| ポルシェ718ケイマンの納車から1月が経過。どういったクルマなの? |
さて、ポルシェ718ケイマンの納車から1ヶ月が経過。
コーティングなどで預けた期間を除くとほぼ毎日乗っており、現在の走行距離は約1500キロ。
ここで、現在の印象をまとめてみたいと思います。
なお、納車直後の外装に関する印象はこちら。
インテリアの関するものはこちらですが、今回は別に「実際に使ってみた」インプレッションを述べてみたいと思います。
納車1月目におけるポルシェ718の印象はこんな感じ
ぼくの行き先はある程度固定されており、718ケイマンについては、これまで乗ってきたクルマと同じように使用中。
よって、可能な場合はこれまでもクルマとの比較も追い追い述べてみたいと思いますが、まずは今のところ抱いている印象はこういったものとなっています。
車内がっけこう熱くなる
これはミドシップである以上、程度の差こそあれど覚悟すべきことではありますが、これまで乗ってきたポルシェのミドシップカー(986ボクスターS、981ボクスター)に比較しても熱い(暑い)ということ。
ポルシェは元来各部の回転抵抗が少なく、よって回転系の発する熱が他のメーカーの車に比較すると小さい(精度が高い)と認識していて、加えて冷却性能の高さもあって(なんといっても空冷でなんとかハイパワーエンジンを冷やしてきた歴史がある)車内に入る熱が小さく、そこがポルシェの「すごいところ」の一つであるとぼくは考えているのですね。
ただ、今回の718ケイマンにおける熱は、あちこち車内を触ってみると「エンジン」に起因している模様。
つまり背後のエンジンを隔てるリアバルクヘッドが熱いということですが、718ケイマンのエンジンは2リッター、そしてこれまでに乗ってきた986ボクスターSは3.2リッター、981ボクスターは2.7リッターなので718ケイマンの方が排気量が小さく、しかし最大の相違は「ターボの有無」。
718ケイマンはターボエンジンを採用しており、この発熱量が大きいんじゃないか、ということが考えられます。
もちろん湯温や水温は安定しているので、エンジンそのものの冷却は問題ないのですが、おそらくはその輻射熱が大きいようですね。
718ボクスター/ケイマンに搭載されるエンジン構造を見ると、たしかにターボは「前」つまり室内側に設置されており、この熱が伝わっているの可能性が大。
実際は気になるほど「熱い」というわけではないのですが、春や秋のように、「エアコンを入れなくても済むような快適な外気温」の日であっても、エアコン(クーラー)を入れないと車内が暑くなる、といったデメリットはあるようです。
現行世代の718ケイマンはポルシェにとって初のミドシップターボ市販車なので、こういった現象もまだ理解はでき、今後は代を重ねるごとに改良されることになるのでしょうね。
ちなみに、これまでのボクスター/ケイマンだと、車体右側(ボディサイド)のダクトは排熱、左側は吸気という構成で、そのため駐車後に施錠しても(排熱のため)右側のダクト内にあるファンが勝手に作動して「ブオォォォォ!」と熱風を吹き出していたのですが、718ケイマンでは「両方とも吸気」なのでそういったこともありません(つまりこれまでのボクスター/ケイマンとは排熱の方法が全く違う)。
981世代よりもスパルタン
718ケイマン/ボクスターのコードネームは「982」。
ここからもわかるとおり、981の発展型で、981をベースにエンジンをターボに置き換えた、ということになります。
ただ、実際は981と異なる部分が多く、そのひとつが「性格」。
718という、ポルシェ往年のレーシングカーの名が与えられていることでもわかるとおり、「より純度の高いスポーツカー」というキャラクターへと変化しているようですね。
今までもボクスター/ケイマンは十分に「スポーツ」していたものの、それまでポルシェ的には「純粋なスポーツカーは911」であって、「ボクスター/ケイマンはプロムナードカーだ」としてきており、911に比較するとマイルドな味付けがなされていたのも事実。
ただし911が全体的にグランツーリスモ的な性格を強めたことで(一方でGT系は突出したパフォーマンスを持つように)718はピュアスポーツとしての地位が名称変更とともに与えられたと考えていますが、一言でいうと、981世代はマイルド、982(718)世代はスパルタン。
これについても、別の機会にあらためて述べたいと思います。
意外と高いギアに入らない
これはPDKをオートで乗っている場合ですが、意外と常用域のエンジン回転数が「高く」、しかしフォルクスワーゲングループのクルマは燃費を稼ぐためにポンポンと低い回転数からシフトアップする傾向にあり、実際に981ボクスターも同様の(低回転でシフトアップ)傾向を持っていただけに、納車後かなり早い段階で気づいた事実でもあります。
おそらくですが、「どこからでも加速」できるよう、つまりターボエンジンという特性を活かすべく、常に十分な加給が得られるエンジン回転数を維持しているのでしょうね。
そのために「なかなかシフトアップせず」高い回転数で走ることになりますが、その甲斐あって「ちょっと踏むと」すぐに加給がかかり、他メーカーの小排気量ターボエンジンのような「ターボラグ」をまったく感じさせないセッティングとなっています。
コースティングで燃費を稼げない
ポルシェはちょっと前から「コースティング」を活用する傾向にあり、つまりアクセルを抜くとすぐにクラッチを切ってエンジンの回転数をアイドリングまで落とすことでガソリン消費量を抑える、という技術を使っていたわけですね。
これは現在のアウディでも同様で、アクセルを抜くと瞬時に「空走」状態に入ります。
ただ、718ケイマンの場合はこのコースティングが「ない」と言ってもいいようで、アクセルを抜いてもエンジン回転数が下がらず、回転数をほぼ維持したまま。
クラッチは切れているようですがエンジン回転数は落ちていないので、エンジンに燃料を噴射し続けている模様。
なぜか?
おそらくですが、これもターボラグ解消のためと考えられ、エンジン回転数を維持しておくことで鋭い再加速が可能になる、ということですね。
なお、VTG(可変タービンブレード)を採用する718ケイマン「S」だとこの傾向は顕著ではないので、718ケイマン/ボクスター特有の傾向かもしれません(同様にターボ化された911でも感じなかった)。
つまりポルシェは(当然なのですが)モデルごとに最適な加速を得られるようにセッティングを変えており、グレードの違いは単にパワーの多寡ではない、ということですね。
これによって718ケイマンは(”S”に比較して)「ライトウエイトスポーツ」のようなフィーリングを持つに至っていますが、それにあわせてやや足回りも「直接的」なセッティングがなされているようです。
反面、718ケイマン”S”はスーパースポーツにも近い懐の深さ、湧き上がるようなパワーを感じさせる設定に。
ただ、これによって718ケイマンは「燃費が悪化」していると考えられ、981ボクスターに比較してもやや悪い数字(今のところ)。
ポルシェは「燃費向上のないパワーアップはしない」はずじゃなかったのか、と突っ込みたくなる気持ちもありますが、これはこれで、運動性能を担保するには仕方がないのかもしれません。
ときどき、アウディのように「再加速に時間がかかってもいいから、燃費重視のモード(クラッチを切るとエンジンへの燃料噴射が最小限になる)があってもいいのでは」と思うこともありますが、そうすると「ポルシェがポルシェではなくなる」からやっぱりいらないか、と考えたりして、なかなか難しいところではありますね。