>マクラーレン(McLaren)

マクラーレンW1の革新的な空力:F1由来のグラウンドエフェクトとアクティブエアロが「ロードカーの常識を覆す」【動画】

マクラーレンW1の革新的な空力:F1由来のグラウンドエフェクトとアクティブエアロが「ロードカーの常識を覆す」【動画】

Image:McLaren

ロードカー空力の「限界を破る」マクラーレンW1

マクラーレン自ら「W1の画期的な空力システム」を語る

マクラーレンW1はロードカーの空力性能において「限界を破る」存在として登場していますが、W1にはマクラーレンと自動車業界にとって初の試みが多数盛り込まれており、これはマクラーレンいわく「先進空力設計者のロビン・アルグー氏とそのチームによって成し遂げられた成果。

W1最大の(空力面での)特徴は、マクラーレンMCL38フォーミュラ1カーのように、そのダウンフォースのほとんどをグラウンドエフェクトから生み出している点にありますが、当のロビン・アルグー氏いわく「これまで関わった中で最も困難なエンジニアリング作業だった」と述べています。

マクラーレンがW1に採用されるハイブリッドシステムの詳細を公開。「P1に比較し40%の軽量化と90%の出力向上、これだけでホットハッチ並みのパワーを発揮」
マクラーレンがW1に採用されるハイブリッドシステムの詳細を公開。「P1に比較し40%の軽量化と90%の出力向上、これだけでホットハッチ並みのパワーを発揮」

Image:McLaren | マクラーレンW1に採用されるハイブリッドシステムは「10年分の歳月による技術の進化、積み重ねたノウハウ」が反映されている | 「エンジン」と「ハイブリッド」を同時に設計 ...

続きを見る

F1からロードカーへ:ロビン・アルグーの挑戦

ロビン・アルグー氏は、2016年にマクラーレンに加わった人物で、その前にはフォーミュラ1の最前線で空力専門家として活躍していたといい、マクラーレンへの移籍後はセナ、セナGTR、そして最高速度403km/hを記録したスピードテールといったアルティメットシリーズの主要な空力特性開発を担当してきた人物です。

しかし、W1での彼の仕事は、これまでの全てを次のレベルへと引き上げるもので、Fスタイルのグラウンドエフェクトをロードカーに応用することは「途方もない挑戦だった」とも。

5

Image:McLaren

リアウィングに頼らない「ボトムアップ」アプローチ

ロビン・アルグー氏のチームは、マクラーレンW1のリアダウンフォースを生成するために、一般的な”高く設置されたリアウィング”に頼らないという画期的かつ大胆な決断を下すことに。

その代わりとしてW1を完全にグラウンドエフェクトカーとして設計する解決策が採用されることとなったわけですが、この全く新しいコンセプトは、マクラーレン独自のエアロセル・カーボンファイバーモノコックを中心に構築されており、このモノコックが車両のアンダーボディの空力を全てチャンネル化し、車体下部の高エネルギー気流を制御することで、Fレベルの空力制御を可能としています。※ブガッティ・トゥールビヨンと良く似た考え方であると思われる

1

Image:McLaren

【ブガッティ・トゥールビヨン】V16エンジンは空力を考慮し「斜めに」搭載、3DプリントとAIが生んだ究極のパッケージング
【ブガッティ・トゥールビヨン】V16エンジンは空力を考慮し「斜めに」搭載、3DプリントとAIが生んだ究極のパッケージング

Bugatti | エンジニアリングと哲学が融合した、ブガッティ・トゥールビヨンの「構造美」 | ブガッティほど「特殊」な設計を行うスポーツカーメーカーは他にない ブガッティ・トゥールビヨンはV16エ ...

続きを見る

ホイール周りの気流制御とアウトウォッシュ効果

ロビン・アルグー氏は、W1のボディが「フットボックスを高くし、ウエスト部分を狭め、ドアヒンジをルーフ上部に移動させる」ことによって彫刻的な形状を成していると説明していますが、この形状はけして見た目の良さを追求しただけのものではなく機能性を求めたがためのもので、W1のブレーキ冷却ダクトのように見える部分は、単にディスクとキャリパーの冷却以上の役割を果たすのだそう。

4

Image:McLaren

これらはエアロセルと連携し、タイヤ周りの空気を制御してダウンフォースを生成し、リアラジエーターとディフューザーにクリーンな空気を提供することとなりますが、アルグー氏は「空力専門家にとっての課題の一つは、ホイール周りの気流を管理することだ」と語っており、F1マシンのターニングベーン効果と同様に、エアロセルのおかげで車体下部にアウトウォッシュが生成され、ホイールの空力性能を新たなレベルへと押し上げています。

