
| SNSでの酷評をよそに、“ジャンボキドニー”は成功していた? |
グリルが大きい=売れてる?数字が語るBMWの現実
BMWの“キドニーグリル拡大路線”には、長年多くの批判が寄せられており、SNSでは「ウサギ(あるいはビーバー)の歯」「豚の鼻」「棺桶」と揶揄され、評論家からも酷評されているというのが現状です。
しかし、2025年上半期の北米市場での販売データを見る限り、BMWの主張「大型グリル搭載車が売れている」が正しかったことが裏付けられ、数値としてBMWの戦略の正当性が証明されるという状況に。
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4シリーズと7シリーズが堅調。数字が証明する“正解デザイン”
まず、2025年上半期にBMWが販売した4シリーズ(ガソリンモデル)は23,369台で、前年同期比+17.2%。
i4(EVモデル)も12,849台で前年比+10.2%という好調ぶりを見せ、さらにフラッグシップの7シリーズ(ガソリン)は5,707台で+11.1%と成長しており、「ビッグキドニーグリル=売れない」という定説が完全に覆った格好です。
唯一の例外はEV版7シリーズ、i7
一方で、(7シリーズのEV版である)i7の販売は1,708台と前年比-11%と減少。
これは大型グリルのせいではなく、EV市場全体の勢いがやや鈍化している影響とも考えられ、たとえば、iX(EV SUV)は6,742台と前年比+3.9%を記録しているものの、BMWのBEV全体ではQ2で-21.2%、上半期でも-0.7%減少しており、EVセグメント全体に課題があることがわかります。
i5は大幅減、しかし2シリーズ&X2は爆伸び
特に深刻なのがi5の販売で、Q2は前年比-43.4%、上半期では-30.3%という落ち込みを見せており、中型EVセダンは(ほかメーカーはもちろん、BMWにとっても)やはり難しい市場であることが明らかに。※ちなみにi5のグリルは大きくない
ただし、他モデルでは2シリーズが+51.3%増、X2が+107.8%増と大幅成長を記録しており、小型・スタイリッシュなモデルが人気を集めていることが分かりますね。
“問題児”XMはやはり苦戦、ラインアップも縮小へ
一方でBMWが「高性能SUVの象徴」として投入したXMは、やはり苦戦が続いており、上半期で-24.5%と大幅減。
現在ではハイパフォーマンス仕様1モデルのみに縮小されており、こちらは「段階的な廃止」に向かっているものと思われます。
結論:“キドニーグリル巨大化”は見た目以上に正解だった?
BMW全体の販売は上半期で178,499台、前年比+1.6%を記録しており、意外なことに(電動化モデル中心となり、価格帯がお幅にアップした)MINIも+19%と好調です。
つまり、デザイン批判が激しい一方で、大型グリルモデルこそが実は稼ぎ頭になっているという、皮肉な結果が数字から読み取れるわけですが、特に注目すべきは、登場から時間が経った4シリーズが依然好調であるという点。
これは「見慣れてきた」「むしろカッコいい」という意見が増えてきているという可能性を示唆しており、今後ますますBMWは勢いに乗ってくるのかもしれません。
この先、BMWは新世代EVプラットフォーム「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」でさらなるデザイン刷新を行う予定であり、このキドニーグリルは「より未来的」なデザインへと進化する予定ですが、これがは市場にどう受け入れられるのかについては疑問が残り(しかしジャンボキドニー同様に”売れる”であろう)次なるチャレンジに注目したいといったところですね。

BMWはなぜキドニーグリルを巨大化させたのか?
そこでBMWがなぜグリルを巨大化させたのかについて振り返って見たいと思いますが、一つの理由は「BMWは定期的にデザイン言語を入れ替えているから」。
これはかつて「金太郎飴」と呼ばれたラインアップとデザインからの反動であるとも考えられますが、BMWは各シリーズごとに「個性」を与え、それぞれのモデルを指名買いするだけの理由を与えています(5シリーズを買うお金がないから3シリーズを買う、というわけではなく、3シリーズがほしいから3シリーズを買う)。※そのため、より若い人々に向けた1シリーズ、2シリーズでは挑戦的なデザインを採用している
そしてこれまでにもBMWは「イカリング」「バングル・アス」など特徴なデザインを生み出していて、「デザイン言語を入れ替えることで老朽化した客層を入れ替える」ことを狙っており、これはかなり過激な戦略と言えるかもしれません(デザイン言語をほとんど変えず、変えるとしても緩やかに移行するメルセデス・ベンツとは対極的)。
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いずれにせよ「変わること」を重視しているのがBMWで、とくに「成功しているときほど変わる必要がある」とも語っていますが、グリルを巨大化させたのは「ルームミラーに映る姿にて印象を残したかった」とデザイナーが述べたことも。
あわせて、4シリーズや7シリーズという「ニッチなモデル」では挑戦を行い(つまりグリルが大きい)、ポピュラーな3シリーズや5シリーズでは標準的なグリルに留めるなど「モデルごとの戦略」も明確化しているので「けっこう緻密」に動作しているのがこの「キドニーグリル戦略」と言えそうです。
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