| この統計結果はいくつかの懸念、そして課題を示唆している |
新興EVメーカーにとってはブランド認知度に関する問題、そして既存自動車メーカーにとってもEVへの理解度といった課題が残る
さて、現在多くの国では「電気自動車シフト」を強力に推進しているところではありますが、統計によれば「電気自動車(EV)の購入者は、男女で大きく偏りがある」もよう。
今の時代、「男女」というくくりはナンセンスではあるものの、しかし統計上では明確にその差が出ていて、結論から言うと「EVの購入者は男性に偏っている」のだそう。
この統計は米S&Pグローバル・モビリティ(S&P Global Mobility)が集計したもので、米国市場で販売されている4大EV新興企業の新車登録における女性比率は以下の通りです(EV業界平均は28.0%)
EVブランドにおける女性購入者の割合
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テスラ ・・・33.1%
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ポールスター ・・・24.7%
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ルシード ・・・19.5%
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リビアン ・・・14.5%
一方、すべての自動車における女性購入比率は41.2%
こういった統計がある一方で、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車までをも含む新車の購入者における女性ユーザー比率は平均で41.2%だといい、しかしEVのみに絞ると平均値はわずか28.0%で、もっとも多様化が進んでいるテスラであっても33.1%にとどまります。
なお、この「4大新興EVメーカー」のボトムであるリビアンよりも女性ユーザー比率が少ないのは「ブガッティやマクラーレンといったエキゾチックなスーパーカー/ハイパーカーメーカー」のみだというので、いかにリビアン含む新興EVメーカーの女性購入比率が低いかということがわかろうというものですね。
さらにいうならば、EV平均「28.0%」は、「マッチョでワーク志向」というイメージのあるピックアップトラックをラインアップの中心とするラムやGMCと同じくらいだそうなので、現在のEV市場は男性を中心に形成されていると考えていいのかも。
リビアンは現在エレクトリックトラック「R1T」を発売していますが、これはピックアップトラックといえども柔らかいラインを採用しており、発売時には「サイバートラックのような無骨なデザインを嫌う女性向け」としていたものの、結果的にはあまり女性に支持されていないということがその数字からも明確になっています。※ただ、SUVボディのR1Sのデリバリーが始まれば、女性ユーザーも増えるかもしれない
参考までに、テスラでもっとも女性購入者比率が高いのはモデルYの35%だそうで、そしてモデルYはテスラの再量販車種でもあるために「テスラ全体での女性客比率」が高くなっているとも考えられます。
もうひとつ参考までに、ルシード(ルーシッド)はセダンのみ、ポールスターは2ドアクーペと4ドアセダンのみという構成です(つい最近、SUVが発表された)。
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新興EVメーカーは「女性へのアピール」という点で課題を抱える
こういった数値を見るに、新興EVメーカーは「女性客に弱い」ということがわかりますが、S&Pグローバル・モビリティのコンサルティング部門にてアソシエイト・ディレクターを務めるシェリル・ウッドワース氏は、「現在、多くの主流ブランドがEV戦略を採用しています。どのようにこれらのクルマを販売するのか?誰に焦点を当てるのか?もし女性バイヤーを獲得できなければ、新興EVメーカーは必要な販売台数を達成することはできないでしょう」とコメント。
もし、(フォードやフォルクスワーゲンなどの)既存自動車メーカーが「平均41.2%という女性ユーザー比率」を維持しながらEVを販売し、しかし新興EVメーカーの女性ユーザー比率が低いままであれば、新興EVメーカーは大きく勝機を逃しているということにもなり、今後販売を伸ばそうとするならば「女性客をいかに獲得してゆくか」が重要なファクターとなりそうですね。
ただ、今回明らかになった新興EVメーカーの女性ユーザー比率が低いということについては、大きく分けて2つの問題(というか仮説)があると考えられ、ひとつは「そもそも女性客が新興EVメーカーの存在を知らない」ということ。
テスラはまだしも、リビアンやルシードについては「なにそれ・・・」といった感じなのかもしれませんし、テスラの名を知っていたとしても、「どこで買えるのそれ」といった感覚なのかもしれません。
となると、新興EVメーカーはその存在を周知させるために最大限の努力を払わねばならず、かつ「いつでも購入しようと思った時に買えるよう」販売窓口を整備しておく必要もありそうです(多くの新興EVメーカーの購入方法はオンラインであるが、オンラインでクルマを購入することに対する不安や懸念を払拭しなければならない。その不安や懸念は品質やサービスなど多岐にわたる)。
でないと、既存自動車メーカーに対して新興EVメーカーが持つビハインドを撤回できず、最悪の場合は「EV市場の拡大から取り残される」ことになるかもしれません。
そしてもうひとつは「新興、既存とわず、女性がEVそのものを選んでないのでは」ということ。
これについては既存自動車メーカーの発売するEVの女性購入者比率を見てみないとナントモではありますが、S&Pグローバル・モビリティの最高多様性責任者、マーク・ブランド氏は「女性は、男性に比較して、EVの航続距離や安全性に対して不安を持つ傾向がある」ともコメントしており、既存自動車メーカー、新興EVメーカー問わず、EVの販売を行うに際し、利便性や安全性に関する啓蒙活動を行わねば、女性ユーザーを獲得することは難しいだろう、とも述べています。
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