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リコールばかりが報道されるテスラだが、アメリカの中ではもっともリコールが少なく、件数ベースではフォードの1/9だった。しかも多くがオンラインによるアップデートで改善

2022/03/05

テスラ・モデル3

| たしかにテスラの販売台数はフォードほどではないが、それでもリコールが少ないことは間違いない |

おまけにテスラの「オンラインアップデート」は他社も続々取り入れている

さて、ここ最近なにかとテスラの「リコール」について報じられ、あたかもテスラのクルマに大きな問題があるかのように言われていますが、実はそうではなかったということが明らかに。

これはロイターが調査を行ったもので、その結果を見ると(2020年1月から2022年2月の間では)テスラのリコールは最も少なく、数値的にはフォードの1/9にとどまっています。

なお、ここでもうひとつ特筆すべきは、テスラのリコールへの対応につき、「オンラインアップデートで改善する案件」が多いこと。

具体的には、フォードのリコールは100件あり、そのうちオンラインアップデートにて対応できたものはゼロ、しかしテスラは19件のリコールのうち7件をオンラインアップデートにて改善しています。

tesla-recalls-vs-rivals

オンラインアップデートの有効性は多くの自動車メーカーが認める

このオンラインアップデートは文字どおり「オンラインにて」問題箇所を修正するもので、まずはクルマが常時オンラインとなっていることが前提ですが、さらには車体全体が電子的に制御されている必要もあるわけですね。

よって「オンラインにすれば」既存のクルマでもオンラインアップデートにて問題を修正できるわけではなく、これが可能なのは「走るコンピューター」と言われるテスラだからこそだと考えることも可能です(そもそもオンラインアップデートを前提に設計されている必要がある)。

そしてもちろんオンラインアップデートで問題を修正することで、その修理コストも最小化できるということになり、よって最近発表されるEVの多くは「オンラインアップデート対応」といった仕様を持っています。

一方で安易なオンラインアップデートには危険性も

ただ、一方ではこれが「万能」というわけではなく、ソフトウエアの修正では対応できない物理的な故障に対してはなすすべもなく、そしてロイターいわく「そもそも、そのアップデート用データに問題がある場合」。

最近だと、リコールではなく通常の「アップデート(オーバー・ザ・エアアップデート=OTA)」にて、テスラ各車に「ローリングストップ」機能が実装されており、これは「一旦停止が必要な場所にて、完全に停止せず、ギリギリまで速度を落として通過する」というもの。

これは「実際の人間が運転している状態に近い」クルマの行動を実現したもので、渋滞緩和に役立つといえば役立つのですが、はっきりいうと「これは違法」。

よってアップデート後には(さらなるアップデートで)この機能を使用できなくなるようにしなくてはならなくなるという事態も発生し、こうなると「オンラインアップデートも考えもの」というワケですね。

テスラ・モデルS

実際のところ、テスラの前検証マネージャーは「早く修正できるのであれば、リスクの高い方法を取る」という考え方があるのも確かだといい、これはテスラの「(ギャランティー型ではなく)ベストエフォート型」を端的に表すところかもしれません。

加えてロイターは、アメリカの規制当局に「ソフトウェアの懸念に対処したり、検証や取り締まりを行う体制がまだ整っていない」ことも問題であり、物理的・機械的にそれに問題があるかどうかを判断できる人材はいても、そのソフトウエアが正しいかどうかを判断できる人材が揃っていないという現実を指摘しています。

これが上述のローリングストップ、そして「走行中にもゲームができてしまう」ようになるアップデート、そのほかブームボックスなどの機能追加がなされ、しかしすぐ後にユーザーからの通報によって当局から修正を命じられてしまうという事態につながっているものと思われます。

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テスラは「失敗してナンボ」

なお、テスラCEO、イーロン・マスク氏は常々「失敗していないなら、十分に革新していない」というモットーを掲げており、そのモットーを全社的に貫くテスラにとっては、「失敗」もつきものであり、要は失敗を恐れないわけですね。

ただ、もし失敗したときには、自動車だけに「PCやゲーム機のソフトがバグる」のとは次元が異なるほどの被害を出してしまうとも懸念されており、今後はこういった懸念に対する対策が設けられることになるのだと思われます。

たしかにこういった懸念も「もっとも」ではありますが、失敗を恐れて先に進めないことも懸念されるべき事項でもあり、このバランスが難しいということになりそうですね。

一方でテスラは「現実」も見ている

参考までにですが、現在アメリカではルシード、そしてリヴィアンといったライバルが実際に製品を市場に投入しており、とくにルシードについては最大航続距離が837kmというロングレンジっぷりが話題に。

対するテスラの最大航続可能距離は652kmなので、けっこうな差があるということになりますが、つい最近、イーロン・マスクCEOは「テスラはそういった長い走行距離を持つクルマを発売しないのか」というファンの問に対し「すでに1年ほど前には、それを可能とする技術を確立していたが、実際に航続距離が長いのがいい製品であるとは限らない」とコメント。

その内容としては、現在の652kmでも十分に長い航続距離であり、しかしさらに長い航続距離を実現しようとなると「さらに高価で、重くなり、ハンドリングや運動性能にも影響を及ぼすため、必要ないという判断を下した」というものです。

こういったコメントを見ると、イーロン・マスクCEOは、「なんでもかんでも他がやっていないことをやるのが革新である」とは考えておらず、必要とされる、もしくはいま現在必要性を認識していなくても、目の前に出されると欲しくなるような機能こそが必要だと捉えている(つまりはかなり現実的)のかもしれません。

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