| 日本では導入が予定される「サイバーセキュリティ規制」によって718ケイマン/ ボクスター(982)の継続販売が危ぶまれる |
おそらくポルシェは可能な限り内燃機関の寿命を引き伸ばすことを考えている
さて、ポルシェは現在マカンEV、718ケイマン/ ボクスターEV、カイエンEVの発売準備を進めており、マカンEV発売後にも(現行の)ガソリンエンジン搭載版マカンを(マカンEVと)併売すると言われていますが、少し前までの報道だと718ケイマン / ボクスターについてはEVとガソリンエンジン搭載モデルは「併売なしの切り替え」だと言われています。
ただ、今回報じられているのが「718ケイマン / ボクスターEV発売後もガソリンエンジン搭載モデルを併売する」というニュース。
エレクトリック版718ケイマン / ボクスターのコードネームは「983」
今回この件に言及したのはポルシェの研究開発責任者であるミヒャエル・シュタイナー博士。
同博士は「ただし市場次第です。原則的には、我々の戦略は(982と983の)両方をオーバーラップさせようとするものですが、現在のボクスターとケイマンについては、ヨーロッパの規制のためにそう長くは販売できないでしょうね」とコメント。※この話の内容からすると718ケイマンとボクスターのEVについてはコードネーム983となるようだ
ミヒャエル・シュタイナー博士は、欧州、日本、韓国の自動車に対して来年7月に導入される国連の新しいサイバーセキュリティ規制(UN-R155)についても言及し、「現行の982をこれらの規制に適合させるのはコストがかかりすぎるが、規制が適用されない他の地域では、983が登場しても982の販売を継続できる」とも。
なお、このサイバーセキュリティ規制につき、必要な対策は2つに分類され、ひとつは「サイバーセキュリティー管理システム(CSMS=Cyber Security Management System)を構築すること」、そしてもうひとつは「サイバーセキュリティー管理システムに沿ってサイバーセキュリティー対策を実装すること」。
これらの目的はもちろん「ハッキング対策」ですが、2022年7月以降に発売される一部の車両からこの規制が適用されることにり、ポルシェはこれに対応するためのコストをかけてまで、欧州、日本、韓国で718ケイマン / ボクスターのガソリン版を継続販売するつもりはないと考えているようですね。
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ポルシェはなぜ718ケイマン / ボクスターの「EVとガソリン」を併売することに?
なお、ポルシェが以前の計画を変更し「なぜ718ケイマン / ボクスターのEV版とガソリン版とを併売することにしたのか」についてはナゾであり、しかしぼくが思うに「EVはそれほど売れない」と判断し、ガソリンエンジン搭載モデルからEV版へと「切り替え」を行うこは危険だと判断したのだと思われます。
これは現在のタイカンの販売状況、親会社であるフォルクスワーゲン、同門のアウディにおけるEVの販売状況を(ポルシェが)見て「ガソリン版を販売終了としてEV版へと切り替えると、販売がガタ落ちになる可能性が高い」と考えたのかもしれません。
そしてもう一つの理由は「合成燃料(Eフューエル)の普及を待つ」というもので、718ケイマン / ボクスターのガソリン版を継続販売しているうちに(ポルシェの進める)合成燃料の実用化がなされ、これによって内燃機関を問題なく継続販売でき、顧客に対してより幅広い選択肢をもたせようと狙っているのかも。
なお、718ケイマン / ボクスターEVは2025年に発売される予定ですが、「まったくユニークなサウンドを奏でること」、「伝統的なミッドエンジン・スポーツカーと同じ挙動を持たせること」を念頭に開発が行われていると言われます。
そしてこの「ミドシップらしい挙動」を実現するためには「(EVでは一般的な)スケートボード型シャシー」ではなく、シートの後ろにバッテリーをつみあげるチェスト型」を採用するという報道も。
なお、ポルシェは2030年までに「エレクトリック:ガソリン」の比率を80:20にまで移行させる計画を持っていて、この時点でもポルシェ911は唯一の”電動化されない”ラインアップとして生き延びることが確定していますが、もしかすると先日、EUが「ユーロ7の規制内容を緩和したこと」「2035年のガソリン / ディーゼル車販売禁止を後ろ倒しにすると発表したこと」を受け、このポルシェの計画にも変更が生じ、より多くのガソリンエンジン搭載車が生き残ることになるのかもしれませんね。
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参照:CARBUZZ