3

Image:McLaren

アクティブエアロで実現する究極のバランス

そしてW1のグラウンドエフェクトに加えてダウンフォースを最大化しているのが「リアウイングの位置」。

ウイングそのものが展開の際に「後方へ」移動するように設計されており、レースモードではリアウイングが300mm伸長することで「疑似的に車体を長く、つまりロングテール化」させることに。

これによってロードモード時の5倍ものダウンフォースを生み出すことが可能となり、アルグー氏はこの”アクティブロングテール”がディフューザーとアンダーボディの効力を20%増しにすると説明しています(つまり抵抗によってダウンフォースを得るのではなく、ロングテール化によってディフューザーの効果を最大化するのがこの伸長式ウイングの主目的だとも考えられ、一見するとスポイラー的な役割を果たしているように見えるものの、実際には異なる機能を持っている)。

2

Image:McLaren

なお、W1では「通常時」このウイングが格納され、つまりセナのような大きな固定式ウイングを持ちませんが、この代わりを務めるのが画期的なフロア構造やエアロダイナミクスであること、そしていざというときには後方へとせり出すリアウイングであることがわかったかと思います。

ただ、これらだけでは終わらないのがW1のW1たる所以であり、フロントにはエアロセルに加えてアクティブエアロが装着され、この大きな可動式の空力表面は車両フロア下の気流を調整し、トラック上での空力バランスを最適化するのだそう。

このフロントアクティブエアロは直線での完璧な安定性はもちろんのこと、ブレーキング時やコーナリング時にもその安定性を維持しることに貢献し、これにより、かつてないグリップ、バランス、そしてダウンフォースが実現されています。

F1とP1の伝説を受け継ぐ「1」の系譜

マクラーレンW1は、「リアルスーパーカー」として、F1とP1の革新とエンジニアリングの遺産を継承する存在で、1992年に誕生したマクラーレン初のロードカーであるF1、そしてその20年後に登場したP1に続く、伝説的な「1」の系譜の新たな章の主人公。

Original-16815-24-mclaren-f1p1-w1-profiles

Image:McLaren

マクラーレンW1の革新的な空力設計は、F1で培われたグラウンドエフェクト技術をロードカーへと昇華させ、これまでの常識を打ち破る性能を実現しており、ロビン・アルグー氏率いるチームの挑戦、そしてエアロセル、アクティブロングテール、フロントアクティブエアロといった技術の融合によってW1は比類なきグリップとバランス、そして圧倒的なダウンフォースをドライバーへと提供することに成功しています。

そしてW1は、マクラーレンの「1」の系譜を継承し、ロードカーの未来を切り拓く一台となることは間違いなく、新たな伝説を作る存在となりそうですね。

マクラーレンがW1ハイパーカーのエアロダイナミクスを解説する動画はこちら

合わせて読みたい、マクラーレンW1関連投稿

マクラーレン W1の革新的なインテリア:最適化されたコックピットが示すリアル・スーパーカーの未来。「こんなクルマをデザインできるチャンスはそうそうありません」
マクラーレン W1の革新的なインテリア:最適化されたコックピットが示すリアル・スーパーカーの未来。「こんなクルマをデザインできるチャンスはそうそうありません」

Image:McLaren | マクラーレンW1のインテリアは「快適性と視覚的広さを追求」 | インテリアには従来のイメージを一新させる「ニット」を使用 マクラーレンはその最新ハイパーカー「W1」に関 ...

続きを見る

【マクラーレンW1に採用】AI×3Dプリンティングで生まれた驚異の米国製サスペンションパーツは今後の”主流”となりうるか?【動画】
【マクラーレンW1に採用】AI×3Dプリンティングで生まれた驚異の米国製サスペンションパーツは今後の”主流”となりうるか?【動画】

| マクラーレンW1は「英国の誇り」、だが中身には“アメリカの技術力”も | マクラーレンが次期フラッグシップモデルとして開発中の「W1」。 英国を代表するスーパーカーとしての期待が高まる一方、その製 ...

続きを見る

米カーコレクターのガレージにマクラーレンW1が登場。自身の「F1」「P1」と比較しW1はどう違うのか?【動画】
米カーコレクターのガレージにマクラーレンW1が登場。自身の「F1」「P1」と比較しW1はどう違うのか?【動画】

| ジェイ・レノは実際に自身でマクラーレンW1を注文 | たしかにマクラーレンW1は現代最高水準の技術を詰め込んだハイパーカーではあるが さて、マクラーレンはここ最近、新型ハイパーカー「W1」に使用さ ...

続きを見る

参照:McLaren

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->マクラーレン(McLaren)
-, , , ,