| EVが登場した初期、「EVといえばワンペダル走行」が常識だったが |
いつの間にかワンペダル走行が全面に押し出されることもなくなった
さて、日産リーフ然り、BMW i3しかり、EVが登場したての頃にその特徴として掲げられたのが「ワンペダルドライブ」。
これはアクセルペダルを踏むと加速し、ペダルから足を離すと回生による減速が生じてブレーキが掛かったのと同じ状態になり、うまくコントロールすればそのまま停止まで持って行けるもので、つまりブレーキペダルを踏まなくてもいいので「ワンペダル」というわけですね。
ただ、これはガソリン車からの乗り換えだとかなり違和感があるもので、たとえEVに慣れていたとしても、なにかの拍子に急にアクセルペダルを離してしまうとクルマの挙動が不安定になり、凍結路や濡れた鉄板の上などの低ミュー路だとスリップに繋がることもあって、ある意味では危険性を含んでいたと認識しています。
そういったこともあってか、そしてEVであってもガソリン車と同じように運転したいという消費者の声が多かったのか、最近のEVでは回生ブレーキの効きを調整できるようになったり、そもそもワンペダルという言葉すらも聞かなくなっています。
ポルシェも「ワンペダル」に異議を唱える
そして今回、このワンペダルに異論を唱えたのが我らがポルシェ。
ポルシェはタイカンを製造し、ゼロエミッションモデルを多数開発していますが、このワンペダルについては「長期的にはあまり効率的ではない」と主張し、電気自動車でさらに距離を伸ばすためのより良い方法があると述べています。
そしてポルシェの主張する「よりよい方法」が慣性で走行するというコースティング。
コースティング時には車輪とエレクトリックモーターとを切り離すことで抵抗を減らし、ほとんどエネルギーを使わずに走行するという「回生ブレーキ」とは全く逆の考え方であり、ポルシェいわく、これが「動力を使わずにクルマを走らせ続ける、より自然なプロセスである」。
ポルシェエンジニアリングのシャシーテストシニアマネージャー、マーティン・ライヒェンエッカー氏は最近発行されたプレスリリースにおいて、「これは運動エネルギーを車両内に保持するため、より効率的な運転方法です」とコメント。
ポルシェは従来の主流だったワンペダルドライビングについて、まずは回生によって充電し、充電したエネルギーを再び推進力に変換することに触れ、「その結果、損失は2倍になります」と付け加えています。
このアプローチはポルシェのポートフォリオにはっきりと表れており、タイカンもこれを使用しておらず、マカンEVもワンペダル走行を採用していないといいますが、ポルシェは、このコースティングによってゼロエミッションモデルの走行特性が内燃機関搭載車に近づく(つまり、ガソリン車と同じ感覚にて走行できる)と指摘しているわけですね。
ただしポルシェは回生ブレーキを使用しないわけではない
しかしながらこれは「ポルシェが回生ブレーキを使用しない」ということではなく、ポルシェは回生ブレーキを「通常の摩擦ブレーキのかわりに」使用していて、走行中に使用するブレーキの90%を回生ブレーキにて賄っており、摩擦ブレーキが使用されるのは主に時速5キロ以下、もしくは超高速域や急ブレーキなど「モーターのみで減速できない」場合のみに限られます。
よってポルシェは回生ブレーキを否定しているわけではなく、「アクセルペダルを戻した際、勝手にブレーキがかかる」ことに対して否定的だということになりそうですね。
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そしてタイカンに備わる回生ブレーキであれば、高速走行時の減速だと「わずか2秒の減速で、700メートルの走行をまかなえる」ぶんの発電を行えるといい、これはかなり優秀なシステムだと言えるのかもしれません。
そしてポルシェはこのシステムにおけるメリットをもうひとつ掲げており、それは「ブレーキパッドの摩耗が少ない」こと。
通常の走行の90%を回生ブレーキにてカバーするということは、摩擦ブレーキを10%使用しないということになり、ガソリン車に比較すると「10倍くらいブレーキパッドが長持ちする」と考えてよく、当然ながらそのぶんコストが安く済むということになりますね。
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参照:InsideEVs