| なぜ中国向けのホンダ車は「他と全く異なるデザインを持つ」のかを考える |
さて、先日より「新型エレクトリックSUV」の発表を予告していたホンダですが、ついにその姿をアンヴェール。
実車は北京モーターショーにて発表されることになり、つまりは「中国向け」のSUVだということになります。
なお、ホンダのEVというとまっさきに「Honda e」を思い浮かべますが、今回発表された”中国市場では初の”「HONDA SUV e:Concept」は、HONDA eそして以前に発表された「スポーツEVコンセプト」とはまったく共通性のないデザインやボディカラーを持っていることがわかります。
たしかにホンダはルーツとすべきSUVを持っていない
なお、HONDA eは初代シビックを、スポーツEVコンセプトはかつてのS800をイメージしたものだとされていますが、じゃあエレクトリックSUVを発表する際にモチーフとなる過去の代表的なホンダのSUVは?と聞かれると「うーん」となってしまい、ホンダは(HONDA SUV e:Conceptのデザインにあたり)過去にインスピレーションを求めることができなかったのかも。
ただ、それにしてもボディカラーやヘッドライト、ドアハンドル、サイドカメラといったHONDA eやHONDAスポーツEVコンセプトとの共通性もほぼなく、これは(今のところ)中国専売と言われるだけに、中国の好みに合わせた結果なのかもしれません(そして、ホンダeを発売している市場では、このHONDA SUV e:Conceptを発売しないのかもしれない)。
今回のHONDA SUV e:Conceptの発表にあたり、ホンダはスペック等詳細を明かしておらず、「顧客に対し、フレッシュで楽しい、そして価値あるモビリティを提供」、そして次世代のホンダセンシング、ホンダコネクト(インフォテイメントシステム)が与えられる、ということを公表済み。
ホンダは「中国」と「その他世界」を切り分ける?
なお、中国市場は急速にエレクトリック化を進めており、一定の販売台数を持つ自動車メーカーは「一定割合のEVを販売せねばならない」という規制がある(もしくは導入予定)と言われ、現在各社ともこれに対応中。
そのためトヨタは「IZOA(C-HRのEV版)」等のEVを中国にて発売しているものの、これらは「他の国では販売する予定なし」。
これについて理由を考えてみると、欧米や日本だとEVは非常に高価で、一般向けというよりは「環境意識(と所得)の高い知識人向けに」販売されている、というイメージ。
よってこれら地域で販売されるEVは結果的に高付加価値な製品となっており、高くとも購入してもらえるような仕掛けを持っているように思います。
反面、中国だと、政府の政策によってEVの普及を強力に推進しており、「数十万円で購入できる」EVはじめ、普通の人が普通に乗るための普及価格帯EVが多数存在。
それを考慮すると、「高付加価値だが高価な」EVが中国にて大量に売れるとは考えにくく、よってホンダは「日米欧には日米欧向けの」EVを開発して投入し、「中国には中国向けの」EVを可能な限り安価に開発して安価に販売するのだとも考えられます。
そのため、これらの市場については「同じホンダのEVといえど」共通性はなく、それらの市場に合わせたキャラクターを持つのが自然ななりゆきであり、共通性がないのも当然といったところなのかもしれません。
ホンダは「ローカライズ」を重視する自動車メーカー
なお、ホンダは昔からローカライズ(現地化)を推進する自動車メーカーとして知られ、古くは東南アジアで独自車種を展開したりといった例も。
中国においても独自のモデルを展開しており、現地の嗜好を汲むことでファンを得てきたメーカーだと言われます。
反面、好みを反映させすぎてバリエーションが増えすぎ、そのぶん会社全体のコストがかさみすぎるとも指摘され、これが「ホンダが儲からない慢性的理由」だとも報じられていますね。