
Image:Ferrari
| フェラーリ308GTB:グラスファイバーで登場した革命的なV8ミッドシップ |
フェラーリは常に「過去にとらわれない未来」を目指している
さて、フェラーリ 308GTBは今年で発表から50周年。
1975年にパリとロンドン両方のショーで発表されていますが、フェラーリ史上初のグラスファイバー(FRP)製ボディをまとって登場し、当時は一大センセーションを巻き起こしています。
この308GTBはディーノにて採用されたデザイン言語を巧みに進化させつつ、1968年のP6 ベルリネッタ・スペチアーレ(コンセプトカー)にインスパイアされた365GT4 BBの要素をも取り入れており、これらのデザインはすべてピニンファリーナに在籍していたレオナルド・フィオラヴァンティが手掛けています。
デザインの完璧なバランス
308GTBの流れるようなフェンダー、サイドのえぐられたエアインテーク、そして2本のバットレスへとカーブする垂直なリアスクリーンはディーノ(下の画像)の魅惑的なディティールを明確に受け継いだもので、その一方、よりモダンでシャープ、そしてウェッジシェイプ(くさび形)を採用したノーズ(エッグクレートグリルとポップアップヘッドライトを備える)、そしてホイールの高さで車体の側面を二分する力強いスワージラインといった新しい要素(365GT4 BB)を備えるのも308GTBならではの特徴です。
いわば、60年代の「優雅な曲線を持つフェラーリ」と、「80年代の、シャープな直線とウエッジシェイプを持つフェラーリ」との中間に位置する橋渡し的存在がこの308GTBだとも捉えていますが、ある意味では「両方の世代のフェラーリの美点」を兼ね備える、フェラーリのデザイン的ターニングポイントを示すクルマであるとも考えられます。
実際のところ、308GTBでは様々なデザイン要素が絶妙なバランスで融合しており、あらゆる角度から見ても完璧に均整が取れている、という評価がなされていることにも納得がゆきますね。
パワートレインとシャシー:V8ミッドシップの完成形
デザイン面のみならず、パフォーマンス面においても308GTBは同様に完璧なバランスを提供し、以下のような特徴も兼ね備えます。
- シャシー: 魅惑的なボディの下にはチューブラーシャシーが隠されており、四輪すべてにダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、油圧ショックアブソーバーを備えた独立懸架式サスペンションが採用。
- エンジン: 3.0リッターV8エンジンは、Dino 308 GT4と同様に横置きでマウントされ、欧州仕様の最高出力は255馬力にとどまったものの、工場オプションのスポーツエキゾースト、ハイコンプピストン、ハイリフトカムシャフトを装着することで、さらに出力を高めることが可能であった
- 技術革新: 後に登場するGTBiでは燃料噴射が、Quattrovalvole(クアトロヴァルヴォーレ)では4バルブヘッドが導入され、同世代の間でも進化を遂げる
希少な初期モデル「Vetroresina」
初期のボディは(発表時と同様に)ピニンファリーナのデザインに従い、スカリエッティ(Scaglietti)がグラスファイバー(FRP)を用いて製造していますが、1976年後半からはより一般的なスチールとアルミニウム製へと徐々に切り替えられることに。
今日、この初期のFRP製モデルは「Vetroresina(ヴェトロレジーナ)」と呼ばれ、その希少性からコレクターに高く評価されており、(ヴェトロレジーナであるかどうかの)見分け方はフロントウィンドウのAピラーとルーフパネルとの間にわずかな窪みが「あるかないか」。
なお、FRPから金属へと(ボディパネルが)切り替えられたのは「生産上の問題」であったのだと推測されていますが、(事故の際の)安全上の課題も無関係ではない、とする説もあるようですね。
V8ミッドシップの血統:GTO、F40へと繋がる金字塔
308GTBは、単に美しくバランスの取れたスポーツカーというだけでなく、フェラーリにとっての転換点となったことでも知られます。
