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デ・トマソはなぜフェラーリやランボルギーニのように成功できなかったのか?ボクは「アレハンドロ・デ・トマソがお金のためにクルマを作って売ったから」だと考える

デ・トマソはなぜフェラーリやランボルギーニのように成功できなかったのか?ボクは「アレハンドロ・デ・トマソがお金のためにクルマを作って売ったから」だと考える

Image:De Tomaso Automobili

| エンツォ・フェラーリ、フェルッチョ・ランボルギーニのような「全てを排しても理想のクルマを作る」という信念が見られない |

それでもデ・トマソは数々の名車を排出した「自動車の歴史に残る」メーカーであることは間違いないだろう

さて、デ・トマソについてここで簡単に「おさらい」。

デ・トマソはフェラーリ(1929年)よりも後に、そしてランボルギーニ(1963年)よりも早く設立されたスポーツカーメーカーで、多くの人がその名を知る割には「成功しなかった」悲運のメーカー。

ここでその歴史、そしてフェラーリやランボルギーニとはどういった違いがあったのかを見てみましょう。

デ・トマソ(De Tomaso)はこんな歴史を持っている

デ・トマソは、アルゼンチン人レーシングドライバーのアレハンドロ・デ・トマソによって1959年にイタリアのモデナで設立され、当初はレーシングカーの製造を手がけており、その後、高性能なスポーツカーを少量生産することで知られるようになったという歴史を持っています。

デ・トマソの歴史的変遷

  • 創業と初期 (1959年 - 1970年代):
    • アレハンドロ・デ・トマソが、イタリアンスタイリングと精密なエンジニアリングを組み合わせた高性能スポーツカーを作るというシンプルなアイデアに基づいて会社を設立
    • 初期には、ヴァレルンガ (Vallelunga) (1963年発表) やマングスタ (Mangusta) (1966年発表) などのミッドシップスポーツカーを開発し、特にマングスタは、フォードとの最初の共同開発車で、フォード製のV8エンジンを搭載したことでも知られる
    • 1971年には、デ・トマソの歴史の中で最も成功したモデルであるパンテーラ (Pantera) を発表。パンテーラは、カロッツェリア・ギアのデザインとフォード製のV8エンジンを組み合わせたというパッケージングを持ち、アメリカではフォードのリンカーン・マーキュリーのディーラー網を通じて販売され、商業的に成功したものの、品質問題も指摘される
  • マセラティ買収と経営 (1970年代 - 1990年代):
    • 1970年代後半、デ・トマソは経営難に陥っていたマセラティの株式を取得し、経営権を掌握
    • デ・トマソの傘下で、マセラティはビトゥルボ (Biturbo) などの新しいモデルを開発し、販売台数を増やし、しかし、品質管理の問題は依然として存在
    • 1990年代には、デ・トマソはモト・グッツィ (Moto Guzzi) やイノチェンティ (Innocenti) などの他のイタリアのブランドも買収し、一大グループを形成する
  • 経営危機とブランドの消滅 (2000年代):
    • 2003年にアレハンドロ・デ・トマソが死去した後、デ・トマソの経営は悪化し、2004年には会社は清算
    • この後長らくの間、デ・トマソのブランドは休眠状態へ
  • ブランドの再興 (2010年代 - 現在):
    • 2014年、香港の投資会社であるコンソリデーテッド・イデアル・チーム (Consolidated Ideal Team) がデ・トマソブランドを買収
    • その後、社名をデ・トマソ・アウトモビリ (De Tomaso Automobili) に変更し、2019年には創業60周年を記念して、新型スーパーカーのP72を発表。P72は、過去のデ・トマソのデザイン要素を取り入れつつ、現代的な技術を搭載したモデルとして注目を集める
    • しかし、P72の開発が難航し、開発を担当していた企業との間で支払いの問題が発生するなど、曲折を経ることに
    • 2025年5月、ついにP72を2025年後半から生産すると発表

主なデ・トマソのモデル

  • ヴァレルンガ (Vallelunga)
  • マングスタ (Mangusta)
  • パンテーラ (Pantera)
  • グアラ (Guarà)
  • ビグア (Biguà) (後にマセラティ・3200GTとして発売)
  • P72

デ・トマソは、その短い歴史の中で、イタリアの情熱的なデザインとアメリカのパワフルなエンジンを組み合わせたユニークなスポーツカーを生み出しており、そのブランドの復活は多くのファンを魅了しているのも間違いがないところ。

