
| メルセデス・ベンツはもはや新しい内燃機関の開発リソースを持たない会社に? |
EVシフトからの軌道修正に迫られるメルセデス・ベンツ
乗用車の発明者として知られるメルセデス・ベンツですが、現在は大きな転換点に直面しており、様々な方針の転換が報じられているという状況です。
当初は2030年までに内燃機関車を廃止しEVに一本化する方針を掲げていたものの、プレミアムセグメントにおけるEV需要が想定より低迷し、これを受けて方針を転換して昨年「EV専売戦略」を撤回したことも記憶に新しいかもしれません。
この方針変更により、メルセデス・ベンツがは再び内燃機関(ICE)搭載モデルを多数投入する必要が生じるのですが、肝心のエンジン供給体制が整っていないという課題に直面しているのが最新の状況(数年前、関電電動化を見越してガソリンエンジン開発チームを解体し、製造工場もEV向けに改装したと報じられている)。
さらには次期CLAクラスなどボリュームモデル向けのエンジン調達が急務となっており(後述のとおり、そのCLA向けのエンジンすらも他社からの調達である)、その解決策として今回報じられているのがなんと「最大のライバルであるBMWからのエンジン供給」という意外な選択肢で、さらには「現実的に話し合いが行われている」という報道がなされています。

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BMWとのエンジン供給交渉が大詰めか
そしてドイツの経済誌「Manager Magazin」によると、メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOの主導にて「BMWからエンジン供給を受ける交渉」が進められているとのこと。
対象となるのは、BMWの2.0リッター直列4気筒ターボエンジン(B48型)で、ハイブリッドモデルに搭載する計画だと報じられています。
交渉はすでに1年前から進められており、順調に進めば2027年にもBMW製エンジンがメルセデス車に搭載される可能性があるとされ、さらにはディーゼルエンジンやその他のパワートレイン部品にまで提携が拡大する可能性もあり、米国での関税回避を目的とした共同生産の話も浮上しているようですね。
メルセデス・ベンツのエンジン調達事情
現在、メルセデス・ベンツは、中国で生産される「Horse Powertrain(吉利とルノーの合弁)」が製造する2.0リッター直列4気筒ターボを次期CLAやGLA、GLBなどの新型コンパクトファミリーに搭載する予定ですが、しかし現在の米国では中国製エンジンに高額関税が課されるため、販売戦略上のリスクが存在するのもまた事実。
そのため、BMW(とくに米国生産)からのエンジン調達は政治的にも経済的にも理にかなった選択肢となり得ると考えられ、実際、メルセデス・ベンツはこれまでも日産やルノー製のエンジンを活用してきた経緯があり、他メーカーからの調達は珍しいことではなく(ここはBMWと大きく異なる)、しかしそれにしても「まさかBMWからエンジンを調達するとは・・・」という驚きを禁じえません。
柔軟性で優位に立つBMW
一方のBMWは、メルセデスのように「ICE撤廃」を宣言せず、あくまで市場の動向を見極める戦略を選択しており、この柔軟性が功を奏して2025年上半期の販売台数は約120万台と前年比わずか0.5%減にとどまっていて、(ほかの自動車メーカーはもっと大きく数字を落としている)、それとは対照的にメルセデス・ベンツは同期間で約100万台、前年比8%減と苦戦を強いられています。
また、BMWはエンジンの外販実績も豊富で、ジャガー・ランドローバー(V8)、イネオス(直6)、トヨタ・スープラ(直4・直6)、モーガンなど複数メーカーに供給しており、今後、メルセデス・ベンツもそのリストに加わる可能性が高まっているわけですね。
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参照:BMW Blog