| BYDはその販売手法もなかなかにスマートであり、その国や地域にマッチした戦略を採用している |
気がつけば東南アジアにおけるBYDの支配力が強くなっていそうだ
さて、中国国内で大きく勢力を伸ばしてテスラを従える立場となったBYD。
一方では欧州や米国、日本など先進国での販売が思ったほど伸びないと言われていますが、無理にそれら地域で(日米欧の自動車メーカーと競って)販売を伸ばそうとはせず、テスラはじめ欧米の自動車メーカーとは異なる方法で「世界」を攻めていると報じられています。
いったいBYDはどうやって「世界を攻める」のか
そこで現在BYDが採用している手法がかつての日本の自動車メーカーと同じもので「東南アジアを攻める」。
つまりは品質の要求が厳しく、新しい自動車メーカーに対して閉鎖的な欧米はさておき、価格的要求が厳しい割に品質に対してもそこまで厳しくない東南アジア市場でのプレゼンスを高めようというわけですね(たしかにスマートな戦略でもある)。
そしてBYDは東南アジア各国の大手コングロマリットと販売に関する提携を結んでおり、このアプローチによって顧客とのリーチを拡大し、(現地代理店のノウハウをもって)複雑な政府規制を回避し、消費者の嗜好引き出すことが可能になっていると言われます。
実際のところ、直近で発表されたデータによると、2023年第2四半期に東南アジアで販売されたEVの26%がBYDモデルだったといい、とくにBYD Atto 3は同地域のベストセラーとなったもよう。
そしてBYDの普及によって第2四半期の東南アジアにおける乗用車の新車販売台数に占めるEVの割合は6.4%となり、第1四半期の3.8%から飛躍的に増加しています。
カウンターポイント・リサーチのシニアアナリスト、ソウメン・マンダル氏によると、「BYDが最も重視しているのは、利益率の最適化よりもブランドの普及だ」。
すでにBYDはタイへと5億ドルを投資して2024年から毎年最大15万台のEVを生産できる工場を建設し、東南アジアの他の市場やヨーロッパに輸出する計画を持っており、マレーシアではシメ・ダービー、フィリピンではアヤラ・コープ、タイのレバー・オートモーティブ、インドネシアだとバクリー & ブラザースといった有力販売代理店と提携することで販売を大きく拡大する意向を持っています。
BYDは東南アジアにて大きなアドバンテージを獲得することに
そしてこういった大きな代理店との提携につき、自動車販売コンサルタント会社、アーバン・サイエンスにてマネージング・ディレクターを務めるチー・キアン・リム氏は「購入者に不安や懸念がある場合、シメ・ダービー、バクリー&ブラザーズ、アヤラ・コープのような実績のある企業と提携することで、特にアフターセールス・サポート面で安心感を与えることができる」とコメントしBYDの戦略について高い評価を下していますが、BYDがこのまま現地のスタンダードとなってしまうと、いま東南アジアで販売されている日本車も多少なりとも影響を被ることになり、今後EVを揃え、いざ東南アジアに進出しようとしても、すでにスペースが残されていない可能性もありそうです。
ちなみにBYDの車両はタイで特に人気があるといい、第2四半期におけるBYDの海外販売台数の24%をタイが占めているそうですが、シンガポールでは他地域とやや異なる戦略を採用していて、レストランを兼ねた5つの「BYD by 1826」なるショールームを立ち上げるなど、オシャレブランドとしての印象を強めているようですね。
そしてここ日本においてもBYDは積極的にディーラー網を拡充しており、強力な営業戦略やキャンペーン、イベントの開催によってそのプレゼンスを高めており、ともすると「日本で最も売れているEV」になるんじゃないかと考えたりする今日このごろです。
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参照:Reuters