Aクラスではずいぶんカドが取れた感があり、おそらく今後のメルセデス・ベンツはこの方向へと進むことになりそう。
加えてピッチやロールもかなり抑えられていて、そのサイズからは到底想像できない安定性を持つクルマだという印象。
そしてハンドリングにおいても大きく向上があり、これまでのメルセデス・ベンツは(ミドシップスポーツに乗り慣れているぼくの感覚では)いつもハンドルを切る量が足りずに「切り足す」こととなっていたものの、この新型Aクラスでは思ったラインを「ドンピシャ」で描くようで、かなり気持ちのいいフィーリングを持っています。
正直これは驚くべきレベルで、エントリーグレードの「A180」の足回りでこのレベルであれば、のちに投入されるA35そしてA45はどんだけイイんだろうな、とついつい期待してしまうほど。
試乗前に気になっていた「1.33リッターエンジン」についても通常走行では「十分以上の」トルクを発揮していて、まず街中だと不足を感じることはなさそう。
ただしメルセデス・ベンツの人の話では、「大人4人と荷物を載せると、ちょっと苦しそうな場面も」あり、かつ高速道路では「回転数をけっこう上げねばならない」ケースもあるそうで、このあたりは自分の使用環境とあわせ、今後発売されることにあるであろう「排気量の大きなエンジンが」必要かどうかを判断するのがベターかもしれません。
ちなみにトランスミッションはトルコン式の9速ではなく7速DCT。
よって「ガッチリとつながる」印象があるのもいいところですね。
全体的にはこのクルマが「Aクラスであるとは」信じられないほどの出来栄えで、それは外装のデザインやインテリアの質感、そして機能や装備にはじまり、実際に走行したフィーリングに到るまで。
この価格でこのクルマが買えるのであれば、上位モデルを買う必要はないんじゃないかと思わせるほどの完成度を持っていて、ただただ驚かされるばかり、という印象です。
あえて粗を探すならば、トランスミッションが7速”DCT”であるためにやや変速ショックがあり、加えてスタート時のクリープが小さいので、繊細なアクセル操作を心がけないと「クルマがぐっと前に出てしまう」場合があること。
そのほかはちょっとだけブレーキが唐突に効く印象があり(慣れですぐ改善する)、段差を持つ路面を走ると「やや」鋭い突き上げがあること。
しかしながらこれらもAクラスの「個性」だと考えれば魅力を少しでも阻害するものではなく、ほかのライバルや、これまでのAクラスに比べると「総合的に、ずっと優れた」クルマであるのは間違いはない、と考えています。