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吉利とバイドゥとのビッグネームによるコラボ自動車メーカー「極越」が人工知能搭載ハイパーカーを発表後、光の速さで倒産することに

吉利とバイドゥとのビッグネームによるコラボ自動車メーカー「極越」が人工知能搭載ハイパーカーを発表後、光の速さで倒産することに

Image:JiYue

| 各方面からは「退職勧告」「車両の売却勧告」がなされる |

会社が倒産すると車両の各種コネクテッド機能が使えなくなり「鉄の塊」に

さて、先日「自動運転機能を備えるハイパーカー」、ロボXを発表したばかりの中国の新興自動車メーカー、「極越(ジーユエ、JiYue)。

これは吉利(ジーリー)と百度(バイドゥ)という大企業どうしの合弁会社として設立された会社ではありますが、直近で財務問題の噂が浮上し、その数日後に突如解散したとの報道。

このハイプロファイルな提携の崩壊は現地の自動車業界に衝撃を与え、同様の合弁会社の安定性にも疑問を投じる出来事となっています。

まさかこの極越が破綻するとは

この極越は百度が55%、吉利が45%を出資する合弁会社(JuDu自動車)としてスタートし、しかし生産ライセンスの取得に苦戦したため2023年に「極越自動車」として再編され、吉利が65%、百度が35%の株式を保有する形へと変更されることに。

そして2023年には初のSUV「ジーユエ01」を発売するものの販売成績は芳しくなく、今年9月に2車種目となるセダン「ジーユエ07」を発売することで一時的に販売台数が増加し、しかし11月末までの累計販売台数は13,834台にとどまって期待を大きく下回っていたというのが現状です。

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Image:JiYue

その後11月には人工知能搭載のハイパーカー「ロボX」を発表し新しい方向性を示したものの、12月10日には極越の解散が近いとの噂がSNSで広まり、しかし従業員たちはレイオフ(解雇)が行われることで会社が維持されると考えていたものの、12月12日には正式に会社が解散されるという発表がなされています。

なお、その前日の12月11日、CEOの夏一平氏はビデオ会議にて、「極越は困難に直面しており、重複する部門の統合や効率改善、短期的に収益を上げられないプロジェクトの削減が必要だ」と述べ、しかし、夏氏が退職手当(N+1補償)について詳しく言及しなかったこと、社会保険料の支払いができないことを認めたため従業員は激怒し、抗議として会社のオフィス機器を持ち去る事態に発展して現在に至ると報じられています。

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Image:JiYue

極越の破綻は様々な理由から

極越の財務問題は、不適切な管理や不正行為の疑いによってさらに悪化したと見られ、今年秋には財務責任者(CFO)の劉金寧氏が会社の財務記録とともに失踪したというスキャンダルも報じられており(彼とその家族はシンガポールに逃亡したと見られ、IPアドレスからその所在地が確認されている)、2024年10月に百度が30億元(約412億円)の追加投資を行う前に財務監査を実施したところ、その結果として70億元(約962億円)にのぼる不明金が発覚し、投資を取りやめたという報道も。

さらには夏CEOがサプライヤーに対して過剰な支払いを行ったとの噂も浮上していますが、極越本社には未払い債権を抱えるサプライヤーが押しかけており、主にソーシャルメディア関連の契約企業がその対象となっているとされ、これに加えて車両部品の70%を供給する吉利は今年2月の時点で極越に15億元(約206億円)の未払い債務があると報告しており、11月には車両の生産を停止するに至っています。

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驚くべきことに、(これも好調から一転し危機に陥ったとされる)HiPhiのプロジェクトエンジニアリングディレクターだった楊岳清氏が数日前にソーシャルメディアに登場して極越の従業員に対し「すぐに退職するよう」促したことも明らかになっており、楊氏はここで「待てば待つほど就職先の競争が激化する」と警告し、さらに、極越車のオーナーに対しても「できるだけ早くクルマを売却すべきだ」というアドバイスを送ることに。

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また、極越車オーナーのブロガー「賈工」氏もオーナーに対して警告を発し、極越の倒産によってネットワークサポートが停止されると、クルマのインテリジェントドライビングシステムはレーンキープ機能のみになると説明し、さらに、携帯電話のBluetoothアプリで車のドアを解錠できなくなる可能性があるため、NFCやUWBキー機能を今のうちに使うよう勧めていますが、「コネクテッドカー」メーカーが倒産すると実に多方面にわたり問題が生じるということを改めて痛感させられます。

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