今後の展開に注目が集まっている、というのが現在の状況です。

なぜデ・トマソは「成功」しなかったのか

そこで気になるのが「なぜデ・トマソはフェラーリやランボルギーニのように成功できなかったのか」。

数々の名車を排出しつつも倒産の憂き目に遭い(ランボルギーニも何度か倒産していますが)、しかも長い間買い手がつかないほど落ちぶれてしまったのかということですね。

その理由にはいくつかの要因が複合的に絡み合っていたのだと考えられます。

1. ブランドイメージと歴史:

  • フェラーリとランボルギーニ: モータースポーツにおける歴史(フェラーリ)や創業者自身のカリスマ性(フェラーリ、ランボルギーニ)、そして一貫した高性能・高級路線によって、揺るぎないブランドイメージを確立。
  • デ・トマソ: アルゼンチン出身のアレッサンドロ・デ・トマソが設立したものの、フェラーリのような明確なレーシングヘリテージや、フェルッチョ・ランボルギーニ(創業者)自身の強い個性という点ではやや弱かったのかもしれない。また、フォードとの提携など、ビジネス戦略が多岐にわたり、ブランドイメージがやや曖昧になった時期も。
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2. 製品戦略と一貫性:

  • フェラーリとランボルギーニ: 高性能なエンジンと洗練されたデザインを追求し、少量生産による高級スポーツカーメーカーとしての地位を確立。ともにエンジニアリングにこだわり抜いたという点、ランボルギーニでは革新的なチャレンジ(ミドシップ)を行いスーパーカーの基準を新しく打ち立てたという偉業が光る。
  • デ・トマソ: マセラティの経営に関与したり、フォードとの共同開発で大衆向けのスポーツカー「パンテーラ」を生産したりと、幅広い戦略を採用。パンテーラは一定の成功を収めたものの、フェラーリやランボルギーニのようなエクスクルーシブなイメージを確立するには至らず、品質管理や信頼性の面で課題があった時期も。

3. 経営の安定性:

  • フェラーリとランボルギーニ: 親会社(フィアット/クライスラー、フォルクスワーゲン)の傘下に入ることで安定した資金力と経営基盤を得ることに成功し、長期的なブランド育成が可能に。※フェラーリはスピンオフによって独立している
  • デ・トマソ: 独立系のメーカーであり、経営状況が不安定になる時期も。1990年代には経営が悪化し、2004年に会社が清算される。

4. マーケティングとプロモーション:

  • フェラーリとランボルギーニ: F1などのモータースポーツへの積極的な参戦や(フェラーリ)、富裕層をターゲットとした巧みなマーケティング戦略(ランボルギーニ、フェラーリ)によって、ブランドの価値を高めることに成功している。
  • デ・トマソ: モータースポーツへの参戦は限定的であり、フェラーリやランボルギーニほどの強力なブランドイメージを確立するマーケティング戦略を(モータースポーツのみではなく、幅広い面で)展開できなかった。
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まとめ:

デ・トマソは、パンテーラのような魅力的なモデルも生み出しましたが、フェラーリやランボルギーニと比較すると、ブランドイメージの確立、一貫した製品戦略、安定した経営基盤、効果的なマーケティング戦略などの面で課題があったと言え、様々な試みを行ったものの、結果として、より明確なブランド戦略と強固なバックボーンを構築できなかったのだとも考えられます。

もっと簡単に言うならば、フェラーリは「モータースポーツで勝つことだけしか考えておらず、モータースポーツこそが本業で、市販車ビジネスはそのための資金稼ぎ」という明確な方向性があり(勝つためには妥協のないエンジニアリングを追求している)、そしてランボルギーニは「フェラーリを打ち巻かず」にはじまって、その後は「比類ないアグレッシブなデザインと存在感、そのセグメントにてベンチマークとなりうる品質とテクノロジー」を備えるという信念を見て取れますが、デ・トマソの中心にあったのはいつの時代も「ビジネス(お金)」だったのかも。

そして「お金」のためには品質を犠牲にしたり、他社と提携したりという一面も見え、直近でのイーロン・マスク氏のように「お金儲けのために自身の立場を利用したりクルマを作っている」と捉えられたんじゃないかと考えており、エンツォ・フェラーリ、そしてフェルッチョ・ランボルギーニのような「エンスージアストに響く信念」が感じられなかったことが「デ・トマソが神話にならなかった理由」なのかもしれませんね。

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