
| シャオミの躍進はもはや「神話」とすら表現しても行き過ぎではない |
シャオミの急成長とEV事業参入
スマートフォンや家電で世界的な成功を収めたシャオミ。
近年では「未経験の」EV市場に参入し急成長を遂げていますが、初のEVセダン「SU7」に続いて新型SUV「YU7」も発表直後から大きな話題となり、わずか18時間で24万件もの予約を集めたのは記憶に新しいところです。
ただし、この急激な人気により納車待ちは1年以上に達するケースもあり、CEOの雷軍はSNSで「(シャオミのクルマを待つよりも)「他ブランドのクルマも検討してほしい」と呼びかけるほどの状況に。
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なぜシャオミはここまでの成功を収めることができたのか
シャオミのこの成功についてはいくつかの理由が挙げられますが、最も大きなものはその「ブランド力」。
すでに家電にて確固たる地位を築いており、中国では「シャオミ製品のない家庭はない」と言われるほどで、つまり人々はシャオミに慣れ親しみ、その製品には安心感を持っている、というわけですね。

Image:Xiaomi
そして中国の人々はEVを「自動車というよりも家電」として捉えていると言われるため、これまでシャオミが全く手掛けてこなかった自動車に対しても、何ら抵抗を感じずにすんなり受け入れることになったのだとも分析されています。
こういった市場環境に加え、シャオミ側も非常に緻密な戦略を練っており、まずはセダン「SU7」を導入していますが、このSU7にて「中国で最も人気があったハイパフォーマンスブランド」であるポルシェのEV、タイカンが持つ記録を次々更新し、さらにはニュルブルクリンクにおいても圧倒的なタイムを示すことでその優位性を強調。
そしてその後、「(中国市場では)1:3でセダンよりもよく売れる」SUV、YU7を投入することで実利を稼ぐことに成功しています(最初にSUVを投入していれば、SU7のような記録を示すことはできず、今のような成功はなかったのかもしれない。利益だけを考えてSUVを先に市場投入しなかったのはシャオミの英断である)。
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Image:Xiaomi
これに加え、グランツーリスモへの「中国車初」となる登場、フェラーリやポルシェ、ランボルギーニを連想させるパーソナリゼーションサービスの導入、そもそもの「ポルシェやフェラーリのような」スタイリングやサービスの導入など、消費者を他ブランドからうまく流入させ、顧客満足度を高めるための様々な施策が導入されており、これらはすべて「すでに成功している、欧州のプレミアムカーブランドを参考にしたもの」だとも考えられます。※雷軍氏も「フェラーリなどを参考にした」とこれを認める発言をしている
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テスラを“分解して学ぶ”戦略
そして雷軍氏およびシャオミの優れるところは、どこか一つの会社をベンチマークするのではなく、「それぞれに優れた複数の企業を研究対象とし、良いところを取り入れる点」。
デザインやマーケティング、カスタマーエクスペリエンスについては「ポルシェやフェラーリ」を参考にする一方、「車体」というハードについてはテスラを参考にしたことが明らかになっており、雷軍氏は北京でのイベントにて、今年初めにテスラ・モデルYを3台購入し、すべて分解して部品ごとに徹底的に研究したことに触れています。
彼は壇上で「もしYU7を選ばないなら、モデルYを検討してほしい」と述べ、他社製品を否定するのではなく称賛。
特にモデルYについては「非常に優れたクルマ」と評価し、YU7との比較を堂々と示しています。
自動車業界で定番の手法
競合製品を分解して研究する手法は珍しいことではなく、自動車業界でも一般的で、フェラーリやランボルギーニにおいても、シャオミのSU7がそれぞれの本社近くで目撃され「同社のEV開発のベンチマークとして購入されたのではないか」と噂された例がありますね。
- スマートフォン業界:半導体や端末を分解し、技術やコスト構造を分析
- 自動車業界:ライバル車を購入して分解、素材・ソフトウェア・生産技術を研究
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供給不足という課題
YU7は爆発的な人気を得たものの、供給が追いつかず、一部の消費者は1年以上待つ必要がある状況。
これに対して雷軍は、Xpeng G7やLi Auto i8、そして再びテスラ・モデルYといった他ブランドの購入も検討するよう促しています。
そして「他社(製品)を称賛するのも中国の自動車業界における一つの慣習であると報じられています。

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まとめ
シャオミはテスラから「学ぶべきところは学ぶ」という姿勢を隠さず、それを公にする点が他のメーカーと大きく異なるところです。
YU7の成功はテスラへのリスペクトと研究の成果でもあり、今後も両社の関係はEV市場の注目ポイントとなるのかもしれません。
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