| 値下げ幅はテスラとほぼ同じ、1月初旬に失った販売をこれで取り返すことができるか |
需要が減っているのはテスラのみではなく、多くのEVメーカーにとってもそれは同じであるようだ
さて、テスラは日本、アメリカ、中国ほかで大幅値下げを行い、アメリカと中国では「過去に例を見ないほどの受注」を記録していると報じられていますが(日本では値下げそのものがあまり報じられておらず、関心は薄いようだ)、予想されたとおりにテスラに追随するEVメーカーが登場しています。
今回報じられたのはBYD、NIO同様に現地で非常に人気のあるシャオペン(Xpeng)で、やはり10%前後の大幅値下げとなっているようですね。
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シャオペンが値下げに耐えうる利益率を持っているのかはわからない
今回報じられた内容だと、エントリーレベルのSUVであるXpeng G3iのスタート価格が168,900元から148,900元に引き下げられたことが明らかになっており、P7セダンの価格は12.5%安くなって20万9900元へ、しかし発売されたばかりのXpeng G9は値下げされずに「価格据え置き」。
今回のプライスダウンにつき、シャオペンの広報担当者は「より競争力のある価格で、より多くの人がインテリジェントな自動車にアクセスできるようにしたい」と述べており、テスラのような「値下げ後の暴動」が起きないようにするためか(キャッシュバックはなく)メンテナンスサービスの無料延長によって補填される予定だとアナウンスされています。
この値下げは、Teslaが1月6日から現地でModel 3とModel Yの価格を6〜13.5%引き下げた直後に行われたもので、多くのアナリストは、需要の低迷と競争の激化に対抗するために行われたと見ており、China Merchants Bank International(CMBI)がまとめた最近のデータでは、こうした値下げがすでに新規販売を促していることが明らかになっているため、シャオペンの販売もこれによって活性化するのは間違いなさそう。
なお、値下げ直後の1月9日〜1月15日の1週間におけるテスラの販売は12,654台となり、これは前年同期比で1日あたり76%の大幅増。
同じ期間における中国国内の自動車販売台数は全体で14.5%マイナスであり、テスラのライバルと目されているシャオペンの販売は36%減少したと報じられていることを見るに中国の市況は全般的に良くはなく、その中でのテスラの販売増は「値下げによる効果」だと判断していいのかも。
値下げは「諸刃の刃」
テスラの例を見ると「値下げによる販売増」が期待できるのは間違いなく、しかし当然ながら値下げは大きく利益を削ることになるため、これはある意味「諸刃の刃」。
ちなみにですが、全世界のEVの1/3は中国で製造され、中国における新車販売のうち20%はEVとなっているそうですが、このEVブームの牽引役はシャオペン(Xpeng)、リー・オート(Li Auto)、ニオ(Nio)。
シャオペンだと2022年第2四半期の販売台数は98%増の34,422台、リー・オートは63%増の28,687台、ニオだと14%増の25,059台といった具合にそれぞれ急成長していますが、販売によって利益が出ているかというとそうではなく、シャオペンの第2四半期における純損失は126%増の27億元、ニオは370%増の28億元、リー・オートの純損失は172%増の6億4100万元だと報じられ、現在唯一利益が出ている中国の主要EVメーカーはBYDのみだとされているので、シャオペンが今回の値下げによってさらに赤字を拡大させてしまう可能性もあるわけですね。
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参考までにですが、BYDの利益のうち多くを占めるのは「マスク」だといい(たしかにBYDの日本向け公式サイトにもマスクのコンテンツがある)、もしかするとEV部門単体で見ればBYDも「赤字」なのかもしれません。
EV製造はご存知のとおり非常にコストがかかるもので、一定の生産規模に達しないとなかなか黒字転換することはできず(最初から黒字になるような価格設定だと、とうてい売れないような車両価格になるので、はじめのうちは赤字覚悟で販売するよりもほかはない)、テスラが黒字転換したのも、販売台数が伸びたここ数年内であり、しかし今中国の自動車メーカーが「価格競争」に巻き込まれてしまうと、黒字転換する前に危機を迎える可能性があるんじゃないかとも考えています。
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参照:Reuters