| これでフェラーリに死角はなくなった |
さて、フェラーリが待望のニューモデル「SF90ストラダーレ」を発表。
発表そのものはフェラーリの本社(マラネロ)にて、重要顧客を招いて行われ、続いてメディア、そしてネットでの公開となったようですね。
まず、ネーミングの「90」については、フェラーリの活動開始90周年を記念する意味合いを持っていると公表されています。
会社としてのフェラーリの登記は1947年ですが、フェラーリ創始者であるエンツォ・フェラーリが活動を開始(チームを創設)したのは1929年なので、そこからの「90年」ということですね。
なお、「SF90」は2019年シーズンを走るF1マシンと同じ名称であり、「ストラダーレ」は公道という意味。※F1マシンのSF90の「90」も活動90周年をあらわす
今回のSF90ストラダーレについては、フェラーリのルーツである「レース」そして「ロードカー」両方を意味し、つまるところ「フェラーリの原点に立ち返った、かつ究極のロードカー」ということになりそうです。
フェラーリSF90ストラダーレは「3モーターハイブリッドを採用する4WD」
このニューモデルは発表前から「ハイブリッド」ということが公表されていましたが、性格に表現するならば「プラグインハイブリッド」。
メインとなるガソリンエンジンはおなじみ3.9リッターV8ツインターボで、これは769馬力を発生。
これに組み合わせられるのが8速デュアルクラッチ・トランスミッションそして「3モーター」を持つハイブリッドシステムで、モーターの1つはトランスミッション、2つはフロントに位置する、ということ。
重要なのは、ラ・フェラーリに採用された「2モーター」ハイブリッドシステム(HY-KERS)とは異なるということで(ラ・フェラーリは2つともエンジン、トランスミッションに内蔵される)、さらには「フロントホイールをモーターで駆動する」ということ。
この方法はポルシェ918スパイダー、ホンダNSXと同様であり、今後のスーパーカー/ハイパーカーにおいて主流になると思われます。
3つのモーターは7.9kWhのリチウムイオンバッテリーにて駆動され、トータルでの出力は217HP/220PS。
これとガソリンエンジンとを組み合わせて合計986HPということになります。
なお、25キロの距離であればモーターのみでの走行が可能ですが、この際に稼働するモーターはフロントの2つのみ。
つまり「フルエレクトリック時のフェラーリF90ストラダーレはFFである」ということに。
フェラーリSF90ストラダーレのパフォーマンスは圧倒的に「フェラーリ史上最高」
フェラーリSF90ストラダーレのパフォーマンスには目を見張るものがあり、まず0-100km/h加速は2.5秒。
これまでの「フェラーリ最速」であった488ピスタの0-100キロ加速”2.85秒”を軽く凌駕し、ブガッティ・シロンと同じタイムに突入しています。
0-200km/h加速については6.7秒、最高速は340km/h。
出力、そして”8速”ということを考えると最高速が意外に低いようにも思えますが、フェラーリは最高速ではなく「サーキットでの速さ」を追求し、各ギアをクロスさせてきたものと思われます。
そしてフェラーリSF90ストラダーレはハイブリッドにもかかわらず軽量であることも特徴で、その重量はわずか1,570kg。
F8トリブートの1,330kgよりは当然重くなるものの、パワーウエイトレシオは「1.57」をマークし、これもF8トリブートの「1.85」を軽く超えています。
フェラーリによると、この重量に抑えることは大変な「チャレンジ」であったといい、ハイブリッドシステム単体での重量はわずか270キロ。
それでも「F8トリブートにハイブリッドを積むより軽く仕上がっている」のは車体そのものに軽量素材を使用しているためだといい、これによって軽量化と同時に高剛性化(曲げ強度で20%増加、ねじり剛性で40%増加)も達成できた、としています。※ラ・フェラーリの1,255キロよりは重く、となるとカーボンモノコックシャシーではないと思われる
フェラーリSF90ストラダーレは4つのドライブモードを備える
車体制御について述べると、フェラーリSF90はそのステアリングホイールに「eマネッティーノ」スイッチを設け、これによって異なる4つの車両特性を切り替えることが可能だそう。
まずeDrive(eドライブ)はその名の通りEVモード。
完全にモーターのみで走行できるので、早朝や深夜、街なかでの移動に便利だと思われます(ちょっと動かすのに、わざわざエンジンに火を入れなくていいのは嬉しい)。
