| 現時点でも利益が出ていないとされるEV事業において、これ以上コストがかさめば大幅値上げもやむをえない |
そして「値上げされた」フォルクスワーゲンのEVに需要がついてくるかどうかもわからない
さて、テスラCEO、イーロン・マスク氏をして「テスラの次にEVへの取り組みにおいて進んでいる」と評されたフォルクスワーゲン。
つまり「ナンバー2」だとテスラに評されたことになりますが、当のフォルクスワーゲンはもちろんナンバーワンを目指しており、2022年中に80万台の電気自動車製造を目指している、との報道。
これはフォルクスワーゲンの販売主任、ヒルデガルド・ウォートマン氏がロイターの取材に答えたもので、2022年には80万台の電気自動車を生産し、2025年にはテスラを抜き、2030年までには全生産量の50%を電気自動車にするという目標を達成すべく、2023年には130万台のEVを製造する計画だと語っています。
果たしてその野望は実現できるのか
なお、テスラは昨年におよそ94万台のEVを製造しており、今年はおよそ120万〜150万台程度を製造するのではと見られていますが、もしフォルクスワーゲンが80万台を製造できればテスラに次ぐ「EV製造世界第二位」のポジションを獲得することが可能です。
現在の圧倒的王者であるテスラは2022年第1四半期に30万台を製造し、このままのペースだと「120万台」ではあるものの、一部では生産ペースがアップしていることも報じられ、かつイーロン・マスクCEOも「150万台の製造は十分に”あり得る”」。
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しかしながら上海工場のロックダウン、テスラとて無縁ではないマイクロチップ(半導体)不足の影響を受けており、フルに工場を可動させることができるかどうかは現在のところ不明です。
加えて、バッテリーの原材料であるリチウム等の価格高騰という問題もあり、なにかと厳しい状況が続く可能性も見えています。
そんな状況においてフォルクスワーゲンは2022年に80万台を生産し、2025年にはテスラを抜くというアグレッシブな目標を掲げていて、正直これが達成できるかはちょっと疑問。
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EVの製造原価が上昇する中でフォルクスワーゲンが競争力を発揮できるのか
もちろんバッテリーの調達能力、マイクロチップの供給といった問題もあありますが、ぼくがフォルクスワーゲンについて最も懸念しているのは「需要」であり、そこまで人々がフォルクスワーゲンのEVを欲しがるのかどうか、ということですね。
フォルクスワーゲンは比較的求めやすい価格帯のクルマを提供することで知られますが、もちろんEVについてもそれは同じ。
ただし今後はEV製造のコストが大きく上昇することになるものと思われ、となるとフォルクスワーゲンのEVも「けっこういい値段」になる可能性も。
そうなると、「同じ価格でアウディやBMW、メルセデス・ベンツのガソリン車を購入できる」「もうちょっとプラスすればジャーマンスリーのEVを購入できる」といった状況になる可能性も出てきて、この状況下にて「プレミアムカーメーカーではない」フォルクスワーゲンのEVが競争力を発揮できるのかどうかというのはちょっと疑問だと考えているわけですね。
ただ、フォルクスワーゲンには、つい最近発表したばかりの「ID.Buzz(ワーゲンバスのEV)」という強力な武器があり、このID.Buzzの売れ行き次第で今後の状況が変わってくるのかもしれません。
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参照:Reuters