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メルセデス・ベンツが電動化への目標が「野心的すぎた」ことを認めガソリンエンジンへの最注力を行う。「そうしなければ我々の内燃機関は2027年には販売できなくなる」

メルセデス・ベンツ

| メルセデス・ベンツほかいくつかの自動車メーカーは「ガソリンエンジンがなくなる」ことを前提に事業を組み立ててきた |

これほどまでに自動車メーカーが「既成に翻弄される」時代もまたないだろう

さて、ガソリンエンジンの未来を完全に否定し、一時は「ガソリンエンジンの開発を停止した」と報じられたメルセデス・ベンツですが、直近だと内燃機関が暫くの間存続し、2030年であっても販売構成の半分程度を占めるという見方へとスイッチしています。

これによってメルセデス・ベンツはガソリンエンジンへの再投資を行う必要が生じていて、今回はその金額が「莫大なものとなっている」との報道がなされることに。

メルセデス・ベンツ
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「フェイスリフトのためだけに、フルモデルチェンジと同等のコストをかけている」

報じられた内容によれば、メルセデス・ベンツは今年だけでも乗用車部門で140億ユーロを既存車両の改良のために投じており、この費用は主に(環境規制を満たすための)「ハイテク燃焼技術」に割かれ、これは「以前の計画よりも多額の資金」。

加えてメルセデス・ベンツCEO、オラ・ケレニウス氏はSクラスのミッドサイクルアップデートについて言及し、「新型燃焼エンジンを搭載するSクラスのアップデートには、通常のフェイスリフトに費やす金額よりもはるかに多くの投資をしました」とコメントしています。

このフェイスリフトでのメルセデス・ベンツの目標は、従来のパワートレインを「最高の技術レベル」とし、環境規制にマッチさせることですが、そこまで資金を投じる理由は「今ここでガソリンエンジンやディーゼルエンジンに多額の資金を投入しなければ、2027年か2028年に燃焼エンジン事業を停止せざるをえないことになる」から。

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つまりメルセデス・ベンツは当初の計画だと「ガソリンエンジンが数年先には消滅するものと捉え、よって投資を必要最小限に抑えて電動化に集中していたものの、想定よりも長くガソリンエンジンが生き残る可能性が出てきたため」急遽その計画を変更したということになり、そしてガソリンエンジンを存続させるための予定外の投資を強いられているということになりますが、ユーロ7の規制内容が緩められたといえど、ガソリンエンジンを継続するためのコストがそれほどまでに必要になる、ということには驚かされます。※メルセデス・ベンツやBMWにおける近年のフェイスリフトでは、出力が向上しないのに重量だけが増えており、つまり規制にガソリンエンジンを適合させることの難しさが浮き彫りになっている

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「従来の計画通りに進行する可能性は極めて低い」

実際にオラ・ケレニウス氏はユーロ7とチャイナ7規制について言及し、メルセデス・ベンツの直近での目標は「これらの排出ガス規制を満たすためにはエンジンをよりクリーンになるように改良すること」「関連する燃焼エンジンとトランスミッションの組み合わせを調整し、(定められた基準を超えることで要求される)ペナルティを支払わなくて済むようにすること」と述べ、近い将来だと「ある程度の電動化」が行われ、つまりラインナップにさらに多くのハイブリッド車が加わるともコメントしています。

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このハイブリッド(プラグインハイブリッド含む)の増加もまた予想外の要素ではありますが、メルセデス・ベンツは、EVへの移行が計画通りに進んでいない今、この状況へと適応しなければならならず、目標を再調整する以外に方法はないことを強く認識しており、しかし2040年までにカーボンニュートラルにするという最終目標は変わっていないことについてもも改めて強調。

そして「ガソリンエンジンへの再投資」を行っているといえども電動化に関しては「その速度を緩める」つもりはないとも再確認し、「次世代EQSのプラットフォーム開発を中止した」という噂についてはこれを否定したうえ、「プロジェクトは急ピッチで進んでいる」と述べ、さらには(当初の改革実現のための)8つのバッテリー製造工場の計画に関しても「破棄するわけではなく、その施設は当初の計画より少し遅れて完成するだけである」と主張しています。※このあたりは環境活動家対策なのかもしれない

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