- 初のフェラーリ・バッジV8ミッドシップ: 308GTBは、フェラーリのエンブレムを冠した最初のミッドシップV8エンジン車であり、40年以上にわたり続くV8ミッドシップの血統(その精神は現代の296GTBにも受け継がれている)を確立した一台。F8トリブートでは、「丸2灯」を採用していた488GTBのテールランプから、308GTBの「丸4灯」をモチーフとしたテールランプへと変更され、「V8ミドシップ」有終の美を飾っている
- スーパーカーの基礎: さらに、このモデルは史上初のフェラーリ・スーパーカーの基礎を文字通り築いており、グループB規定のために308GTBをベースに開発されたGTO(288GTO)は、後にフェラーリ F40へと進化していくことに。288GTOへの「予想外の関心」の高さがフェラーリに新たなビジネスチャンスをもたらした※フェラーリが自社のクルマで「スーパーカー」と呼ぶのは288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラ・フェラーリ、F80のみである。なお、フェラーリによる288GTOの正式名称は単に「GTO」
-
-
「フェラーリをよく知らない人には、308GTBとよく間違えられます」。フェラーリが公式に288GTOについて語るコンテンツを公開
| フェラーリ288GTOの正式名称は単に「GTO」、「288GTO」は非公式なニックネーム | 新車販売当時から高額なプレミアとともに転売がなされていた さて、フェラーリが伝説の288GTOに関する ...
続きを見る
308GTBは「デザイン」「パフォーマンス」のみならず、販売面においてもマイルストーンを打ち立てており、生産を終了する1985年まで、クーペ(Berlinetta)とオープン(Spider)を合わせて12,149台(燃料噴射仕様やQuattrovalvoleを含む)がラインオフし、当時のフェラーリ史上最も売れたモデルとなっています。
デビューから50年を迎えた今なお、308 GTBは時代を定義するフェラーリの一台であり、跳ね馬の歴史における重要なマイルストーンとして輝き続け、その輝きは未来永劫失われることはないでろう、と考えています。
-
-
フェラーリV8ミドシップの系譜(前編):308 GTBからF355ベルリネッタまで、50年の血統を振り返る。なぜフェラーリはミドシップを採用するに至ったのか?
| フェラーリといえば「ミドシップ」、そしてV8という認識も強い | もともとエンツォ・フェラーリはミドシップには「批判的」であったが さて、現代のフェラーリにおいてもっとも高い人気を誇るレイアウトが ...
続きを見る
あわせて読みたい、フェラーリ関連投稿
-
-
フェラーリが288GTO、F40、F50、エンツォフェラーリ、ラフェラーリ、F80「ビッグシックス」の初期デザインスケッチを公開。市販車ではどう変わったのか
| フェラーリのスーパーカーは文字通り「伝統と革新」の象徴であり、その時代においての「フェラーリ」を体現している | そしてフェラーリのスペシャルモデルは「全て並べてみて」はじめてその考え方を理解でき ...
続きを見る
-
-
2024年はフェラーリが「ターボエンジンを搭載するF1でタイトルを獲得してから42年」。そこで得た技術は288GTOへと採用され、現代のF80にまで息づいている
| フェラーリの歴史な常に「モータースポーツ」とともにあった | 「伝統を守る」イメージの強いフェラーリではあるが、常に革新に挑戦してきた自動車メーカーでもある さて、現在の市販車そしてレーシングカー ...
続きを見る
-
-
フェラーリF40の初期デザインスケッチは実際の市販車とは似ても似つかないスタイルだった。そのイメージは288GTO エボルツィオーネ、それがなぜ変更されたのかは謎である
Image:Ferrari | フェラーリF40は様々な意味において「特別」なクルマであった | 今見るとこのフェラーリF40の初期デザインスケッチは「レトロ」である さて、フェラーリが公式Faceb ...
続きを見る
参照:Ferrari