| 現在、多くのブランドでは「他のブランドとの差別化」「自社独自の価値の追求」「それによる利益率の追求」が掲げられている |
もしそうしなければ、ここから生き残ることは難しいだろう
さて、マセラティCEO、ダヴィデ・グラッソ氏が「顧客に評価されるクルマをつくれば、価格競争に巻き込まれることなく利益率を向上させることができる」とコメント。
つまりは「魅力さえ伴えば、高額なプライシングでも受け入れられる」ということになりそうですが、この考え方は近年のマセラティの値付けにも端的にあらわれているのかもしれません。
ただ、マセラティの現在のクルマがすべて高額プライスなのかというとそうではなく、たとえばMC20の2664万円~2995万円というのは「(フェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンと比較すると)とんでもなく安い」ように思えます。
発表されたばかりのSUV、グレカーレについても同様であり、862万円~という値付けは際立って高いものではないと認識しています。
しかし新型グラントゥーリズモの価格設定は「かなり高い」
しかしながら新型グラントゥーリズモの価格は2444万円~2998万円に設定されており、これは「カーボン製モノコックシャシーを採用し、ずっとパワフルなエンジンを積む」MC20に比較してかなり割高だと感じているわけですね。
そして先代グラントゥーリズモの価格は1925万円~からだったので(しかもフェラーリ製のV8エンジンを積んでいた)大幅な価格アップということに。
ただ、マセラティCEOのいう「正しい製品、正しい値付け」という発言や、MC20そしてグレカーレの価格設定を見る限り、新型グラントゥーリズモの価格には「正当な理由がある」ものと考えられ、それは文字や数字には現れない部分ということになるのかもしれません(その意味で、新型グラントゥーリズモの実車を見ることを楽しみにしている)。
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最近では多くの自動車メーカーが「利益率」にシフト
ダヴィデ・グラッソCEOが上記の発言を行ったのは、アナリストが(テスラが先陣を切った)大幅な値下げが自動車業界に与える影響について懸念を示した際になされたもので、これについては以下のようにコメントがなされています。
顧客が車の価値に見合った金額を支払うことに集中すれば、ライバルとの価格競争に巻き込まれることはなく利益率を上昇させることができます。
価格設定は一般的に非常に重要な要素ですが、高級ブランドにとっては特に重要です。だからこそ、私たちマセラティが台数主導でないことが重要なのです。私たちの目標は、誰かに評価され、対価を支払ってもらえるような最高のクルマを作ることです。
これに加え、同氏は価格を下げれば販売台数を伸ばせるであろうものの、「市場が自動車で溢れかえり、逆効果になる懸念がある」ことについても触れており、つまりマセラティは今後「台数」ではなく「利益率」を追求するということになりそうです。
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なお、「利益率」に方針を転換したブランドは少なくはなく、メルセデス・ベンツは早い段階で「利益の出ないコンパクトクラス、エントリークラスからはほぼ撤退し、利益の出るAMG、マイバッハ、Gクラス、そして高級車に特化する」とコメント。
さらにはアルファロメオ、BMWも同様の方向性を示しているほか、ポルシェについても「利益率重視戦略」を高らかに宣言しています。
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現在、自動車メーカーを取り巻く環境は大きく変化している
こういった「利益率重視」の方向へと向かっているのにはいくつかの理由があるものと思われ、まずは自動車市場そのものが飽和状態にあること、そして今後電動化に向かえばメーカー(ブランド)間の差異を出しにくくなること、様々な規制によって製造原価が大きく上昇していること。
つまり今後はまずますクルマを売ることが難しくなり、しかし「高く」売らないと利益が出ず、ではそのためにどうするかということが目の前の問題として迫ってきたのだと思われますが、各社の決算報告についても「出荷台数」よりも「利益率」に焦点を当てた報告が多く見られるようになっています。
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ただ、この競争が厳しい世の中でクルマを「高く売る」ことはまったく容易ではなく、よってそこは各社とも独自のストラテジーをもって動いているわけですが、マセラティは「スーパーカーとエレクトリックSUV」に集中するという戦略を取っており、実際にMC20はマセラティのイメージを大きく変えたと考えて良いかと思います。
そして現在は旧製品群と新製品とを入れ替えている途中となっているものの、新製品の販売が総じて好調だといい、2023年上半期だと15,300台を販売し、1億3,300万ドルの調整後営業利益を計上することに。
これは、利益率が6.6%から9.2%へと改善したことを意味していますが、マセラティは「15%」という高い目標を掲げており、今後も緩やかな成長を持ってこれを達成したいと考えているもよう。
一方、高い利益率を達成するために(効率化を伴わない削減という意味での)コストカットを行う予定はないといい、「そんなことをしたら、戦略的に完全にバランスを崩すことになる」とも。
よって今後のマセラティは「顧客から評価される素晴らしいクルマを作り、それにふさわしい値付けを行い、顧客に満足してもらいつつも、マセラティも高い利益率を享受する」ということになりそうですね。
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参照:Automotive News