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ポルシェが描く新しい夢:「Start-up Your Dream」が示す企業イノベーションと社会貢献のフロンティアとは

ポルシェが描く新しい夢:「Start-up Your Dream」が示す企業イノベーションと社会貢献のフロンティアとは

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| ポルシェは「社会貢献」「多角化」に注力している |

企業哲学を具現化する新イニシアチブ「Start-up Your Dream」

ポルシェは、単に高性能なスポーツカーを製造するだけでなく、社会における「責任あるパートナー」としての役割を重視しています。

実際に「女性の権利向上」「学習機会の提供」といったプログラム等を展開していますが、もう一つポルシェが重視しているのが「多角化」。

その理由としては、ポルシェは将来「自動車の製造販売だけでは会社を維持できなくなる」と考えているからで、そのために様々な企業を買収したりベンチャーを立ち上げたり、起業家を支援したり(出資したり)しているわけですね。※それらによって、直接的・間接的、そして将来の利益につなげようという意図がある。リマックへの出資もその側面が強いのだと思われる

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ポルシェ「将来は自動車を売るだけでは生き残れない。新たなビジネス、投資先を見つけなければ会社が成り立たない」

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ポルシェがあたらしい「フラッグシッププロジェクト」をスタート

この企業哲学を具体化する新たなフラッグシッププロジェクトとして開始されたのが「スタートアップ支援プログラム」、”Start-up Your Dream”。※ポルシェは「Dream」という言葉をこの数年で頻繁に使用するようになった

このイニシアチブの核心は、単なる慈善活動に留まらず、「卓越したイノベーションを通じて、世界の人々の生活と労働環境を改善する」という明確な目標を持つ若き企業を総合的にバックアップすることにあるといい、特に、気候変動、統合、教育に関連する課題解決を目指す起業家や、グローバル・サウス(Global South)と呼ばれる地域での機会創出を志す企業に焦点を当てています。

「ポルシェは70年以上にわたり、顧客の夢を叶えてきた。このイニシアチブを通じて、イノベーションを駆使して人々の生活を向上させようとする新しい企業の市場機会を増やしたい」

ポルシェAG 取締役会会長 Dr. オリバー・ブルーメ 

第一弾:シンガポール発「Atera Water」が挑む水危機

「Start-up Your Dream」の記念すべき第一号として支援対象に選ばれたのは、シンガポールを拠点とするスタートアップAtera Water

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2021年に設立され、南洋理工大学(NTU)と共同で技術開発を進める同社の創設者、Tai Kee氏とDr. Adrian Yeo氏は、持続可能かつ経済的に実行可能な高度な水処理技術を通じ、クリーンな水へのアクセスを一変させることを目指しています。

彼らが開発する革新的なろ過システムは、水が不足している地域や、深刻な環境汚染にさらされている飲料水の問題を抱える地域での展開を想定しており、まずは東南アジアでの技術導入を計画中。

この技術の特筆すべき点は、化学物質の使用を最小限に抑えつつ、高い費用対効果とエネルギー効率を両立させている点にありますが、これは、単なる「水を提供する」という支援ではなく、「持続的なインフラと技術を提供する」という、より本質的なアプローチであり、社会貢献におけるインパクトの最大化を目指すポルシェの狙いと完全に一致しています。

プログラムの戦略的な4本柱:成功へのロードマップ

ポルシェがこのイニシアチブで提供するのは資金だけではなく、支援の範囲はスタートアップの成長に不可欠な戦略的な4つの柱に基づいていて、個々のニーズに合わせてカスタマイズされることになり、今回の例だと以下の通り。

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  1. 教育(Education): Atera Waterの創設者は、ケンブリッジ大学での起業家向けトレーニングプログラムや、シンガポールでの集中的なトレーニングウィークに参加し、企業成長に必要なビジネススキルと知識を習得する
  2. ネットワーキング(Networking): シリコンバレーを拠点とする世界的なVC(ベンチャーキャピタル)でありアクセラレーターのPlug and Playと連携。広範なグローバルネットワークへのアクセスを提供し、事業拡大の機会を創出する
  3. メンタリング(Mentoring): ポルシェ本社ツッフェンハウゼンへの訪問では、経営委員会メンバーへのビジネスモデルのプレゼンテーションや、サステナビリティ評議会との議論を実施。ポルシェの専門家との対話を通じた、具体的な経営指導と助言を得ることが可能に
  4. 資金提供(Financing): プログラムの成果に基づき、開発・成長資金が提供される

特に、オリバー・ブルーメ氏が言及したように、彼らを「専門家と繋ぎ、特に困難な立ち上げフェーズをサポートする」というアプローチは、革新的な技術を持つ企業が直面する「製品化と市場投入の壁」を突破させるための、極めて実践的な戦略だと捉えられています。

企業戦略としてのサステナビリティ:ポルシェの目指す社会

この「Start-up Your Dream」は、ポルシェのサステナビリティ戦略における重要な分野「Partner to Society(社会へのパートナー)」の一環だとされ、ポルシェは、単に利益を追求するだけでなく、環境保全、良好な労働・生活条件の保証、そして社会的結束の強化を目指し、様々なイニシアチブやCSR活動を展開しています。

この活動のモットーは「Creating Chances(機会の創出)」であり、人々が自分自身の生活環境や労働環境で自立(セルフヘルプ)できるよう力を与え、個々の夢の実現を支援することに焦点を当てるもの。

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そして今回の「Start-up Your Dream」は、この戦略を体現するものであり、ポルシェというグローバル企業が、そのブランド力、経営資源、そしてネットワークを活用し、地球規模の課題解決にコミットする現代的な社会貢献の形を示しています。

このプログラムが、Atera Waterのような先駆的な企業をどこまで成長させ、そして今後、どのような革新的なスタートアップを支援していくのか、その展開は「責任ある企業」の新たな指標として大いに注目され、この動きに追随する他の自動車メーカーが出てくるのかもしれませんね(現在、様々な自動車メーカーが様々な形で社会への貢献を行っている)。

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参照:Porsche

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