| フェラーリは新限定シリーズ「Icona」を立ち上げ。1950年代の純粋なフェラーリを再現 |
フェラーリが「フェラーリ・モンツァSP1」「フェラーリ・モンツァSP2」を正式発表。
フェラーリはこれまでもスペシャルモデルやワンオフモデルに対して「SP」という呼称を用いており、おそらくは通し番号をその後に付与していたようですが(最新はSP38デボラ)、今回新しいスペシャルシリーズとして「Icona(イコナ。イタリア語でアイコンの意味)」を立ち上げ、そこで今回「SP1」「SP2」という”最初の番号”に戻ったようですね。※フェラーリは「新セグメント」と表現しており、今後も他のモデルが出てくる可能性が大きい
Iconaはフェラーリの新しい限定シリーズ
この「Icona」はフェラーリの「大切なお客様とコレクターを対象」としたもので、1950年代のもっとも刺激的なフェラーリの記憶を蘇らせる、としており、つまりこのIconaから登場するのは「過去のモデル(クラシックフェラーリ)をモチーフにした」クルマということになりそう。
過去に故セルジオ・マルキオンネ元CEOが「フェラーリ250の復刻を考えている」と述べていたのはこのIconaシリーズなのかもしれない、と今更ながらに思います。
さらにこの「Icona」は”今日実現できる、最先端のスポーツカー技術を備えている”ことも特徴、とのこと。
今回のモンツァSP1とSP2については、750モンツァ(MONZA/1954年)、860モンツァ(1956年)のネーミング、フェラーリのバルケッタ(オープンモデル)の元祖でもある166MM(1948年)のエレメントを反映させたとしており、「勝利だけ」を目標にしたデザインを再現したようですね。
↓こちらはフェラーリ166MM
なお、フェラーリはもともとレース活動を目的に立ち上げられ、レーシングカーや、レースを「退役」したクルマをロードカーに改修し顧客に販売したりすることで利益を挙げてきたメーカー。
↓こちらはフェラーリ750モンツァ
つまり本業が「レース」で、クルマの販売はレースの活動資金を得るための手段であったということになり、フェラーリはレースで勝つことによってのみその名を成し、これが「フェラーリはけして宣伝広告を行わない(ただレースで勝つだけ)」という姿勢のルーツでもありますね。
↓これがフェラーリ860モンツァ
フェラーリ・モンツァSP1(Ferrari Monza SP1)はこんなクルマ
フェラーリ・モンツァSP1は見たままの「シングルシーター(まさかフェラーリがシングルシーターを発売するとは)」。
助手席にはトノ・カバーが設けられたクラシカルなスタイルで、ボディパネルの多くはカーボンファイバー製、そして前後ランプは専用デザイン。
生産数を絞り、顧客ををも絞ることで「量販モデルでは実現できないデザインの自由度が達成できた」としており、まさに芸術品ともいえる外観を実現しています。
たしかに「ボリュームのあるボディに小さなコクピット」はいかにフェラーリと言えども通常の市販モデルでは実現し得ないスタイルで、このIconaのコンセプトと、極めて特定された販売対象とによってなしえた結果なのでしょうね(メルセデスだと、SLRマクラーレン”スターリング・モス”がある)。
なお、ドアは非常に小さく、そしてガルウイング(ディへドラル)ドアを採用。
これも特別感のある装備ですね。
フロントフードは巨大な「一枚モノ」で、ヒンジはフロントにあり、前に向けてガバっと開くようです(ぶつけると修理代が非常に高そう!)。
フェラーリは「一筆書き」「時を超えたエレガンス」をこのフェラーリ・モンツァSP1/SP2の特徴として挙げていますが、まさに「どんなに時が流れようとも」損なわれることがない美しさを持っているようにも思われます。
フェラーリ・モンツァSP2(Ferrari Monza SP2)はこんなクルマ
一方のフェラーリ・モンツァSP2は2シーターで、セカンド・ウインド・プロテクター(といっても”ほぼ”無いに等しい)が設けられ、ちょっとだけ実用的に。
基本的なデザインや使用される素材、機能は「同一」だとアナウンスされています。
ベースは812スーパーファスト、そしてエンジンは6.5リッターV12、出力は810馬力。
全長は4657ミリ、全幅1996ミリ、全高1155ミリで、フェラーリ812スーパーファストの4657ミリ、1971ミリ、1276ミリに比較して「広く低く」。※スペックはモンツァSP1/SP2ともに同じ
0-100キロ加速は2.9秒、0-200キロ加速は3.7秒、最高速度は300km/h以上。
重量はモンツァSP1が1500キロ、モンツァSP2で1550キロで、812スーパーファストの1525キロとそう大きく変わらない数字です。
これから時代は「エレクトリック」へと向かい、フェラーリも今後ハイブリッドモデルへと順次切り替えてゆくことになりますが、もしかするとこういった「コレクター向け」としては純粋なガソリンエンジン駆動モデルを発売してゆくんじゃないかと考えることも。
ハイブリッドはやはり過渡的技術でもあり、バッテリー技術が今後飛躍的に進化する可能性も残されていて、つまり「パフォーマンス/メカニズム的に陳腐化してしまう」恐れも。
しかしガソリンエンジンであればそういった事態も避けることができ、その純粋さからも「コレクターズアイテム」として高い価値を維持できるのでは、と考えるのですね。
フェラーリははモンツァSP1、モンツァSP2のオーナー限定コレクションも発売
今回、フェラーリ・モンツァSP1とSP2のオーナー限定にて(アクセサリーすら一般人には売ってもらえないのか・・・)、ロロ・ピアーナとベルルッティとのコラボレーションによるレーシングスーツ、ジャージ、ヘルメット、グローブ、スカーフ、レーシングシューズ等が登場。
クラシカルなデザインですが、最新の技術をもって仕立てられている、とのことで、イメージは「ジェントルマンドライバー」。
フェラーリは今後も「安泰」?
なお、フェラーリはここ5年で利益がほぼ「倍」に。
その原動力は「高価格な限定モデル」だとされており、フェラーリは今回の「Icona」にてそれを更に推し進める、ということになりそう。
今やフェラーリも営利企業であり、株主に対する責任がありますが、かといって販売を伸ばすために「台数を増やす」のではブランドイメージや希少性が損なわれることになります。
よって、台数を増やさずに利益を増やすとなると「一台あたりの利益を増加させる」という矛盾した難題がつきつけられ、その解決手段がこういった限定モデル。
通常の市販モデルは一見さんに対して販売を行い(それでも台数は絞る)、しかしVIPに対しては「一般人が絶対に購入できない」限定モデルを販売することでそれぞれの自尊心を満たし、かつ利益も押し上げるということなのかもしれません。
「販売台数を増加させること」が至上命題となるであろう、フォルクスワーゲンやトヨタとは大きく異なる会社運営が求められるのがフェラーリやランボルギーニ、アストンマーティン、マクラーレンといったブランドとなりますが、各社とも異なる方向性を模索中。
ランボルギーニは「ウルス」の発売そして「4ドア」モデルも計画中と言われ、アストンマーティンはとにかくラインアップの拡充と異業種への進出。
フェラーリは今回のように「富裕層やコレクター向け」のビジネスを展開することになるということなのだと思われますが、フェラーリの場合はそのブランドのバックボーン(レース活動と実績)、そして過去のモデルといった他にはない「資産」があり、それらを活用して利益を増やす、ということになりそうですね。
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VIA:Ferrari