そしてHybrid(ハイブリッド)モードがデフォルトの設定となり、これはすべての設定を「最適化(つまり燃費重視型と思われる)したモード。
Performance(パフォーマンス)モードについては「常時V8エンジンが駆動」している状態で、いつでも必要なときに必要なパワーを取り出せる、と説明しています。
もっとも過激なのはQualify(クオリファイ)モードで、これは車両のすべてを開放し、最大出力を発揮する設定。
クオリファイ=予選の名が示すとおり、「ここ一発」のときに全力でアタックを行う際に使用するのだと思われます(そのネーミングがフェラーリらしい)。
そのほか電子サイドスリップコントロール(eSSC)を装備。
これは簡単に言えばガソリンエンジンとエレクトリックモーター両方を統合したトラクションコントール。
トルクベクタリングも内包され、とくにフロントタイヤ左右の果たす役割が大きいようです(よって、これまでのフェラーリとはかなり異なるコーナリング特性を持つと思われる)。
フェラーリSF90ストラダーレのデザインは「ここ20年でもっとも過激な進化」
スタイリングについては、フェラーリいわく「そのフロントは過激に進化した」。
細身のLEDマトリクスヘッドライト、よりラウンドしたウインドウ、ブラックアウトされたAピラーなど、J50そしてラ・フェラーリからの影響を見て取れますね(下の画像はJ50)。
ボディサイド、サイドスカートの形状、そしてリアセクションもJ50で採用されたデザインを連想させるもので、J50はその後のフェラーリを示唆していた、ということになるのかもしれません(やはり下の画像はJ50)。
フェラーリSF90ストラダーレの機能についてはこれから解説が展開されることになるかと思われますが、「アクティブエアロ」を装備していると紹介。
フェラーリはこのSF90ストラダーレにつき、「街なかでの走行にせよ最高速にせよ、最適なエアロダイナミクスを実現する」と述べ、コーナリング時やブレーキング時にも効果を発揮するとしているので、マクラーレンの「エアブレーキ」や、ランボルギーニの「ALA」同様の働きをするのだと思われます。
なお発生するダウンフォースについては最大で390キロ(時速250km/h時)。
ちなみにぼくとしては、その外装につき「ドアミラーが格好良くなったな」というのが正直な印象で、というのもフェラーリのこれまでのドアミラーはランボルギーニやポルシェ、フェラーリのボディデザインそのものと比較すると、なんとなく「普通っぽかった」から。
フェラーリSF90ストラダーレのインテリアも「新世代」へ
そしてフェラーリSF90ストラダーレの内装もこれまでのフェラーリとは異なるデザインへ。
ステアリングホイールのデザインが変更され、メーターは「液晶(16インチ!)」となり、各パーツのデザインも未来的に。
これらは「航空機のコクピットがモチーフ」とのことですが、センターコンソールのスイッチ類はたしかに「それっぽい」ように思います。
なお、ステアリングホイールについては多くの機能が集約され、エアコンの温度調整などもここでできるように(ウインカーはこれまで通りステアリングホイールのスポーク状)。
そのほか気づく点としては、エアコン吹き出し口が丸から流線型へ、物理ボタンのかわりにタッチコントロールが多く採用されていること、ヘッドアップディスプレイ装備、「助手席ディスプレイ」がセンター寄りのダッシュボードに装備されていること。
加えてシートのデザインも新しいものを採用しているようですね。
なお、ぼくはフェラーリに対して「非常に美しく、これ以上はないほどの存在感を持つ」という認識を持つ半面、細部の仕上げや最新技術がほかメーカーに劣る、という印象を持っていたわけですね。
ただ、今回のF90ストラダーレを見ると、そういった「弱かった部分」を完全に補完し、たとえば内装だと液晶ディスプレイやインターフェース、外装だとフラッシュサーフェス化(おそらくドアハンドルもポップアップ)やLEDライティング等、一気に最前線に躍り出てきたという印象。
加えてランボルギーニがその強みとしていた「4WD」を備え、エレクトリックパワーによるパフォーマンス向上において他社に先んじるなど、「これまで持っていた強みに加え、他社を圧倒するデザインと技術を身につけた」のがSF90ストラダーレだと考えています。
現在フェラーリはそのデザインにおいて「過去と未来」とを結びつけようとしていますが、見た目だけではなくそのイメージ、機能においても今後は過去と未来とが密接に結びつくことになると考えられ、それはまさに、冒頭にて記載した「SF90ストラダーレ」という名が持つ意図そのものなのかもしれません。