| 利益を確保することを考慮すれば、中国生産は免れることができない |
さて、先日マレーシアに工場を建設すると報じられたポルシェ。
今回はポルシェCEO、オリバー・ブルーメ氏が「我々は”メイド・イン・ジャーマニー”にこだわり、中国には工場を建設しない」とコメント。
発言の流れを見るに、現在のポルシェにとって中国が最大の市場となっており、中国での生産を行う予定はあるかという質問に答えたものだと思われます。
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中国はポルシェにとってのナンバーワン市場
ポルシェは2020年に272,162台を販売していますが、そのうち88,968台が中国にて。
そしてよく報じられるように、現在中国の消費市場は強い回復力を見せており、2021年にはさらに「中国での販売台数、構成比率とも」上昇するものと思われます。
そうなるとやはり「中国で売るものは中国で生産したほうがいい」となるのは当然のことで、というのも中国は人件費が安く、かつ欧州で製造して中国へと輸送している(現在の)コストもかなり節約できるから。
ただし今回ポルシェは「NO」という回答を行ったことになり、その理由としては「品質とプレミアム性の維持」。
ひとびとは「ドイツ生産」を求めている
つまり中国で生産すればプレミアム性と品質を維持できないということになりますが、これは中国を悪く捉えているというよりは、「中国市場の要望」だと考えたほうが良さそう。
ぼくら日本人からすると「中国製」というと品質に劣るという印象があるものの、実のところぼくらよりも強くそれを感じているのが中国人。
「中国や、中国製をいちばん信用していないのは中国人」という事実がここにあるわけですが、BMWやメルセデス・ベンツ、アウディ等のプレミアムカーメーカーが続々中国生産へとシフトしてゆく中、現地の人々(特に富裕層)は「高いお金を払ってでも(輸入車は関税が高いことを承知で)本国生産のクルマが欲しい」と嘆いたと言われます。
なお、中国人の(日本における)爆買いも似たようなもので、結局家電などは「中国製」であるのに、中国の人たちからすると「同じ中国製でも、日本で売られているものは品質が高く、中国で販売されているものは品質が悪い」という判断から、わざわざ中国製の家電を買って帰るわけですね。
そういった人々の行動を見るに、「中国産のポルシェ」は受け入れがたいシロモノなのだと思われ、オリバー・ブルーメCEOの判断は「中国市場の心情」を考慮したのだと思われます。
ただ、ここ最近のスマートフォンでもわかるとおり、中国製品の品質も徐々に高くなり、中国においても若い世代の間では「中国製品を偏見なく受け止める」傾向も強くなっていると言われるので、時間が経過すれば、ポルシェもまた中国工場の建設を考えるのかもしれません。
実際のところ、オリバー・ブルーメCEOも「今は」中国に工場を作らないと前置きしており、しかし「この(中国が販売の重きを占めるという)状況が続くのであれば、そうだな、あと10年後くらいには中国にて工場を作ることになるかもしれない」と語っています。
ポルシェはかつて中国生産を検討していた
なお、ポルシェは2000年代はじめに「中国に工場を建設する」というウワサがあり、これはもちろん当時頭角を現してきた中国市場を重視するという意図から。
実際のところ、このプランについてはかなり真剣に検討されたものの、最終的には品質的な要件を満たせないと判断し、ポルシェは自社の納得できる品質を維持するために「ドイツでの生産にこだわる」方針を固め、現在ではライプツィヒ、そして新設されたツッフェンハウゼン工場にて車体を組み立てることとなっています。
ただ、ポルシェは今後「エレクトリック、そして自動運転」が進めば、今までのような台数は出ないだろうという予測も行っており、そういった状況の中でいかに利益を生み出すかを考えると、「中国で生産してコストを下げる」こと、そして中国生産のポルシェを中国で売ることがその最良の策なのだと思われます(仮に販売台数が同じだとしても、そうしたほうが圧倒的に利益が残る)。
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参照: Financial Times